ザ・グレート・展開予測ショー

もう一つの物語(8)


投稿者名:hoge太郎
投稿日時:(02/ 8/26)


「嘘でござるうううううううう!!!」

ここは、美神除霊事務所。
そこに、少女の叫び声がこだました。
横島が辞めた翌日の朝、おキヌちゃんが検査を終え、出勤したところで、
雪之丞やシロタマを集め、美神が説明を始めたところだ。

「み・・・美神さん、嘘ですよね?」

おキヌちゃんの声が震えている。
一人で大騒ぎしているのは、犬娘、ではなくて人狼族の少女、シロ。
横島を先生と慕い、懐いている。その尊敬の念たるや、尋常ではない。

「嘘でござる!嘘でござる!!先生が拙者を置いて出て行くなんて
あり得ないでござる!!!うわーーーーん!!」
「えーーーい、やかましい!!何度も言わせるんじゃないわよ!
横島クンは、自分の意志で事務所を辞めたの!雪之丞はその代わりとして
雇った。いい?もう覚えたわね!」
「覚えないでござるうううう!!」
「やかましい!!」

美神は終始切れている。シロは泣き続ける。
その中で、おキヌちゃんは、美神に問いただした。

「美神さん。横島さんが辞めた理由を教えてください。
横島さんが、簡単に辞めるとは思えません。」

おキヌちゃんの言葉に、グッと詰まる美神。

「私だってよく知らないわよ。いきなり雪之丞を連れてきて、
自分は辞めます、だもの。」

おキヌちゃんの大怪我が、原因の一つであることくらいは分かっていたが、
おキヌちゃんに余計な負担をかけないように、美神ははぐらかす。

「どうして引き留めてくれなかったんですか!」
「引き留めたわよ!!」

美神は思わず大声を上げる。
大声を上げた後、後悔する。おキヌちゃんの目に、涙が溜まっていた。

「・・・私、横島さんを連れ戻してきます!!
雪之丞さん、横島さんの行き先を教えてください!」

おキヌちゃんは、雪之丞をキッと見る。
雪之丞は、壁にもたれながら、興奮しているおキヌちゃんと話す。

「・・・無駄だろ。第一、俺はあいつの行き先を知らねえし。
もし、見つけたとしても、あいつは戻ろうとしねえだろうよ。」
「どうしてそんなこと分かるんですか!」
「意地って言ってたからな、あいつ。
とりあえず、半端な覚悟じゃねえことだけは確かだ。
余計な事かもしれねえが、ほっといた方がいいと思うぜ?
あいつは、あいつなりに悩んだ結果なんだからな。」
「・・・・」

おキヌちゃんは、美神の方を見る。
美神も、雪之丞と同意見のようだ。悔しそうに下を見るおキヌちゃん。

それらのやり取りを、ボーっと眺めているもう一人の美少女がいた。
妖狐のタマモである。

『横島ってこんなにもてたっけ。』

一見、興味なさそうな顔をしているが、人間を研究するのが目的なので、
色々考えを巡らせてみる。

『なんで横島は辞めたんだろう。あいつは、美神さんかおキヌちゃん、
あるいは両方が好きだった筈よね・・・。馬鹿犬には悪いけど。
私だったら、好きな人の元を離れようとは思わないけどなー。』

と、一人の少年を思い浮かべる。

『人間ってよくわかんない。』

結論が出たようだ。
何れにせよ、まだ文句を言っているシロはともかくとして、
新しい事務所のメンバー、雪之丞が加わった。

「こんな吊り目の三白眼は嫌でござるううう!!!」
「んだとてめえ!!!」
『馬鹿犬。』

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半年が過ぎた。
季節は夏。
横島は、すっかり妙神山に馴染んでいた。
元々、順応性は高い。
それよりも、小龍姫にセクハラをせず、
よくぞ半年間も持ちこたえたと言っていいだろう。

いや、その表現は正しくないかもしれない。
何度かお風呂を覗こうとしたりしたが、その目論見はパピリオ−小龍姫連合によって、
あっさりと撃破され、致命的な一撃を回避している。
結果として、妙神山を追い出されずに済んでいるというわけだ。

最近は諦めたのか、あるいは、横島にとって、小龍姫がセクハラ対象外の
存在となったのか不明だが、覗きなどはしないようになっていた。

意外かもしれないが、修行の時の横島は、人が変わったように真剣になる。
横島は、普段は相変わらず抜けた性格をしているが、修行の時の集中力は半端ではない。
ここ半年間、横島は膨大な霊力をコントロールすることを目標にし、そして
その目標をほぼ達成しつつあった。

当初横島は、目覚めた魔族と人間のハーフである膨大な霊力のコントロールが、
殆どできていなかった。力を解放することはできるが、その力を制御できない。
下手をすれば、自分ごと黒こげになってしまう。
小龍姫は、その制御を最大の目標として横島を指導した。
元々、才能があったのかもしれない。横島は、驚異的な成長を遂げていた。


修行場から、剣を交える音が聞こえてきた。
模擬試合をしている3人。

小龍姫対、パピリオと横島。
小龍姫は、2人を相手に善戦している。
その様子を、小龍姫の師である、老師が眺めていた。

ひときわ大きな剣の音が響く。
剣が空中を舞い、地面に突き刺さった。

「そこまで!」

老師の声で、動きを止める3人。
パピリオは、先ほど小龍姫によって、剣をはじき飛ばされ、素手で構えていた。
横島は、霊波刀だが、その霊波刀も小龍姫の御神刀を破ることはできず、消滅した。

「ふうっ!」

横島はペタンと座り込む。
パピリオもそれに習う。
パサッとタオルが頭にかぶせられた。

「お疲れ様です、横島さん。惜しかったですね。」

小龍姫はねぎらいの言葉をかける。

「そうっすかあ?俺って何度やっても小龍姫様に一太刀も浴びせられないんすけど。」
「ふふっ。そうですね。でも、横島さんは、強くなっていますよ。
最近は、2人を相手に戦うのも辛くなってきましたしね。」
「修行をさぼっておるからじゃ。」

老師が小龍姫に向かって言う。

「しかしまあ、小僧は大したもんじゃわい。半年前の小龍姫であれば、一太刀くらい
浴びせられただろうて。」
「まっさかー。無理っすよ。」
「無理なもんかい。小龍姫、お主も感じておるじゃろ?
小僧と剣を交えるようになってから、自分の腕も随分と上がっている事に。」
「ええ、自覚しています。うかうかしていると、追い越されてしまいますからね。」
「むー、パピリオはどうなんでちゅか?」
「お主も伸びておる。ただ、小僧ほどではないがな。」
「むー。」
「さて、今日は買い出しに行かないと。横島さん。鬼門と準備をお願いします。」
「りょーかい。」
「パピリオも行きたいでちゅ!」
「何度も言わせるんじゃありません。あなたは留守番。そして、掃除です。」
「むー!」
「小龍姫、台湾バナナを忘れるでないぞ。フィリピン産じゃないぞい。」
「はいはい。」
「返事は一度じゃ!」
「はーい。」

・・・続く。

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