ザ・グレート・展開予測ショー

#FILE.夏祭り#5〜銃口が向いた先〜(前編)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 8/18)




 賑やかな祭りの、その最中にあふれる笑顔。
 はしゃぎたてる子供達。その様子を微笑ましく見守る大人達。(一部の童心に返りまくる大人達も)

 皆が皆、揃って笑顔。
 祭りの雰囲気、独特の音や匂い、この日にしか味わえぬこの『非日常』は高揚と歓喜によって成る、特別な日。

 ……。

 しかしだ!

 何にでも、例外というものはある。
 人々が安穏と暮らすその間隙を、情無き魑魅魍魎が狙うように、この祭りの場にも不穏な空気をもたらすモノがいる。
 果たしてそのモノは、いかな災厄をこの大切な、大切な祭りに持ち込もうというのかーーー?


 西条輝彦!


「僕かっ!?」


 一瞬ピタリと……周囲の喧噪が止む。
 はた、と気付く西条は、慌てる事なく内心の動揺を堪えて咳払いをする。
 見ていた野次馬連中は、瞬間、憐憫の眼差しを見せてから揃って目線を逸らした。
 もちろんその眼差しに、西条はしっかりと気が付いていた。ふっ…と、半ば自嘲めいた笑みを零す。
(ふふ……ここでもこの僕、西条輝彦は端役もしくはオチにでも使われるのか?……)
 しかし、その笑みは自嘲という外の意味も持っていた。
(否! それは違うッ! 違うぞッ!!!)
 内心で、そう叫ぶ。それでも外見には笑顔のまま一向に変化を見せないのは、ある種のワザだ。
(何かが間違っているんだ、この現状は! そしてその間違いは正すしか無い!!!)
 もはや『周り』は、上辺の笑顔を顔に貼り付けて動こうとしない西条に興味を無くして、祭りの渦中へと戻っていく。
(転機が必要なんだ……僕は今日の祭りで、本来僕にこそ与えられてしかるべき地位を取り戻すッ!!)
 さすがに……自分の中だけで、とはいえ、ここまで盛り上がってはリアクションをとらずにいられない。
 それはあたかも、宿命の敵との決闘に挑む孤高の戦士のように、雄々しくも気高くて……。


 みっともなかった。


「西条さ〜ん! そんなとこで寝相なんか披露してないでさっさと行きましょうよ〜!」
「そですよ〜! お祭りすっごく楽しそう〜!」 


 背後にかかる、黄色い声。
 それは、今回あえて誘いを受けて祭りでデートするたくさんの女の子達の自分を呼ぶ声だ。
 
「ああ! 待たせてすまない! 今行くよ〜〜!!」

 健康的な白い歯を覗かせて、髪の毛をかきあげて(何度も鏡の前でポーズ研究した)にこやかに微笑む。
 しかし、その裏では……。

(今まで僕は……令子ちゃんだけを追いかけていた! しかしだ!……)

 女の子達を見る。

 髪型ストレートの娘、ショートの娘、ポニーにツインテールの娘……更に服装も様々。(やはり浴衣が多い)
 当然として、皆が皆、揃って平均以上の可愛い娘達ばかり。それは完璧を目指した西条の、日々のたゆまぬ努力がもたらしたものだ。

 しかし……有り体に言って……。

(ふふ、そう……これが僕の本領なんだよ、令子ちゃん! ………………横島!!!)

 西条にとり彼女達はダシ。もしくは踏み台でしかなかった。

(押してだめなら、だ! 僕は本来からモテる! そりゃあもう困っちゃうくらいにモテモテだ!)

(そんな僕の姿を見れば、令子ちゃんもきっと見失っていた『宝物』に気がつくさ! あるいはそれがヤキモチでも全然オッケー!)
 
 

『西条(君、さん、センパイ!)早く〜〜〜!!!!』

「よっし、今行くよ〜〜〜!!!」



 女の子達の自分を呼ぶ声。

 それは西条の耳に、そして心に、開戦のゴングとして聴こえた。強固なる決意が燃え上がる。

(決めるッ! もし仮に今日の日の僕に、かの七福神の加護が無くとも、僕には秘密兵器があるのだッ!!!)

 西条は、駆け出す。

 正邪の判別はともかく……胸に燃ゆる想いをただ一つの武器として。己の生涯を賭けての戦場へとーーー!!!




『西条(君♪ さん♪ センパイッ♪)どこから行きます〜???』


「ようっしまずは……君達に何でも好きなものを奢ってあげようっ!!!!」



 大きな歓声が、西条を包み込んだーー。




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