#FILE.夏祭り#4〜おみくじ(後編)〜
投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 8/17)
「―美智恵さん」
声がした。
その声音は、落ち着いており深みがあり、そして知性を感じさせる男の声である。
そんじょそこらの若造には、出せない声だ。
この声は─
からん、と下駄が鳴る。
くるり
と振り返る。
まさかと思いながら、その人を見る。
だが、確かにいるその人に、目を一杯に見開く。
その人は、ここに居るはずのないひとなのだ。
彼の夫たる美神公彦は─
しかも、怪しげな鉄化面はしていない。
なのに穏やかに、笑っているのだ。
こんなに人がいたのならば、彼の能力では、耐え切れないことになるだろうに…。
「な…なんで、ここにいるの」
言葉が、かすれるのも仕方がない。
すると、公彦は穏やかに微笑み
「縁だって…さ」
と言った。
どうやら、このおみくじは、普通のものではなかったらしい。
特別な、恵比寿さまの神通力が働いているもので、そのおみくじには『ほんもの』だということらしい。
「…確かに、待ち人だけど」
美智恵は、苦笑しながら肩をすくめる。
おみくじで人をひとり連れて来るというのも、かなり非常識だ。
「で、更には、ここには特別な結界とやらが張ってあるから、怪しげな仮面は必要ないそうだ」
いきなり、どこぞの外国から連れられたであろう公彦は、大して驚いた様子も見せず、笑う。
くたびれた背広に、よれよれのネクタイぼさぼさの頭……この分だとまた、研究に没頭して寝食を忘れていたのだろう。
美智恵は、腕にある我が子を抱えなおし、そして公彦へと近づいていった。
「ちゃんと、食べてる?」
「…………………なんとか」
ぼそっとそっぽをむき、公彦。
これで食べてると思う人がいたら、教えて欲しい。
「ま、そーゆうことにしときましょうか?」
おもいっきし、晴れやかな笑顔で、言う。
「ひのめ、大きくなったな」
ふと、美智恵の腕を眺め、公彦。
ふわりと嬉しそうに、笑う。
「ほら、パパですよ」
美智恵は公彦へとひのめを渡した。
公彦も、慣れた手つきでひのめを抱き上げる。
「…令子に似てる…なあ、うん美人になるぞ」
嬉しそうに、公彦。
「なんで、そこで令子なのかなあ…普通私でしょ?」
くすくす笑いながら、公彦。
「何時までいられる?」
言外に、何時まで効力が続くと聞いている。
「…、まあこの祭りが終わるまでは大丈夫だと、思うよ」
多分と付け加え、公彦。
「そう?じゃあ、それまでその辺廻りましょうか?その辺に、令子もいるだろーし」
美智恵は、そう言うと公彦に腕を絡ませ笑った。
「そうだね」
公彦もゆっくりと口元を緩ませる。
祭りはまだまだ始まったばかり?
おわり
今までの
コメント:
- やる気ない文章ですいません(自爆)
ああっ怒らないで怒らないでっ(涙)
いや、ただ単に、誰かおとうさんと美神さんの絡み書いてくれないかなあという気分からきただけなんです(駄目)
…………なんかもう夏祭りの空気だいなししてるぞ自分(自爆 (hazuki)
- コメント返しは…くうっしたいけど、したいけど、(涙)
………み、みなさまありがとうございましたすっごく嬉しいです!!
ほんっとうにありがとうございます (hazuki)
- さすが神様、いい仕事してます(笑)
二人には大変すばらしい贈り物ですね。
読んでていい気分になりました、どうもありがとうございます。 (野見山)
- 公彦と美智恵さんとひのめちゃんの親子がとっても雰囲気出てますね!!!!ところで公彦の『令子に似てる…』という部分ですが…美神に似るといえば守銭奴のところも…なんて私の思い過ごしですよね!これからも期待してます (ノリ)
- 美智恵隊長最高!!かわいいし、きれいだし、・・・若いし(ぼそ) (NGK)
- 読んでてこっちが気恥ずかしくなるくらい恥ずかしい二人にカンパイです。
隊長の至極まっとうなツッコミ…しかし怒らないところが、二人の懐の深さですね (ダテ・ザ・キラー)
- まさか公彦パパが登場するとは思いませんでしたね;しかも鉄仮面無しだというところが更に驚きです(笑)。普段離れ離れになってロクに一緒に居る時間すらない2人とは思えないほどに、2人の会話が自然と繰り出されている点が「らしい」気がします。何せ完全に心を通わせ合った「夫婦」なのですから。喧騒からは正反対な感じの静かな日本の夏っぽい話だったと思います。お疲れ様でした♪ (kitchensink)
- この特別な結界とやらを携帯用にして神様から頂けないものでしょうか?…そこまでしたら欲張りになりますかね(自爆)。多分、初めてであろう二人の『ごく普通に過ごせる二人っきりの時間』をしっかり楽しんでいただきたいものです。 (マサ)
- まるで織姫と彦星……暖かなお話です。文句なしに面白かったです。
hazukiさん、お疲れ様でした。(遅い!) 次回は自分が書きます。
こんなあったかいお話ぶち壊したらどうしよう……(汗) (AS)
- おぅ。
ええなぁ。
・・・・・くそっ。普通のコメントがデキネェ! (トンプソン)
- この二人が登場するとは・・・意表を突かれました。
いいお話です。こんな素敵な出来事がが起こるのも、お祭りならではですよね!
hazukiさん、お疲れ様でした。 (ヨハン・リーヴァ)
- 良かったですね美知恵さん。
読んでいてとても楽しめました。お疲れさまでした。 (3A)
- さすがは神様 いい仕事してますねえ(中島誠之助 風に)
大人な2人の大人な雰囲気……良いですねぇ………hazukiさんの作品だといつものごとくしっくりくるコメントが思い浮かばない(泣) 良い!とか素晴らしい!とかしか思い浮かばない(滝涙)
いつも付けてる怪しげな仮面は「そこの屋台で買ったお面です♪」とでも言えば怪しまれないかも……お祭りだし
hazukiさん素晴らしい作品をありがとうございました。それとお疲れ様でした (ぴろしき)
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