ザ・グレート・展開予測ショー

#FILE.夏祭り#4〜おみくじ(前編)〜


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 8/15)

―ところ変わって。
からんころんと、下駄の音を鳴り響かせる、女性がひとり。
淡い黄色の浴衣が、よく似合う
どこからか、聞こえる怒鳴り声やら叫び声。
普通ならば、後ずさってしまうであろう叫び声に、くすりと微笑みすら浮かべる人物─
そう、美神美智恵である。
既に四十も近いだろうに、しかも二人の子持ちでありながら(そのうちの一人は成人している)その外見は、化け物じみたところがある。
しっとりと艶を含んだ仕草は、この年齢でなければ出ないであろう色気がある。
だが、外見は下手をすれば二十台後半でも通るのだ。
これは反則だろう。(なにのだ?)
「っておかしいなあ」
首を傾げ、美智恵。
この辺に来れば、きっと美神たちがいるであろう─と言われ来たのに、いない。
いや、ここのどこかにいるのは、分かるのだが。
別に、美智恵にしてみれば、ここに来る理由もなかったのだ。
何やら怪しげな、招待(?)を受けたのであるが。
此処にくるならば、富、縁、長寿、武力、欲しいと思えるものが手に入るという。
これまた最上級に、怪しい招待を。
だが、美智恵にしてみれば、
金銭─別にこれ以上欲しいとは思えない。
縁─すでに生涯の伴侶とめぐり会えている。
長寿─この仕事についてる以上、そんなものを求めるのはおかしいだろう。
強さ─足りない分は、頭でカバーできると思っている。
と、なっており欲しいと思ったことすら、ないものばかりだ。
私って、なんて無欲なのかしら。
などと、たわけた事を思いながら、からん、ころん、と下駄を鳴らし歩いている。
まあ、騒ぎのあるところに行けば、めぐり会えるであろうと思い。
雄叫びをあげているところへと、向かった。
腕で、すやすやと寝息をたてている、ひのめをかかえ。

そして数分歩いただろうか?
─ふと一つの古びたおみくじの箱が、目に入った。
なんとなく、懐かしい気持ちになり、一つ、引く。
代金は50円。
少々高めである。

ぴらぴらと、紙を器用に広げ、中身を見ると
─大吉であった。
たとえ、気休めだとしっていても、なんとなく、嬉しい。
失せ物、旅行、健康など、良く書いてある。
そうして、最期に目に入ったのは、

「待ち人、来る」の一文。

いやがおうにも、ひとりの、自分の夫となるべき人を、思い出す。
(そういえば、彼は、こんなところもう、何年もきてないんだっけ……。)
こんなに、人が居る所になんか、とてもじゃないけど、これなかった。

騒がしい、だけど熱気に溢れたこの場所は、煩くもあるけど、とても心地よい。
それを、感じきれない、彼に一抹の寂しさを感じる。
別に、ずっと一緒にいたいなどとは、思わないが、一回くらい、祭りでもなんでも一緒に歩きたかったと─そんな似合わない事を考えて、ひとり笑う。
いいトシした、おばさんが、何考えてるのかしら、と。


つづく

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