ザ・グレート・展開予測ショー

『命』の選択?17


投稿者名:運値
投稿日時:(02/ 8/12)

※巻末に、人物名の補足説明が入ります


仕事が終わり、横島とタマモは部屋に帰ってきた。

「ふう、今日は疲れた…。体も汗臭いし、お風呂に入りたいわ…」
「家に風呂は無いぞ。銭湯にでも行くか?」
「いえ…美神さんの所に行ってシャワーでも浴びてくるわ」
「そうか、気をつけて行けよ」
「…うん」

タマモが部屋を出たのを見届けると、それを見て横島は立ちあがり、こっそり部屋を出る。
(くっくっく…、そういやここ何日間かご無沙汰やったからなあ、美神さんの裸!!!)
そう考えると、物凄い勢いで美神の事務所に駆け出していった。


タマモが美神の事務所に着くと、おキヌが迎える。
「あ、タマモちゃん、おかえりなさい。どうしたの?こんな時間に」
「お風呂を借りに来たの」
「…そう、横島さんとは上手くやってる?」
「うん」
「それはよかったわ、あ、これから、シロちゃんと、ちょっと買い物に行くから、お風呂から出たら暫くお留守番していてね、お願い」
「うん」

タマモは、おキヌと軽いやり取りをした後、バスルームに行く。脱衣場に着くと、ちょうど美神がタオルを体に巻きつけ、バスルームから出ようとしている所だった。タマモは服を脱ぎながら応対する。

「あらタマモ、何で帰ってきたの?」
「仕事で汗をかいたから…今日は色々疲れたわ…」
「……そう」
「そうそう、早めに、横島に謝った方が良いわよ…」
「…なんで私が謝る必要があるの?悪いのは全てアイツでしょ」
「このままだと、冥子さんに取られるわよ…本当に…」
「だ・か・ら!!!私はあんな奴のこと何とも思って無いし、別に居なくても良いのよ」
「…美神さん?……あなた誰!!!」
「私は美神令子。それ以上でもそれ以下でも無いわよ」
「いえ!!本当の美神令子は、冥子や自分の友達に頼まれたら嫌々言っても、最後は結局協力してくれている。何時もの、お金云々は照れ隠しの発言だわ。でも今日のあなたの行動は…」

そう言うと、美神のバスタオルを掴み剥ぎ取るタマモ。露わになる美神の胸には、勾玉状の痣が浮かび上がっていた。

「その痣は…やっぱり!!!」

瞬間、美神の表情は一変し、玉藻の首を掴み壁に押し付ける。

「…で、でも…どうし…て…グッ!!」
「どうして、性格が変わらないかか?貴様等は大きな勘違いをしている…。我の能力は人間の性格を変えるのではない…、心で考えたものの逆をさせるのだ…」
「…そ、そういうこと!!!」
「そう…こやつは普段から我が憑いているが如き振舞いをしておった」
「つまり、天邪鬼なのはあくまで性格であって、心では無いということ…」

タマモが冷静に分析する。つまり、普段、心優しくて素直な人に天邪鬼が憑けば、一目瞭然に憑いたのが判るが、美神の様に、心は分からないが、その性格が天邪鬼の場合中々憑いたのが判別しにくいのだ。

「そう言うことだ…くっくっく、そう言えば妖弧。貴様の前世には少し借りがあるな」
「な、どう言うことよ?…ぐぅ…」
「魂の色が全く変わっておらんからな。貴様、玉藻前の転生体であろう!!!」

そう言うと天邪鬼に操られた美神の拳がタマモの腹に食い込む。

「ぐあァァ!!!!」
「はっはっは、良い様だ……貴様があの時、邪魔さえせねば鳥羽院を操り日本を支配することができたはずなのに」
「…うぅぅ…何を言って…」
「ふん、結局お前が邪魔をしてくれたお陰で、俺は安部泰成に退治されたのだ。その恨みはお前の体で晴らしてくれる…」

腕を大きく振り上げタマモの頬を張る。ピシッと音がしてバスルームに吹っ飛ばされるタマモ。
(く…やばいわね…。今の私の力じゃ奴には効かない…これはもしかしてやばい!?)
タマモの頭の中には、先のビルで感じた『死の予感』が渦巻いていた。
(そういえば、あの時はアイツに助けられたのよね…)
タマモは決してこの場には現れないであろう人間のことを思い浮かべた。まだ死にたくない、あの時とは違う生への執着心、それがタマモの心の中に芽生えた。


その頃、横島は事務所の屋上からロープを垂らし、バスルーム前の窓に手を掛けていた。

「ぐふふ、俺の経験上、美神さんは何時もこの時間帯に風呂に入る!!!さあ、いざ行かん桃源郷へ!!!」

そう叫んで、窓を勢い良く開けた瞬間

「…おキヌちゃん、シロ、ヨコシマ、誰か助けて!!!」

ちょうど、タマモの叫び声が中から聞こえてきた。それを聞いて横島は状況を忘れて急いで窓から中に飛び込む。

「お、おいタマモ、大丈…うわぁぁ、す、すまん!!!」
「よ、横島…。今はそんな場合じゃないわ。美神さんが、美神さんが!!!」
「お、落ち着いて…さっさと前隠して…それと、これで怪我を…」

治の文殊を投げてよこす

「そんなことより、美神さんに、天邪鬼が憑いていたのよ!!」
「な、何、本当か?」

横島は脱衣場の方に目を向けるとタオルを体に巻きつけた美神がのそりと現れた。

「くっくっく、何じゃ?一人増えておる様だが…まあ良い。皆殺しじゃ…」

天邪鬼がそう言い放った瞬間

「うおおおおおお、裸ーーー!!!!」
「あ、バカ、横島!!!」

飛びかかる横島。その顔に天邪鬼のパンチが炸裂する。

「な、なんじゃ!?こいつは。まるで鳴神上人のような奴だが…」
「…うう…敵だって分かってるのに…うう…」

追い討ちを掛けて蹴りを叩きこむ天邪鬼。しかし、バスタオル一枚でそんなことをしているので、逆に横島の煩悩パワーは高まっていく。

「ぐふふふふ、ああ、恍惚のチラリズぎょえーーーー!!!」
「死ね、色魔!!!」

しかし、幾ら蹴りつかれても、しつこく纏わりつき離さない横島。逆に天邪鬼が貞操の危機を感じ始める。
(こ、こいつはあらゆる意味でやばすぎる…)
そこで、攻撃目標を横島からタマモに代える天邪鬼。

「とりあえず、お前は死ね!!!」

タマモに手を上げようとした時、ムギュっと横島の腕が、天邪鬼(美神)の胸を掴む。

「あ、しまった…ぅぐ…」

胸を揉まれて、集中力が切れる天邪鬼。次の瞬間、莫大な意識が天邪鬼の元に押し寄せてきた。しかし、1000年以上封印され、妖力が不完全な天邪鬼には、美神のこの膨大な力を押し留めることは出来なかった。

「く、やばい!!!このままでは!!!くそ、背に腹は代えられん…」

このままでは、美神の意識で消去されそうになり天邪鬼は憑依の対象を横島にチェンジした。

「ふ、この体は御しやすい。ふんお前等この体は人質でもある。今のお前等にはこいつを攻撃でき…」
「…バカ…」
「な、何!?」

天邪鬼(横島)が、ちょうど抱き着いている形になっている美神を見上げると、物凄い形相で自分を見ている美神と目が合う。

「あ・ま・の・じゃ・く…散々人の体で勝手なことしてくれたわね…」
「な、何を!?この体は人質なのだぞ?しかもお前の好きな…」
「うふふふふ、ありがとう天邪鬼。横島くんの体に入ってくれて…これで心置きなくどつけるわ!!!」

バキ・メキ・グチャっと、物凄くやばい音が断続的に響いている。

「ひ…ひどい…」
「最近、殴る相手がいなかったからストレスたまってんのねーーーー!!!オーホッホ!!」

何時のまにやら、完全に天邪鬼は退治され、横島は全身傷だらけで倒れた。

「あ〜あ、本当に横島君で良かったわ!!!これがおキヌちゃんだったらもう少し苦戦したけど…そうよねタマモ」
「………」

美神の目線に押され、ブンブン首を縦に振るタマモ。

「さー、ストレスも発散したし、タマモ、その馬鹿、アパートにつれてってやって。私はもう寝るから」
「…うん」


こうして一連の天邪鬼騒動は、GS達の活躍により大事になる前に未然に防がれ、人間界の平和は免れた。
この騒動で、タマモ・冥子は横島を少し見なおし冥子事務所の連帯感は高まった。しかし、このことが、横島の命運を握る『命の選択』騒動に発展することになるとは、この時まだ誰も知らなかったのであった。

『天邪鬼編――完――』

鳥羽院…鳥羽法王のこと。院政で当時の日本を牛耳っていた
安部泰成…陰明師。タマモの前世、玉藻前を封じたのはこの人
鳴神上人…竜神を封じ込めることが出来るほどの実力者だったが、女の色気に騙されて身     を持ち崩した人。横島みたいな人

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