ザ・グレート・展開予測ショー

黒き翼


投稿者名:K&K
投稿日時:(02/ 8/12)

 初めまして。皆さんの素晴らしい作品を読ませていただくうちに、
自分でもどうしても書きたくなってしまいました。まだ初心者ですので、
御指導・御鞭撻のほど、宜しくお願いします。
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 『くっ・・・。何たるザマだ。魔界軍特殊部隊大尉たるものが。』

 ともすれば途切れそうになる意識と戦いながら、ワルキューレは既に
5回目になるセリフをはいた。胸と腹からは紫色の血が染み出す様に
流れている。 狙撃により受けた傷だった。使用された弾丸が精霊石弾
ではなかったため、致命傷には至っていないが、時間がたてば動けなく
なるのは明らかであった。

 『どこか・・・・、隠れるところを・・・。』

 今、彼女はマンションの駐車場に停めてある車の隙間に潜りこんで
いた。幸いにも時刻はもう真夜中に近く、人通りもないため、人間に
発見されて騒がれるという危険性なさそうだった。
 だが、このままここに留まっていてもいずれ動けなくなり、やがて
夜が明ければ人間に発見されオカルトGメンに通報されるだろう。
それだけは絶対に避けねばならなかった。
 しかし、やっとの思いで敵の追撃を振り切り、もう飛ぶ力も失せて
墜落一歩手前という状態で潜り込んだため、ここが何処かもわからず
移動の際に目立つ翼を隠す魔力すら残ってはいない。
 (いざとなったら潔く自決を)、とも考えたが、自分の精霊石銃は
全弾撃ち尽くし、自決用の毒薬の入ったカプセルは逃走中に紛失して
しまった。それに、

 『組織の中に裏切りものがいる。』




 この事実をなんとしても軍上層部へ伝えなければならないという
使命感が、絶望の底に沈みそうになる気持ちをかろうじて繋ぎ止めて
いた。

 『やるしかないか・・・。』

 今のワルキューレにできることは一つしかなかった。目の前のマン
ションの一部屋を占拠し身を隠すと共に、何とかして弟のジークと
連絡をとり救助を待つ。
 だが、一つ問題があった。マンションには当然住人がいる。住居を
占拠されれば驚いて騒ぐであろう。へたをすれば抵抗してくるかも
しれない。そうなったら今のワルキューレには彼らを殺すしか方法が
ない。そして、それが後に発覚した場合、先の大戦以降冷え切ってい
る魔界と人界の関係に決定的な悪影響を与えるのは明白であった。
それに、あまり認めたくないが個人的な感情として、

 『二度とあいつらとは顔を合わせられないだろうな。』

という思いがあり、ワルキューレに行動をためらわせていた。
 だが、もはや彼女に選択の余地はなかった。

 『やるしかないか。』

 再度、迷いを振り切るように呟くと顔を上げてマンションをみつめた。

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