ザ・グレート・展開予測ショー

続・プリンセス・オブ・ドラゴン(完結編)


投稿者名:CSU
投稿日時:(99/ 3/ 5)


「う・・ん・・・横島さん・・・?」
意識を戻された時、小竜姫は自分が横島に身体を預ける様な形で座っていた事に気づいた。
まだ焦点の定まらない目で横島を見上げる(端から見ればその状況は・・・・いや、何でもない。)
嫌な気はちっともしなかった、(できればもう少しこのまま・・・)そんな気持ちも少なからず心の中に存在していた。
「・・・・!!」
だが気づいた時には、条件反射的に横島を両手で思いっきり突き飛ばしていた。
突き飛ばされた拍子に横島は先ほどの衝撃で痛めた後頭部をまたぶつけた。
「っ痛ーー!!」
「あ・・・ご、ごめんなさいっ!」

思わず立ち上がろうとしたその時。

『ここで言わなきゃいつ言うの!?』
空耳とも取れる声が頭の中に響いた
「・・・え?」
あたりを見回すが人の気配はない。
『自分らしくやるんでしょ!?』
また声が聞こえた、今度は空耳ではない、自分の心の奥から聞こえるような感じだった
「今の声・・・まさか・・・」
どこかで聞き覚えのある声だったが、それっきりその声は聞こえなくなった。

―――そうね、そうだったわね、私は・・・

「横島さん!」
強くはっきりとした声で横島の名を呼ぶ。
「な、何スか?」
横島の方はと言うと、先ほどぶつけた後頭部に手を当てながら気の抜けたような表情で立ち上がっていた。
「私・・・横島さんの事が好きです・・・」
何の前触れもなく、小竜姫は、今まで溜め込んできた想いを、目の前の横島に、ぶつけた。
「・・・・・・は?」
一瞬、横島は何の事か分からなかった。

「またまた、冗談ばっかし」
横島は真面目に受け取ってないらしい、しかし小竜姫は怯まない。
「冗談・・・ですか?真面目に受け取ってくれないんですか?それとも・・・」
一呼吸おいて再度言う。
「私が、横島さんを、好きになっちゃいけないんですか?」
目の前の小竜姫の迫力に横島は少し思考が止まっていた、
恋に関しては素人かもしれないが、横島達とは比べものにならない程の年月を生きている、そして自らのマイナスな部分も認めた今の彼女、この辺はかなり落ち着いている。

思考の止まっていた横島がようやくしゃべりだした。
「ひょっとして・・・マジですか?」
「私は本気です!」

5、4、3、2、1・・・・・きっかり五秒後。
「こーなったら、もー、神様と人間の禁断の恋にーー!!」
ガバーっと小竜姫に迫る横島、前と全然変わってない、せっかくのいい雰囲気がぶち壊しだ。

ガンッ!!×1

飛びかかってきた横島の顔面に小竜姫の肘打ちがカウンターでヒットした。
肘打ちで吹っ飛ばされた拍子に横島はさっきぶつけた箇所をまたぶつけた、これで三度目だ。
「な、なんスか、今俺のこと好きだって言ったじゃないですかーーー!!」
その言葉を聞いた小竜姫、軽く『はぁ・・・』とため息をついた後、頭を抱えた。
―――まったく、何で私はこんな人の事を・・・・・・・・・。
頭を抱えてる小竜姫、だが顔は笑っていた。
―――でも、そんな所も引っくるめて・・なんだから関係ないわね。
頭を抱えるのをやめると小竜姫はもう一度横島の方を向いた。

だがその時、小竜姫はこの場の自分の存在が徐々に薄れつつあることを悟った。
どうやら分身体が完全に消えたことで指輪の魔力が消え、これ以上横島の精神内に居られなくなった様だ。

「そろそろここにいるのも限界みたいだから私は自分の体に戻ります」
小竜姫はいきなり切り出した、横島は立ち上がっていたが、足下がふらついてる様にも見える。
「でも、これだけは忘れないで下さいね」
そこまで言うと小竜姫は後ろを向いた、そして立て続けに捲し立てる。
「私は横島さんの事が好きです、だからたとえ美神さんやおキヌちゃんが相手でも引くつもりはありません」
「私はそんなにしょっちゅう会いに行く事は出来ませんけど、心の何処かで、時々思い出してくれれば、それで十分です」
小竜姫はなおも続けた。
「でも正直今の私じゃまだ自分に自信が有りません、一度とはいえ自我に負けてこんな事になってしまいました、今回の事は全部私の責任です」
「でも・・・今度会うときはきっと・・・」
一呼吸置いて再度言う。
「横島さんが・・・・・・」
その言葉を発すると同時に横島の方を向いた小竜姫だったが眼前に見える光景は何とも予想外だった。
「って・・・・・・き、聞いてない!?」
横島の方は後頭部を三回もぶつけたせいで今頃気を失ってた、傍目には寝てるようにも見えるが・・・
ちょうど小竜姫が後ろを向いた辺りから気絶していたみたいだ。
タイミングを外された形になった小竜姫は、自分の言葉に気恥ずかしさを覚え、思わず顔を赤くする。
やがて、その感情は急速に別の感情へと変換された。
――タイミング外しちゃったかな?
可愛らしい仕草で小首を傾げる小竜姫、ややあって横島を起こそうとするが、、、

カンカンカンカン・・・
誰かの足音が聞こえる、足音は二人分だが気配は三人分感じる。
明らかにおキヌと鈴奈、そして天龍童子の三人、後少しでここに到着しそうな感じだ。
その気配を感じ取った小竜姫は自分の行動の不可思議さに気づき、横島の首筋に触れようとしていた手を慌てて引っ込めた。
「あ、あれ、私、今、何を・・・?」
自分でも何をしようとしてたのかよく分かってない、誰かが見てたら『バンダナに竜気を授けるつもりだったんです!!』なんていう説得力の全然ない無茶な言い訳をするつもりだったかどうかな定かではないが、目的の異なる同一行動を取ろうとしたなんて、口が裂けても言えない。

「ま、いっか!、今日の所は私はこの辺で退散しますか」
名残惜しさも残る中、小竜姫は横島の精神内から脱出しようとした、
――精神世界でこれ以上の事をやってもしょうがない、続きは現実世界で
そんなことを考えながらの行動だったが、ちょうど横島が目を覚ました。
「う、う〜ん・・・」
「あ・・・」
思わず精神世界からの脱出を止めようとするが、既に勢いは止まらなく、その姿は急速に薄れていった。
「横島さん!」
その存在が急速に薄れていく中で小竜姫は横島の名を力強く呼んだ。
「えっ・・・何処っスか?」
辺りを見渡す横島、目の前にその存在が薄れつつある小竜姫を目にした。
「おやすみなさい、また会いに来ます」
それだけ言うと小竜姫は、軽く微笑みながら、横島の精神内から完全に消えた。


「横島さん大丈夫ですか!?」
小竜姫が消えたほんのすぐ後におキヌ達が戻ってきた。
「あれ、おキヌちゃん?外に出たんじゃなかったの?」
「なんじゃ、小竜姫の奴もっと気の利いたこと出来んのかの・・・」
皆、少し前の状況は把握している様だ。
そんな時、天龍童子がおキヌにだけ聞こえるような小さな声で囁いた。
「おぬしには悪いが余は小竜姫の味方じゃ、容赦はせんぞ、ではさらばじゃ」
そう言い終わった瞬間、童子は横島の精神内から消えた。
「あいつに何言われたの?」
横島は正確に今の会話を聞くことは出来なかったが、童子の言葉を聞いて明らかに様子の変わったおキヌを見て不思議に思う。
「別に何でも有りません!事件は解決しましたし、元の世界に戻りましょう横島さん、美神さん達も心配してるはずですよ!」
そう言うが早くおキヌはおもむろに横島の腕を引っ張った。
「ちょ、ちょっとおキヌちゃん、何処行くの!?」
おキヌが向かったのは深層意識から出る道だった。
別にそんなことをしなくても深層意識から出ることは可能なのだが、その行動を咎める者は誰も居なかった。

「・・・おキヌちゃんもちょっと変わったかな・・・?」
後ろで見ていた鈴奈がポツリと呟いた。

☆☆      ☆      ☆☆      ☆      ☆☆                

<<天界>>

「おおっ、やっと起きたか」
目を覚ました童子に竜神王が語りかける、
「父上・・・説明してくれた事と全然違うじゃないですか、横島の深層意識にいたのは小竜姫の分身でしたぞ」
竜神王が前に言ったのは、『ただ単に相手を自分に惚れさせる悪魔が取り憑く』といった類のものらしい。
「まあ、どうせ手遅れだと思ったので適当に言ったのじゃが・・・まさか間に合ったのか?」
「間に合いましたとも、もっとも、おキヌ達がいなかったら間に合わなかったかもしれませんけど」
「そうか・・・」
そう言うと竜神王は窓際から空を見上げた、その表情は何処か複雑だ。

「それにしても父上、一体何でこんな事したんですか?」
「それはまた別の機会と言うことで・・・これ以上わしのイメージを崩されたくないんでの・・・」
「父上・・・それは多分手遅れですぞ」
「やっぱり・・・そうか?」


<<白井病院>>

「令子ちゃ〜ん、三人が目を覚ましたわよ〜」
三人が目を覚ましたのは、白井病院の部屋の一室だった。
「あんたたち横島クンの精神内で何やってたのよ?。何かに取り憑かれてるから冥子と一緒に精神に入ろうとしたんだけど、何にも無かったわよ、どういう事!?」
それなりに心配していた美神も、あの後横島のアパートに行ったようだが少し遅かったらしい、指輪の仮想空間とのチャンネルが閉じた後から横島の精神に入っても意味がない。
「あ、それについては私の方から・・・」
一番状況を把握している鈴奈が先陣を切って説明しようとする、が。
「おねえちゃん〜!心配したんだからね〜!」
いきなり鈴女が抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと鈴女どきなさい!、私は説明しないと・・・」
「何よー、わたしをのけ者にしてー」
「しょーがないでしょ!、これであんたが絡んできたら話が全然違う方向に行っちゃうから仕方ないのよ!」
「ふーんだ、どーせわたしはおねえちゃんより能力が低いですよーだ」
「あーもーうるさいわね、分かったわよ、今度からは一緒に連れてくから、この話はおしまい!」
「ホント〜?ありがとおねえちゃん〜」
「・・・あんた調子良すぎ!」

鈴奈&鈴女の妖精姉妹のやり取りを笑いながら見ている一同、ややあっておキヌが代わりに説明しようとした。
といってもどう説明したらいいかよく分からない、とその時。
「横島さん?」
腕組みしながら何か考え事をしている横島におキヌが反応した。
(それにしても小竜姫さま・・・一体どういうつもりであんな事・・・?)
まだ小竜姫の言葉の意味を把握しきってない、相変わらずカンの鈍い男だが、少しは気になっている様だ。
「横島さんってば!」
おキヌの声でハッとする。
「どうしたんです、深層意識で一体何があったんですか!?」
「いや、別に何も・・・」
どう答えたら良いのか分からずとりあえずそう答える横島であった。


<<妙神山>>

「・・・竜姫、・・・小竜姫!」
誰かの声が段々とはっきり聞こえてくる、その声で小竜姫は目を覚ました。
「えっと・・・」
「やっと目を覚ましたか小竜姫、お前一週間も寝たままだったんだぞ」
「え、一週間も!?」
まだボーっと老師の顔を見ていた小竜姫であったが、しばらくして何かを思いだしたように表情を引き締めた。
(あ、そうだ、私は・・・)
何か言いたげな小竜姫を前にして老師が言葉を発した。
「お前、一週間も寝てたんだから色々やることがあるんだぞ」
普段彼女が何をしているのか知りうる所ではないが、何かやる事がある様だ、だが。
「そんなことより老師、久しぶりに稽古をつけて下さい!」
「『そんな事』って、おぬし・・・」
老師の言葉などお構いなしに詰め寄る小竜姫、いつもだったらあっさり断られただろうが、小竜姫の迫力に老師は少し気圧されし、やがて諦めた様な表情でその問いに返答した。
「しょうがない奴じゃの・・・」
『ふぅ・・・』と少しため息をついた斉天大聖老師、やがて辺りは異界空間へと変化した。
そして両者は如意金剛と神剣を構えた。
「では行くぞ、用意はいいか?」
「はいっ!お願いします!!」

キィィィィィィン!!

人と神との接点とも言われる妙神山、今そこに、恋をした一人の竜神の修行の音が響き渡った。


               −完−






−あとがき−(長いです)
ようやく書き終わりました。
これで『プリンセス・オブ・ドラゴン』及び『続・プリンセス・オブ・ドラゴン』で私が書きたかった『小竜姫の恋』についての話は終わりです。
「恋をしても基本的な部分は変わらないで欲しい」ってのが私の思い描く形なもので、最後はこんな形になりましたが、いかがだったでしょうか?
おキヌちゃんへのフォローが足りないぞ!と思った方、すみません・・・。私がこの話で書きたかったのはあくまで『小竜姫の恋』であって『おキヌちゃん』ではないんですよ、だからおキヌちゃんより小竜姫さまの方が比重が重くなるのは自然の成り行きなんです、はい。
一応この話の元ネタというか話の元になってるのは、美神とメフィストの関係であり、それを小竜姫さまでやってみるという一種の裏技なんですね。
自分と相反するもう一人の自分を認める事が、次の段階へ進む足掛かりになれば・・・そんな考えの元に創り上げたんですね。
自分が納得することを前提として、書きたい事だけを書いたつもりだったんですけど、やたら長編化してるのが難点ですね、こういう長い話は煩悩の部屋に置くべきなんでしょうけど。
自分としてもこの形で一応納得はしてるので、それなりに満足してます。
まあ、こんだけややこしい話ですから、どこかで設定が破綻してるかもしれませんけど(笑)



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