ザ・グレート・展開予測ショー

続・プリンセス・オブ・ドラゴン(その9)


投稿者名:CSU
投稿日時:(99/ 3/ 5)



二人の戦いは終局に差し掛かっていた。
「やっぱりここはおキヌちゃんに習って、精神波をぶつけるしかないのか!?」
横島は考えていた、小竜姫の攻撃を何時までも凌ぎきれるとは思えない、ここは一か八か賭けに出るしかない。

剣を振り下ろした後の一瞬の隙をついた横島。
神剣を受け止めた竜の牙をしまうと両手に霊波を走らせた。
「必殺っ!サイキック猫だましっ!!」
小竜姫の目の前で両手を合わせ霊波を発光させる。
【・・・!?!?】
一種の目くらましであるこの技を受ければしばらくの間行動不能になる筈、そう思っての行動だった。
「よーし、今の内に!!」
横島は両手に霊波を集中させた、収束された霊波は徐々に珠の形を成していく。
「こいつで何とか・・!」
文珠に念を込めようとする、その時。

キンッ!

作り出した文珠は遠くに弾き飛ばされた。
弾き飛ばしたものの正体は小竜姫の神剣、精神が暴走してる小竜姫に対して目くらましなどあまり意味が無かったのだ。
「だーーー!!全然効いてないーーーー!!?」
竜の牙を勾玉に戻してしまった為、神剣を受け止める術がない。
(もはやこれまでか?)
と思った瞬間小竜姫の動きが止まった。

【横島・・・さん・・・今の・・・うちに・・!】
掠れ声の様な小さな声があたりに響いた。
さっきまで夢遊病者の様だった小竜姫の目にわずかながら意識が宿ってる様に見える、先ほどの閃光のショックで何か変化が起きた様だ。
「この目は、、、」
横島にその声は聞こえてなかったが、小竜姫が一時的に自我を取り戻してる様な気がした。
ここがチャンスとばかりにもう一度二つの文珠を作り出し念を込める、
込めた念は『覚』と『醒』

バリバリバリバリ!!

小竜姫のこめかみを挟むような形で横島は二つの文珠を発動させた、理論的にはおキヌの精神波二重攻撃と同じ効果が得られるはずだ。
【う・・・・!】
「これで目を醒まさなきゃ・・・」
小竜姫の意識と霊波の波長を合わながら自らの精神波を直接送りつける。
横島はおキヌの様な精神波の遠隔攻撃が出来ない為、接触して行うしかない。


**************************************

「待ってってば、おキヌちゃーん」
鈴奈がおキヌの後を追いかけてるがエネルギーが残り少ない為スピード全然が出ない。
と、その時。
「しょうがないの、余が連れてってやろう」
天龍童子が後ろから現れて鈴奈を手のひらに乗せた。
「殿下?何でここにいるんですか?」と鈴奈。
「お主らこそ、何でまた深層意識に行くんじゃ、横島は逃げろって言ってただろう?」
「私はそのつもりだったんですけど、おキヌちゃんがどうしてもって・・・」
「そうか・・・」
そして再び深層意識に向かっていく。

**************************************

【横島さん・・・早く・・・意識が・・・保たない・・・!】
意識が混乱する中、小竜姫は全身全霊を込めて自分の意識を高めていた。
「まだだ・・・あと少し・・!」
横島がやるのは分身体の意識、すなわちドラゴンの意志を押さえ込むこと、それにより小竜姫が分身体の意識を取り込む手助けをする。
そんな状態がしばらく続いた。

文珠に込められた力を全て使い切った横島だったが、それと時を同じくして小竜姫の様子が変わった。
【・・・・・・・】
「小竜姫さまっ!?」
先ほどまでと様子の違う小竜姫、傍目には気絶してる様にも見える、
そんな小竜姫を揺り起こそうとした瞬間、ゾッとするような悪寒が全身を駆けめぐった。
「やばいっ!」
とっさに危険を察知しその場から飛び退こうとした横島だったが、その目に飛び込んできたのは巨大な光の塊だった。

「うわぁーーーー!!」
小竜姫の放った特大の霊波砲の直撃を受けた横島。
・・・いや、正確にはギリギリの所で霊波の盾・サイキック・ソーサーを作り出し防いでいた。
だがそれでもタイミングが遅かったためダメージは免れない。
「く・・・そ・・・」
壁際まで飛ばされた横島は全身を強く打ち付けてしばらく動くこともままならない。
小竜姫はゆっくりと横島に近づいていった。

――天界での竜神王との戦いをどことなく思い出す。
あの時横島さんは自分を助けてくれた、勝手な事ばかり言ってたにもかかわらず。
しかし、今はあの時とは全く逆、吹っ飛ばした横島を自分が殺そうとしている。
『そんな事は望んでない』理性ではそう思っていても体が言うことを聞かない。
一歩二歩横島に近づきながら神剣を縦に構える。
横島に剣が届く距離まで接近、その剣を振り下ろそうとしたその時。


―――い・・・や・・・だ・・・
突如小竜姫の動きが止まった
剣を持つ手がカタカタと震えている。
―――違う、こんなのは私じゃない!
手の震えが収まった。
放出されてた霊波が収まった。
―――私は私、こんな事で自分を失うなんて・・・
あたりの雰囲気がまた変わった
放出されてた霊波が小竜姫の中に収束され始めた。
―――絶対に嫌だ!!
小竜姫の周りに存在していた霊波が全て消えた
その一瞬、小竜姫の姿が一瞬シャドウと化した。

一瞬見えたシャドウの姿は消え、
やがて彼女は糸の切れた人形の如く静かに倒れていった。
「・・・っと」
地面に倒れる寸前に横島が小竜姫を抱き止めた。
「小竜姫さま!?大丈夫ッスか!?」
「・・・・・・・・・」
彼女は何も言わなかった、意識が飛んでいるのだろう。

☆☆      ☆      ☆☆      ☆      ☆☆                

7そんな中、小竜姫は自分の心の中で自分の分身と向き合っていた
対立するはずの二人だが小竜姫の心の中に分身体の意識が少し流れ込んできた。
今まで全く気づかなかった事が分かって来た、
・・・そうだ、仮にも自分の分身体、この人も横島の事が好きなんだ。

「あなたは・・・ひょっとして・・・?」
『さあね、自分の胸に聞いてごらん、きっとわかるはずさ』
「自分に・・・聞く?」
『私は見たかったんだよ、あんたが横島の為に何が出来るかをね、それさえ見れれば安心して消えられるってものだからね』
「え・・・?でもあの時は夢中で何が何だか分からなくて」

『さて・・・そろそろあたしは消えるとするか、もう意識を残してるのも限界だから』
「え、そんな、でも・・・」
小竜姫の心の中にほんの少しの罪悪感みたいなものが生まれた。
『ふふ・・・、罪悪感なんか感じる必要ないよ、あたしは所詮存在時間の限られてる、あんたの精神から一時的に分離して生み出された存在、どうせ時間が来れば消える運命なんだから』
「そうだったの・・・だったら最初から言ってくれれば・・・」
『限られた時間の中で出来る限りの事をしたかったんだけど、迷惑だったかな・・・』
「そんなことは・・・でも私正直どうしたらいいのか分からなくて、横島さんの何十倍も生きてるのに情けないわね」
『最後に決めるのは結局自分なんだし、自分らしくやるしかないんじゃないのかな』
「私らしく・・・か、そうよね、それが一番かしらね」
数秒の沈黙の後。
『じゃあね、自分に正直にね・・・』
「あ、ちょっと待っ・・・」
その瞬間、小竜姫の分身体の意識は小竜姫自身の中に完全に吸収され消滅した。

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