ザ・グレート・展開予測ショー

#FILE.夏祭り NO.3〜アツアツたこ焼きと冷めた焼きそば〜


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(02/ 8/ 9)

雪之丞の予想をはるかに越えて、弓のたこ焼きは上々の出来栄えだった。
いくら料理の嗜みがあろうと、たこ焼きは所詮イロモノ。
そうそうコツはつかめぬものだが、一つ一つ丁寧に焼いていく仕種で客の支持を得、
客がつけばそれだけ場数をこなすことになり、生来の天才肌とあいまってすぐに上達する。
今では味はぼちぼち、手際は玄人並である。しかしなんでこんなことになったのか。
二人で働きゃ稼ぎは倍!したらば明日は二人で遊べるからよ、と言われ、断りたくとも
顔が緩んでしまう純情ちっくな自分。都合が悪い時ばかり素直な自分が恨めしい。
――そっかぁ。向こうも一緒に居たいんだわ。
「締りがねー。憶えとけよおキヌちゃん、こーゆーのバカヅラ、っつーんだぜ」
天国の一時に冷や水を注がれる。
「あっちいってくださるッ!?」
「ほぉ。男に顎で使われてる女は言うことが違うね」
「いちいち語弊がある言い回しをなさるわね?この浴衣着たヤマザルさんは」
「てんめぇ!こっちゃあ客だぞコノヤラァ!!」
「あら?一文字さんてそうやって顔を真っ赤にするとホントにお猿さんみたいね」
えてして人を見下す人種というのは、他人が逆上するのを見ると自分は落ち着く。
「上等じゃねーか。今日という今日は白黒はっきりつけたるぜ」
そこへ、蛸の足がはみ出したクーラーボックスが、いや、ボックスを持った男が割り込んだ。
「悪ィ。そいつぁ明後日以降に持ち越してくれ」
「なにをのんびりしたらしたんですの?」
弓が男、雪之丞に問い質す。
「ケッ、妙神山の不始末に巻き込まれてたんだよ!ごっそり巻き上げられちまった」
「お金を?」
「おぅ。そのあとすぐに小竜姫に出くわしたんだけど、アレに持ち合わせがあるわけねぇ。
結局クソガキからの返却待ちよ。ま、こっちも生活に余裕ねーし、利子は付けてもらうさ」
本当は捜索の手伝いを依頼されていたのだが、報酬どころか取られた金も返ってこない、
その上に迷惑の上塗りなど冗談ではない。
かといって神様相手に正面から断っても、多分説教喰らって強引にやらされる。
二つ返事でOKして逃げてきたわけである。
「そーゆーわけだから、俺は裏でタネ仕込みだけ手伝うからよ……なんだお前ら?」
訊いた相手は一文字である。なにやらニヤニヤしてるのだ。
「いやぁ、さっさか見つけて金取り返してくりゃいーのに、まっすぐ帰ってくるとはね」
「か…からかっちゃダメですよ!きっと、弓さんに心配させまいと気を使ったんですから」
隣りでキヌが叫ぶので、雪之丞は顔が引きつる。
「ボケッ!んなわけあるか!!てめーらさっさとと失せろッ!!!」
「ひゃっひゃっひゃっひゃ!じゃーな。弓ぃ、結果報告楽しみにしてるぜ」
「し、しないわよそんなもん!!」
「あ、待ってくださいよぉ」

さて、なんで一文字が女の友情メンツを編成するに至ったか説明するためにタイガー、
ひいては小笠原ゴーストスイーパーオフィスの動向を説明せねばなるまい。
「ピートぉ?…ぶっちゃけ、姿は見てないけど、近くにいることは判ってるわよぉん」
その声を聞いて、彼は己の境遇を呪った。
(海に行けば雪之丞に殺されかかり、祭に行けばエミさんに押し倒されかかる。
なんで僕はいつもいつもこんな蛇みたいにしつこくて教育に悪い人達に追われてるんだ?)
「知ってるピート?今宵は七福神の祭よ。
今日二人が結ばれたなら、幸運に祝福されてまず間違いなく、デキるワケよ!!?」
(うひぃぃぃぃぃッ!!?)
「あ、ひょっとしていつまでも恋人でいたいワケね?隠れてるからにはそーなのね♪」
「ちっがーーーーーーうッ!!」
「ピートめーっけ♪」
「どーしろってゆーんだ僕にぃぃぃぃッ!!」
【エミさんが、現在未成年者にはお聞かせ出来ないよーなコトをのたまっておられます】
「そーゆー事を訊いてるんじゃあありませんッ!むしろ今のは質問じゃありません!!」
「うぅんイケズ。でも、そんなところも大好きなワケ♪」
「だったら僕の意見をもっと尊重してくださいよ!」
「いいわよ。私から逃げる以外ならなんでも許してあげる」
「逃げなかったらいたいけな少年少女にトラウマ残すとこだったでしょ!?」
「ピート以外に愛を注げるほど私の愛は余ってないワケ。神サマみたいにお安くないの」
神への冒涜はピート相手にどうなのだろうという配慮さえも無いらしい。
確かに余裕の無い人である。良くも悪くも有言実行というか……。
「そーゆーことしてると、横島さんみたいですよ!?」
ズバリと言う。
「あうッ!?私が横島……ピ、ピートじゃなければ思いっきり報復するのに…!!」
ギリギリと歯を噛み合わせる音が夜のしじまを破る。風流もへったくれも無い。
かくて、今夜の小笠原女史はプライベートタイムに没頭。なら、タイガーはどこだろう。

双眼鏡に映るは、彼の、成人男性の平均を大きく上回るサイズの指。
あまりの大きさに、双眼鏡を包んでしまってなお余っているのだ。
そしてその先に、三人の女性。美神令子の一団である。今夜の任務は七福神のガード。
そう。七福神は、なにも無条件に彼女らを呼び込んだわけではない。
互角の実力を持つGSチームをぶつけ合う。今夜のショーの中でも特に散財した。
しかし、その甲斐空しく、小笠原エミが選んだ戦法は、「発見されない距離から
タイガーの幻術迷路に捕獲、朝まで維持」という消極的なもの。
勿論それを導いたのは、本人の意思とは無関係にピエトロ・ド・ブラドーであったが。
とにかくタイガーは、一人寂しく焼きそばをすすりながら監視を続けていた。
「……なんジャ、もう冷めてるノー」
ここまでの扱いが、もはや当然で涙も出ないことが、彼にとってはこの上なく寂しい…。
祭の夜は――頼む!祭の夜だけはタイガーよ、幸せをみつけてくれ!!

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