ザ・グレート・展開予測ショー

GS美神if極楽大混戦「エピソード0(その2)」


投稿者名:野見山
投稿日時:(02/ 8/ 8)

あまりも生々しい声に目を見開くと、果たしてそこには横島の姿があった。
(なに、私まだ消えてない?)
その疑問は、横島の右手に生み出されようとしている文珠を見て解かれた。
ルシオラはさっきの温もりが文珠の癒しによるものだったと理解する、同時に自分が心地よさを感じた理由についても。
だが彼女は、結局戻ってきてしまった横島に心とは裏腹な言葉を投げかける。
「なんで、早く行ってっ」
が、言葉は、それ以上続かなかった、彼女が感じたのは背中に回る腕の力強さと体を包む温もり。
「………ぶじゃ」
「ヨコシマ………?」
「大丈夫じゃないだろ!霊気がぼろぼろじゃないか!」
おびえすら含んだ声で、ヨコシマが叫ぶ。
実際、もう一度顔を見て行こうと未練ったらしく浮かび上がってその姿を見たときの凍りつくような感覚は、とても言葉に出来るものではなかった。
「一人で消えるつもりだったのか?そんなこと!」
おキヌを失いかけた時の無力感を思いだしているのか、いつになく激しい口調になる。
「それは!」
横島は、返事も聞かず再び文珠を発動させる。
ぱしゅ!
一瞬身体を満たすぬくもりに酔いしれながら、ルシオラは横島に叫んだ。
「やめて、ヨコシマ!」
止めないと、これ以上霊力を使わせるわけにはいけない。なぜならそれが無駄な行為に他ならないことを今はっきりと確信していたから。
一瞬持ち直すように見えても、すぐに霊体の崩壊が始まってしまう、まるでひしゃくで砂漠に打ち水をしているかのように。
(無駄なの。壊れた霊体を直すこと以上に、霊的キャパシティが違い過ぎてあなたの文珠では到底追い付かない。
だから、黙って消えるつもりだったのに)
だが横島はあきらめようとはしなかった、ルシオラの制止も無視して、幾度も幾度も、文珠を生み出しては当てる。
異常なほどの文珠の生成速度にも全く気付かず、ただひたすらに彼女の回復を願って。
だが何度繰り返そうと、彼女の回復にはつながろうとしない。
止まりかけた心臓を電気ショックで無理やり動かしているようなものだった。
「いいから、もういいから!」
ルシオラは、あふれる涙を押さえることができなかった。
彼が私のために霊力を全て使い切ろうとしている、この後のことを考えればそれは自殺行為に過ぎない、でもそれが嬉しくて堪らない自分がいる。
なんて浅ましいと思う、でもこの喜びに浸る甘美さは耐え難い誘惑だった。
しかし。
「お願いだからもうやめて!!」
横島の右腕にしがみついて、それ以上の行為を止めさせるルシオラ。
「いいの、あなたにこうしてもらって、とても嬉しいの、心が暖かいの。
 だから、このままあなたの腕の中で逝かせて………」
笑顔でそう懇願する彼女の躯に、もう死の光がまとわりはじめる。
「ルシ…オラ……」
好きな女も救えない、横島は自分の無力さをこれほど感じたことはなかった。
「く…、チクショーー!」
拳を握りしめ、額に打ちつける。
「そんなに自分を責めないで。私、とても幸せだったわ」
「ルシオラ!」
涙があふれて、彼女の顔がぼやけていく。
(何も、何もできないのか、俺は!)
自分の身がちぎれそうな悔しさに躯を震わせながら、横島は拳を床に叩き付けた、その時。
ぱしっ
弾かれるように右手が跳ね、同時に内側から膨れる圧力に指が開かれる。
「な?!」
そこには、2つの色が太極模様に混じりあった、見たこともない文珠があった。


(続く)

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