ザ・グレート・展開予測ショー

#FILE.夏祭り NO.2 〜金魚すくい〜


投稿者名:ヨハン・リーヴァ
投稿日時:(02/ 8/ 8)

「そういえば、あの二人はどうなったのじゃ?」
「あら、福禄寿さま・・・。存在を忘れてたのね〜」
「な、なんじゃと!?ひどい、ひどすぎるわ〜い」
「あああ、泣かないで欲しいのね〜。二人ってどの二人?」
「ほれ、竜神王の子と妙神山にいる魔族の女の子じゃ」
「ああ〜、天竜童子とパピリオちゃんなのね〜。じゃあちょっと見てみるのね」
千里眼に映る二人は果たして何を・・・?






「ほらっ!早く行くでちゅよ!あんなところにヨコシマがいるとは思わなかったでちゅ。危なかったでちゅね〜」
祭りの喧騒を駆け抜ける竜神王の世継ぎ・天竜童子と妙神山で修行中の魔族・パピリオ。
「おい待て、余はあの『わたあめ』なるものが食べたいのじゃ!と、止まるのじゃ〜!」
「後回しでちゅ!私はあの『金魚すくい』がやりたいのでちゅ!」
天竜童子は竜の刺繍の入った灰色の浴衣。
パピリオは蝶の形をした帯と金魚のイラストが可愛らしい浴衣。
はたから見ればちょっといい感じの組み合わせだが、微妙にそうではないようだ。
「な、なんじゃと!?貴様、余を誰だと思っておる!!恐れ多くもかしこくも、・・・」
「ふ〜ん、それじゃこの前夜中にえっちなテレビを見てたことを小竜姫にばらしてもいいんでちゅね?」
「あ、あれは・・・その、夜寝れんからじゃな・・・てれびじょおんをつけたら・・・・・・たまたま・・・」
「ふふふ、知ってまちゅよ?本当は毎週見てること」
「うぐっ・・・わかった、余の負けじゃ。好きにせい。
・・・絶対に小竜姫には内緒じゃからな」
「わかってるでちゅ。じゃ、さっさと行くでちゅ!」
パピリオが童子の手をつかんだ。目指すは金魚すくいの屋台である。



「さあ、着いたでちゅ!」
横長の水槽に無数の赤色や黒色をした小さな魚が泳いでいるのを、パピリオは目を輝かせながら覗き込んだ。
「いらっしゃ〜い」
「ゆっくりしてってや〜」
なんと店をやっているのは小鳩と貧乏神である。これも「縁」というやつなのだろうか?
しかし、当然初対面である。
「え〜っと、どうやるか知ってまちゅか?」
「知らぬ。余は滅多に下界に降りてこられんからな」
「じゃあ、お店の人に聞いてみまちゅね。・・・すいませ〜ん、これはどうやるのでちゅか〜?」
「あら、金魚すくいは初めてなの?」
「ほんなら、ちょっと教えたらなあかんなあ」
「じゃ、あたしがお手本を見せてあげましょうか」
小鳩が虫めがねのような形をした網を手に取った。
「この網・・・名前は"ポイ"っていうんだけど、これで泳いでいる金魚をすくってこのおわんにいれるの。よく見ててね」
そういうと、小鳩は目にも留まらぬ早業で続けざまに三匹の金魚をすくった。
「おお、凄いでちゅ!」
「コツさえつかめれば簡単よ。ようは力加減ね」
「パピリオやりたいでちゅ!いくらでちゅか!?」
「一回二百円になります」
「ほら、お金をだすでちゅ」
パピリオが童子の脇腹を小突いた。
「何、余が出すのか!?」
「あんなやらしいテレビを見てることを小竜姫が知ったら、いったいどうなるのでちゅかね〜?激しいお仕置きが楽しみでちゅ」
童子の顔色が見る見る青ざめていく。
「わかった、余が払えばいいのだろう?余が払えば」
「そういうことでちゅ」
童子はしぶしぶ懐からがま口を出した。
「あ、小判は駄目でちゅよ?人間のお金はちっさい石みたいなのと紙でちゅ」
「わかっておる。しっかり小竜姫のへそくりから頂戴してきたぞ」
がま口から一枚の紙幣を取り出し、小鳩に渡す童子。得意満面の面持ちである。
「はい、ありがとう・・・って、これは・・・」
童子ががま口から出した紙幣に印刷されていたのは、高橋是清。
近代日本の財政家・政治家であり大正末期に行われた護憲三派運動の中心人物として知られる高橋是清は、成功と挫折を繰り返す波乱万丈の人生を送り、1936(昭和11)に勃発した二・二六事件で陸軍青年将校により私邸で暗殺されるまで、日本経済のために全力を注いだ大人物である。
「50円札・・・?初めて見た・・・」
「しかもまっさらのピン札や。いったいどっから出してきたんや?」
「貧ちゃん、これ使えるのかな?」
「さあ・・・あ、そうや、あいつに聞いてみよう」
「そうね、そうしましょう」
「お〜い、ヨハン。ちょっと調べてくれんか」

注:小鳩マスターである筆者は、その小鳩への愛の力により貧乏神が首から提げている財布を通して彼女たちと会話できるのだ!

50円札はもう印刷されてへんらしいけど、今も有効やっちゅう話やで。
「ほうか」
後、いまネットで検索したら「新品やったら2000円で買う」ちゅう人がおるみたいやわ。
「ちゅうことらしいわ。ほんなら2000円で引き取ったるか」
「そうしましょうか。ありがとうございました、ヨハンさん」
いえいえ、小鳩ちゃんのためならたとえ火の中水の中、世界の果てでも地の底でも・・・
「やかましい。もう切るで」
ぶちっ。
あああ、もっと小鳩ちゃんとお話したかったのに・・・。
「さて、うるさいやつもおらんようになったし商売といきまっか」
「はい、10回分よ。仲良く分けてね」
「じゃあ私が7つであんたは3つでちゅ」
「何、なぜ余がたった3つだけなのじゃ!?」
「そんなに小竜姫にお仕置きされるのが好きなんでちゅか?もしかして変な趣味でちゅか?」
「くうう、覚えておれよ〜!」
「ふふふ、じゃあ早速やるでちゅ!」

三分経過。

「き〜!何でこの網はこんなに破れやすいのでちゅか〜!?
詐欺でちゅ!警察をよぶでちゅ〜!」
「お前、7つも使って全部失敗とは・・・情けないのう」
「あんたももう残りひとつしか残ってないじゃないでちゅか!」
「仕方ないであろう!たったの三つしかなかったではないか!」
「男が言い訳するなでちゅ!・・・あ〜あ、金魚さん欲しかったでちゅ・・・」
寂しそうなパピリオの横顔。それを見て、童子は奇妙な息苦しさを感じた。
(な、なんじゃ?この気分は・・・?)
言葉に出来ない。ただ、胸がずきずきと痛むのだ。
ただわかっているのは、パピリオのこんな顔を見たくないということ。
「余がすくってやる。だから心配するでない」
「本当でちゅか?」
「任せておけ」
「もう、・・・無理しちゃって」
パピリオのほほが赤くなる。
童子はそれには気づかず、最後のひとつになった網を手に獲物を物色し始めた。
「まず網は最初に水に入れて、全部濡らすのが大事よ。部分的に濡らすとそこから破れちゃうから。
水に入れるときは、斜めから入れて水の抵抗を少なくして」
小鳩が的確なアドバイスをした。
「おい小鳩、そんなにコツを教えたら商売上がったりやないか」
「い〜の。ちょっと応援したくなっちゃっただけ」
「よ〜し、それっ!!」
童子の網の上に見事に金魚が乗った。
「おお、凄いでちゅ!」
「落ち着いて!急ぐと破れちゃうわよ!」
童子は慎重に金魚をおわんに移した。大成功である。
「やったでちゅ〜!あんた偉いでちゅ!」
「いや、うん、まあな」
パピリオの笑顔を見て、童子は自分の胸がいっぱいになるのを感じた。
「はい、どうぞ」
小鳩が、巾着のような形をした透明な袋に水と童子が取った金魚を入れた。
それを受け取ると、童子はパピリオに渡した。
「え・・・私にくれるのでちゅか?」
「ああ、竜神王の世継ぎたる余がこのようなものを飼っておったら示しがつかんからな」
「・・・ありがとうでちゅ!」
パピリオは巾着を抱きしめるように受け取った。
「では行くぞ。余はあの『わたあめ』が食べたいのだ」
「わかったでちゅ。お姉さん、ありがとうでちゅ!」
二人は手をつないで歩き出した。



「ありがとうございました〜」
「なんや微笑ましいなあ、あの二人」
「そうね、貧ちゃん。・・・あ〜あ、私も横島さんとお祭り回りたいな〜」
小鳩がつぶやいた瞬間、
「あ、そこにいるのは小鳩ちゃんかい?」
向こうから横島が走ってきた。
「よ、横島さん!?」
小鳩の胸が高鳴る。
(まさか、まさか小鳩に会いに・・・?)
「あの、横島さん、よかったらこれから・・・」
そこまで言いかけて、小鳩はいきなり石化した。
「横島さん、あの人知り合いですか?」
横島の隣に、ライトブルーと藍色で染め分けられた浴衣がよく似合うショートカットの女性を見つけたからだ。
(・・・誰?)
「ええ、アパートの部屋が隣で・・・ねえ小鳩ちゃん、この店に二人連れの子供が来なかった?」
「二人連れの・・・子供?」
「はい、一人は男の子でもう一人は女の子です」
ショートカットの女性が小鳩に話しかけて来た。
何か武術をやっているのか、体がよく引き締まっているのが浴衣越しでさえわかる。
健康的な美を発散している、大変な美人である。
(てゆっか、あなたは誰ですか?)
「ああ、こんな人ごみに子供二人だけで・・・すごく不安です。
雪之丞さんも探してくださってますけど、見つかるのでしょうか」
「大丈夫ですよ小竜姫様!この僕がついている限り何も心配要りませんよ!
何、一度は僕と雪之丞が見かけたんですからきっと見つかりますよ!さあ、一緒に探しに行きましょう!」
「え・・・あ、は、はい」
小鳩は、女性が『一緒に』という言葉に反応してほほを染めたのを見逃さなかった。
「横島さん。その二人ならあっちに行きましたよ」
「本当か!?よしわかった、ありがとう!」
「ありがとうございました!」
走り去っていく二人の背中を見つめる小鳩の目には、激しい嫉妬が燃え盛っている。
「おい小鳩、何で逆の方向教えたんや?あの二人めっちゃ困るで?」
「勝手に困ったらいいんだわ!」
「お前、それでいいんか?」
「いいんです!もう小鳩は知りません!」 
「は〜、やれやれ」
貧乏神は肩をすくめたのだった。









どんどん祭りはたけなわ、さてさてどうなることやら・・・



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