#新歓企画『対決!!』Ver.居辺『お祭りバトルロイヤル!?』2
投稿者名:居辺
投稿日時:(02/ 8/ 3)
5.激突
参加者は一斉にご飯を掻き込む。
だが、一口目で一斉に顔をゆがめた。
「申し遅れましたが、このご飯はゲンノショウコを煎じた汁で炊いております」
一斉に吹き上げる参加者。
「ふざけんなー!!」涙目で訴える横島。
解説すると、ゲンノショウコは薬草で、煎じて薬として用いられるが、物凄く苦いのだ。みんなも機会があったら試してみよう。効能については話がそれるので、やめにしておこう。
閑話休題。
たった一口で大量に棄権者が出たので、残ったのは、横島、雪之丞、タイガー、ピート、そしてひょろっとした陰気な黒服の男の5人となった。
ピートも涙を流しながら、必死にご飯を口に運んでいる。
横島は隣の席のピートに話しかけた。
「良くリタイアしなかったな」
「ニンニクを食べさせられると思えば、このくらいなんでもありませんよ。生活がかかってますからね」
横島がピートの向こう、二つほど席の離れた、雪之丞に目をやる。
「それにしても雪之丞のヤツ、何かかけて食ってるな。何だろ」
「え? あぁ、ふりかけみたいですね。それよりも横島さん、さっきから全然食べてないじゃないですか?」
「うむ。じつはなピート。さっきのルールから考えると、食って勝つより蹴落とした方が早いんじゃないかと思ってな」
「え?」
「お前の飯にこれを掛けさせてもらった」
横島が掲げたのはS&Aのテーブルガーリックであった。
「食って倒れるか、食わずにリタイアするか、決めるんだな。な〜に、後でおすそ分けするからさ。ここは一つ、俺に協力せんか?」
「卑怯な。横島さん貴方それでも……」
「…黙ってお前にそれを食わすこともできたんだぞ」
ピートは唇を噛みしめた。また同じ手を食ってしまうとは。
「……それで、僕に何をしろと?」
タイガーは雪之丞の後ろの席にいた。
不意に殺気を感じて横島を見ると、ピートと何やら相談している。
何やらデンジャラスな予感。
その不安はピートがリタイアするに及び頂点に達した。
「ヨコシマさん、何か仕掛けてくる気ジャナ」
ここは先制攻撃しかあるまい。だがその前に。
雪之丞はうめき声をあげながら、苦い飯を掻き込んでいた。
とてつもなく不味いが、山中で木の根を齧って暮らしたこともある彼にとって、食べられないほどではない。
用意してきた振りかけ(ごま塩)のおかげもあって、結構食べられている。
そう、雪之丞にとって、この競争は有利なのだ。
だが、それは慢心に過ぎなかった。後からの殺気に気付くのが遅れてしまったのだ。
雪之丞がようやく気がついて、顔を上げたときには遅かった。
「ドスコーーイ!!」と言う掛け声。
タイガーが足を思いきり振り上げた。
巨体のタイガーは足もそれなりに長い。
その足が、前の席の雪之丞の座席の下に衝突し、彼を座席ごと持ち上げた。
空中高く飛んで行く雪之丞。
「タイガーッ!! てんめぇ〜〜〜!!」
彼は観客席の後に頭から着地したが、最後まで丼を離さなかったと言う。
6.陰謀
「思った通り、だいぶ減りましたね」
桔梗屋が満足そうにうなずく。
「だが、まだ2人残っているじゃないか」
「心配御座いません。次の丼にはこれを」
「……いくら何でもやり過ぎじゃないのか?」
「チャンピオンに勝ってもらわないと困りますからね」
「次は下剤ってわけ? あんた達もいい加減汚いわね」
言わずとしれた美神令子であった。
のけ反る、桔梗屋と会長。
「なっ、何の事かな?」
「声が震えてるわよ」
7.タイガーの決意
弓が雪之丞に駆け寄るのが見えた。一文字の自分を見る目が厳しい。
仕方なかった。やらなければやられるのだ。
魔理の突き刺すような視線に堪え兼ねて、反らした視線の先には横島がいた。
「ざまーみろ」横島が声に出さずに言っているのが分かった。
そして気がついた。
このまま勝っても、得るものより失うものの方が大きいのではないか?
その意味では、自分はすでに負けているのではないか?
しかし、ここで引き下がれば全てを失ってしまう。
だからタイガーは戦うことを選択した。
横島にとって、タイガーは既に敵ではなかった。
タイガーがプレッシャーに負けて、雪之丞に先制攻撃を仕掛けたとき、既にタイガーに対する仕掛けは終わっていたのだ。
だから、残された最後の敵、黒服の男をどうやって棄権させるかを考えていた。
この男どう言う訳か、さっきから不味いはずの御飯を、モリモリと食べ続けている。
既に5杯目である。
横島は半分食べたところで、もはや身体が受け付けなくなっていた。
おかしい。これを5杯食うヤツがいるとは信じられん。
もしかすると……? そこで、横島の思考は途切れた。
どことも知れぬジャングルの中で、横島はたき火の前に座っていた。
夜の闇の向こうから、得体の知れぬ生き物の鳴き声が聞こえてくる。
たき火には歪んでボコボコになった鍋が掛かっており、何やら粘り気の強い液体が泡を破裂させていた。
手に持った器から鼻を突く刺激臭が漂ってくる。
「これは? 心理攻撃?」
タイガーの唯一にして最大の武器、テレパシーによる心理攻撃だ。
ずるりと、何かが手の上を這った。目を落とす。
巨大なナメクジが横島の左手をしゃぶっていた。
手に持った器を取り落としそうになる。
落ち着け。これは幻覚だ。自分に言い聞かせる。
そうだ。ここは大食いの会場で、俺は壇上に座ってて、左手に丼と右手に箸を持っているんだ。だからこの不味い飯を食っていれば良いんだ。
と、手に持った丼を見ると、ご飯のはずのものがウニョウニョと動いている。
いっ、いくら何でもこれは食えん。
ピート? 早くしてくれ。
横島はギブアップ寸前だった。
「横島さん?」
耳元でピートがささやいた。振り返っても居ない。霧になっているのだろう。
「ピートか? 早いとこタイガーを棄権させてくれ。これ以上は持たん」
「幻覚の陰に隠れちゃってて見えないんですよ。そう言うわけなんで、後は自分で何とかして下さい」
「約束が違うー!!」
ピートの声は聞こえなくなった。
つづく
今までの
コメント:
- 時代劇ノリの桔梗屋と会長を書いたとき、思ってた方向とずれ始め、タイガーが暴走したとき、想定したラストを捨てるしかなくなってしまいました。
タイガーの暴走はまだ続きます。
ラストまで読んでもらえると嬉しいです。 (居辺)
- タイガー!横島に卑劣な攻撃を!普段は反対なのにー!
タイガーの暴走は何処まで行くのかたのしみです (タケ)
- 余裕が無くなった野獣ほど危険なものはないですね;何をするか分かりませんし(笑)。タイガーのヒキョー技に関しては「サバイバル合コン!!」で雪之丞と組んでピートを陥れてたくらいですから、お手の物なのでしょう。逆にヒキョー技を使えないピートは早々に横島クンとの協力体制も解いてしまいましたね。これより勝負の行方がどうなるのか、そして令子が何故試合会場に居るのか、気になります。次回に移ります♪ (kitchensink)
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