ザ・グレート・展開予測ショー

#新歓企画『対決!!』Ver.居辺『お祭りバトルロイヤル!?』1


投稿者名:居辺
投稿日時:(02/ 8/ 3)

1.米騒動勃発
「何っ? 賞品はコシヒカリ十年分!?」
 横島は立ち上がった。手に広告を握り締めている。
「これは、行かずばなるまい! 今まで米に回していた食費を、おかずに回すことができる!! キャベツの千切り丼や、煮干しを砕いた煮干しふりかけや、具無しの味噌汁とも当分の間おさらばじゃ!!」
 広告を抱きしめて、瞳輝く、夢見る表情。神様に感謝している。

「うるっさいわねー。どうかしたの? こいつ」
 遠い世界に行ってしまった横島を、あごで指すのは美神。この馬鹿たれの師匠にして、除霊事務所の所長である。
 当の横島は、しばらく帰って来そうに無いようだ。何やらぶつぶつとつぶやいている。
「まず、きっきゃっキャビアを買おう! それを炊き立てのメシにどばっと掛けて…。
 ぅわはっ!ぅわはっ!わははははははははははは!! まさに、上流階級ってか?」
 錯乱しているようだ。

 おキヌはちょっと脅えたような顔で、横島の握り締めてる広告を指さした。
「今度のお祭りで、大食い大会があるそうなんです。ご飯を一番食べた人に、優勝の賞品、お米十年分だそうで」
「それで? 優勝したつもりになってるって?」
「いや? まてよ。フォアグラってのも良いかもしれん。焼いたフォアグラをご飯に載せて…」
「……ちょっと待ってね」チャキっと神通棍が延びた。

 ドゲゲゲゲゲッゲゲゲゲゲゲゲッゲッゲゲゲゲゲンッッッッッッ!!!!

 横島は動かなくなった。

「……どうせ文珠使って、ズルするつもりだろうけど。この調子で行かせたら、あたしがまともに給料払ってないみたいに、思われるじゃないの」
 そもそも、まともな給料払ってないじゃないか。などと言うことは、従業員の一人であるおキヌには、到底言えない。引きつった笑みを浮かべるばかりであった。
 美神はくしゃくしゃになった広告を拾い上げた。
「あたしに恥じかかせるような真似したら、承知しないからね。分かった?」
 血まみれの横島はぴくりとも動かなかった。

「でも、十年分ってのは凄いわね。いったいどこの店が出すのかしら?」
 広告のしわを伸ばしてのぞき込む。
「どうかしたんですか」
 動かない横島にヒーリングを施しながら、おキヌが聞いた。
「食費がね、かさんでるのよ。特にシロのヤツ。肉の味覚えちゃったせいか、そこらのドッグフードじゃ見向きもしないんだもの」
 現在、事務所の冷蔵庫(業務用の大型)の半分が、シロ用の牛肉に占領されている。
「お米が十年分もあればずいぶん助かるわね」
「でも、お米十年分なんて、どこに保管するんですか?」
「大丈夫よ、一遍に送り付けたりはしてこないわ。毎月配達してくれるとか、お米券でくれるとかするはずよ」

「ふ〜ん、桔梗屋かぁ。うちは新潟から直送してもらってるから、あそこで買ったことないけど。あそこってあまり良い評判聞かないのよね」
「わたしも聞いたことあります。産地を偽ってるとか、ブランドのラベルを張り替えてるとか」
 横島へのヒーリングを終えて、おキヌは立ち上がった。横島はまだ気絶しているようだが、もう少しすれば気がつくだろう。
「タイ米を大量に混ぜて、国産と偽って販売したこともあったらしいわね」
「結論。こんなのに関わらない方が良いわ」
 美神は広告を投げ捨てた。

2.悪い商人
「これで、客を集めると言うわけか? しかし、優勝賞品に米十年分では割に合わんのではないか? 桔梗屋」
「会長、その点抜かりは御座(ござ)いません。ある男を参加させます。この男、テレビの大食い番組で、優勝したことのある男でして。必ずや、優勝してくれるはずで御座います」
「ブームも下火になった今、彼奴らも食い詰めておると言うわけか?」
「左様(さよう)で」
「だが、万が一、他の大食いチャンピオンが紛れ込んでいたらどうするつもりなのだ?」
「会長、抜かりはありません。他の参加者のご飯にはこの……」
「ぐっふっふっふ。桔梗屋、御主の悪知恵には頭が下がるのぅ」
 妙なノリの会長と桔梗屋であった。

 電話が鳴った。内線だ。
 薄くなった髪を頭頂部を頂点にして、左から右へ丁寧になで付けた男、桔梗屋の社長は、目の前の色黒で肉付きの良い男、会長にちょっと失礼と言って、受話器を取り上げた。
「何だ……、良し、繋げ。……ハイ、お電話替わりました。いつもお世話になっております。……ハイ。……ハイ。……大食い大会の賞品のお米で御座いますか? もちろん最高級品を用意して御座います。ハイ。……ハイ。その件に関しましては、一部の不心得者の社員が独断で行いましたことで。すでに懲戒解雇しております。私共にはお客様の信頼こそ、第一の資産で御座いますから。……ハイ。では失礼いたします。今後ともよろしくお願いいたします」

 受話器を置いた桔梗屋は、嫌がらせの電話に対するかのように、ケッともらした。
 それを見た会長が苦笑いする。
「不心得者の社員というのは、桔梗屋、お前の息子のことだろう? 専務席で踏んぞりかえってるあれは誰だ? 替え玉か?」
「会長、それは言いっこなしで。どうせ世間には分かりません」
「まあいい。後は米を目当てにどれくらいの挑戦者が集まるかだな」

3.それぞれの思惑
 昨夜の雨が嘘のようにカラリと晴れ上がった、お祭りの当日。
 夜が近づいて、祭りの太鼓が鳴り始めると、町中には浴衣姿の人々が、そぞろ歩きし始める。
 そんなことにはお構いなしに、大食い大会の会場には異様な雰囲気が漂っていた。
 餓えた狼ども(シロとは関係ない)が獲物の登場を待ちわびていたのだ。

 向こうの方で、年老いた狼、ドクター・カオスがマリアと共に連れ出されていた。
「何故じゃ? 何故ばれたんじゃ?」
「この娘がロボットだって事は誰だって知っとるわい。こともあろうにこの娘を出場させようなんて、反則もいいとこだ」
「あぁ、せっかく外部アタッチメントを取り付けたのに?」
 ドクター・カオスとマリア開始前にリタイア。

「雪之丞や、タイガーは分かるとして、何でお前がここにいる? ピート?」
 横島は敵(かたき)を見るような目で金髪の少年に睨み(にらみ)をくれた。
「少しでも唐須先生の助けになりたくて…」
 何やら薄笑いを浮かべながら、遠くを見ている雪之丞とタイガー。
 来るんじゃなかったと、ピートは思った。当日ではあるが、後の祭りである。

 観客席から、ピートガンバってー、と女の子の声援が聞こえる。
 美神に黙ってやって来た横島には、当然応援など無い。
 雪之丞やタイガーでさえ、一名ずつ応援してくれる娘がいると言うのに。
 横島は恨めしそうに浴衣姿の弓と一文字を見つめた。

「勝っちゃる……! てめえら全員なぎ倒して勝っちゃる! それが俺の復讐!!」
 横島は血の涙を流した。

4.決戦の時
 参加者の前に、丼によそわれたご飯が並べられた。山盛りである。
 横島は他の参加者を見回してみた。
 大丈夫。ライバルと呼べそうなのは、雪之丞とタイガーだけである。
 横島を含む三人はこの大会にかける執念が違う。

 横島は手の中の文珠を握り締めた。かろうじて用意できた、ただ一つの文珠。
 文珠には『飢(うえ)』の字がすでに込められている。
 苦しくなったらこれを使って腹を減らすと言う寸法。
 まともに行ったら、タイガーにもかないそうもないが、これで圧倒的に有利である。

 バーコード親爺がマイクを握って、壇上に上がってきた。
「これより、××商店街主催、桔梗屋提供によります、銀シャリ大食い大会を開催いたします。最初にルールの説明を××商店会会長からお願いいたします」
 バーコード親爺の後から、黒光りする太った親爺が上がってきた。
「これから皆さんに食べていただくのは、ご飯です。制限時間は二十分。時間内にどれだけ食べられるかを競っていただきます。飲み物、ふりかけなど持ち込みはいっさい自由。ただし、途中箸を置いたり、席を立った場合は続行の意志無しとし、その場で失格と致(いた)します」

 会長からマイクを受け取ると、バーコード親爺は右手を高々と掲げた。
「始め!!」
 バーコード親爺がホイッスルを吹いた。

つづく

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