ザ・グレート・展開予測ショー

レット・イット・ビー!! 壱


投稿者名:我乱堂
投稿日時:(02/ 8/ 3)


「これは……!」
 意識が戻らない横島を看た医師は、しばらくして呻いた。
 その場にいたおキヌとシロとタマモとピートとタイガーと唐巣神父とカオスと西条と雪之丞に衝撃が走った。
「――ただ眠っているだけだな」
『だあぁぁ』
 いっせいにコケが入る。
 落ち着いていたのは美神令子とマリアだけであった。
「ただ眠っているだけってな何だよ!?」
 と食って掛かる雪之丞だが、他の面子にしても同様であった。
 何せ倒れたのが横島なのだ。
「あの」横島忠夫なのだ。
 令子の神通棍と鉄拳を浴びせられても、冥子の式神の暴走に巻き込まれても――どんな状態であろうとも、次の瞬間には何事もなかったかのように立ち上がる、妖怪並の生命力と回復力の持ち主なのである。それがいきなり倒れてただ『眠っている』? 納得しろと言う方が無理であった。すわ悪霊の仕業かと色めきたって集まったのがこの面々なのである。
「どうやら精神的な疲労ではないかと思うが――」
「あの、横島さんがですか?」
 おずおずと聞き直すおキヌ。
「精神的な疲労」というのもまた、らしくない。
 いつだって煩悩全開で裏表なし、ストレスなどたまらない性格をしているというのが彼に対する評価である。
 しかし。
「別におかしくはないだろう。彼だって人間だしな。それに周りから“しっかりしている”とか、“あいつは図太い”とか思われているような人間は、自分でもそうしようと振舞って余計にストレスを溜め込むことがある。――少なくとも医学的には彼は眠っているだけだよ」
 かつては「医学はぁ〜〜」とパニック症状を起こしていた人物とは思えない落ち着き振りであった。人は誰しも成長するということであろうか。
「まあ、確かに、彼も人の子だからね」
 と理解を示すように言ったのが唐巣神父。
「今ごろになって疲れが一気に出るというのも、いかにも彼らしい」
「そんなものかの」
 カオスは同意しているのかしていないのか、枕元に近づいてふむ、と覗きこむ。
「……確かに眠っておるだけじゃの。霊障を受けている様子も見えん――マリア、どうだ?」
「イエス・Dr.カオス・横島さん・霊障・違います」
「――ったく、人騒がせなヤツだぜ!」
 マリアの言葉に安心したのか、雪之丞が毒づく。
 本気で言っていない…というより、悪意がないということはこの場にいる誰もがわかっていた。「横島倒れる」の報を受けてすぐさまやってきたのはこの男なのだ。
「そうか。眠っているだけか……」
 なんだか残念そうに軽く溜息を吐く西条。
 この男の場合は――あまり深く考えたくないなぁと、おキヌは思った。令子を巡ってこの二人の関係は限りなく悪い。隙あらばお互いに呪い殺そうかと思っているぐらいに。
「確かに人騒がせでしたが、大事なくてよかったですよ」
 と模範生的な言葉を出すピート。
「そうじゃノー。無事でなによりだったかノー」
 ……果たして何処の訛りかわからぬ口調でいうタイガー。
「まったく、先生にはいつも驚かされるでござる」
「こういうのはこれっきりにして欲しいけどね」
 そこから「なんだとー!」と喧嘩に入るシロとタマモ。
 いずれにせよ、緊張がとけたのは確かだった。

「――じゃあ、後の看病とかはわたしはおキヌちゃんにでやっておくから、みんなは帰っていて」

 ぴたり、と全員の動きが止まった。
 その場にいたおキヌとシロとタマモとピートとタイガーと唐巣神父とカオスと西条と雪之丞は、ついでにマリアと医師も、令子へと不審そうな視線を向けた。
「美神さんが」
「先生を」
「看病するっていうの?」
「そんな……!」
「あの美神さんが――」
「ようやく人として素直な心を得たのか……!? いや、まさか」
「ふむ。これはこれはまた、珍しいこともあるもんじゃのぉ」
「れ、令子ちゃん! 気を確かに!!」
「明日は槍が降るか……!?」
「こ、これは医学的には説明がつかん!!」
「マリア・理解不能……」
 好き放題いってくれる仲間たちに、さっきまで落ち着き払っていた令子もさすがに青筋を立てた。
 っつーか、ここまで言われたら彼女でなくても怒る。
「あのねぇ……!! アンタ達はわたしをどう思っているのか知らないけど、わたしは雇い主として! 保証人として! こいつの入院手続きとかその他やっとかないといけないのよ!!」
 ――なるほど。
 全員、とりあえず納得した。
 とりあえずは、だが。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa