ザ・グレート・展開予測ショー

#新歓企画!『対決!!』Ver.kort


投稿者名:kort
投稿日時:(02/ 8/ 1)

ここは妙神山、霊能力者にとって憧れの修行場である。
そこの一部は今、ある種異様な空気に包まれていた。

鬼の顔が張りついた門を通ってすぐにある建物、
その裏手で、少女と少年が対峙していた。
その距離は約2メートル。
二人とも、一言も口を聞かずににらみ合っている。

そんな状態が30秒ほど続いただろうか。
少女が、えいっ!とばかりに腕を横にないだ。
その動きと共に、二人の間に金属製の道具が現れる。
高さは180センチくらい。基本的に真っ直ぐな棒だが、
少女の趣味なのだろうか、ところどころに妙な飾りがついている。

少年は、現れた道具をしばし凝視していたが、
やがて少女に視線を移した。
それを待っていたかのように少女は口を開く。
「―――勝負でちゅ!!」



「殿下ーっ、殿下ーっ!」
ひとしきり呼ばわって、小竜姫はふぅと息をついた。
まつたく、どこへ行ってしまったのだろう。
「ちょっと目を離した隙に…。」
困ったものである。母屋から門のところまで来てみたが、
影も形もない。
いやな予感が胸に疼いた。それはそのまま口をついてくる。
「…まさか、下に降りたんじゃ……」

ここ妙神山の管理人である彼女は、いま人を探していた。
天の竜の御皇子、天竜童子である。
父君に許可をもらって、こちらに遊びにきたのだ。
もしや家出じゃあるまいか、と一瞬青くなった小竜姫であったが、
天竜童子はきちんと許可証をもらっていた。

が。
「下」――人界に降りることは許可されていない。
メドーサももういないし、地竜とのいさかいも今のところ沈静化
しているが、もし降りていたら一騒ぎ起こることは間違いない。
「…………。」
再び青くなる小竜姫。
と、その時であった。
すぐそこの建物の影から、小さな人影が飛び出してきたのは。

「すぐにっ、すぐに追い抜いてやるからなぁぁぁああっ!!」
なんだかちょっと涙声な雄叫びと一緒に、猛スピードでその人影が
駆けてゆく。
「えっ!?でっ、殿下!?」
それは紛れもなく、彼女の探し人、天竜童子であった。

走り去って行く少年に追い討ちをかけるように、少女の声が響く。
「へっへーんだ、7センチも低かったくせに、負け惜しみ
言ってんじゃないでちゅよ!」
「パピリオ!?一体何が―――」
と、建物の裏手を覗き込んで、小竜姫は質問をとめた。
高さ180センチ程の、基本的に真っ直ぐな金属製の道具が
そこに鎮座していた。
なんだか妙な飾りがついているがこれはおそらく―――
「……身長計り。」


理解した。と、小竜姫は思った。
つまり天竜童子は負けたのだ、7センチ分。
そうして「はっ」と気付く。殿下を追いかけなくては。
勢いで下に降りられたら大変である。
「パピリオ、あれは片付けておきなさいね!」
笑顔の少女にそう言い置いて、小竜姫は走り出した。

「それにパピリオだって、成長するでちゅよ!」
小竜姫も行ってしまった後、
遠く走り去ってしまった少年にもう一言付け加えるパピリオ。
同時に身長計がかき消える。
だがその笑顔は、得意満面というものとは少し違っていた。

くされ縁の始まりであった。

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