#新歓企画!『対決!!』Ver.猫姫
投稿者名:猫姫
投稿日時:(02/ 7/31)
恋は闘いだ―――って、誰かが言ってた。
だとしたら、私は勝利者のはず。
山ほどのライバルに打ち勝って、欲しいものを……欲しくてたまらないものを、手に入れた。
でも、時々考えてしまう。
ふと、考えてしまう。
それは、例えばこんなとき。
キミの、無防備な背中を見つけた、こんなとき。
「よーこっしまっ♪」
「あはは。どした、タマモ?」
〜#新歓企画!『対決!!』Ver.猫姫〜
背中に耳をぴとっとつけて、抱きしめた。
言葉だけじゃ伝わらないあたたかさに触れて心地好い。
境界線みたいな体がジャマ。ひとつに融け合ってしまえれば、もっともっとキミを感じられるのに。
「危ないだろー。単車の整備してんだからさ」
「……いーやーだもん」
「ほら、いい子だから」
「……いよ」
「んー?」
「別にいいよ、私。悪い子で」
キミに触れていたい。この気持ちが悪いことなら、きっと私はとてもとても悪い子。永遠に、悪い子。
「そんな悪い子は、山に還しちまうぞ?」
「…………」
「…………」
「…………」
「……嘘だけどさ」
「……知ってるけどね」
うん、知ってる。知ってる、けど。
「じゃあ、どっか行くか。一段落ついたら」
「えっ?」
「ふたりで、どっか、出かけよう。それでどうだ?」
「え、あ、……うんっ♪」
「でも、単車の整備が終わらないと、足が無いんだよなぁ」
「コブラも、美神さんが乗ってっちゃったよ」
「……しゃーない、バスでも使うかなあ」
「それなら……自転車」
「へ? 自転車って」
「自転車がいい。私、まだ乗ったことないから」
「そうだったっけ? でも、おキヌちゃんとかに……」
「初めてだよ。……横島の後ろに乗るのは」
ペダルをこぐ、キミの背中に頬すりよせて。おじぎのヒマワリ通り越して。
「うわ、ペダルが勝手にっ!? タ、タマモ、お前『力』使ってるだろっ!」
「なーんーのコトっかなー♪」
「速い、速いってタマモ!」
「あはは、いつもバイクに乗ってるくせに」
「単車と自転車は感覚ちがうのっ! もう俺に代わってくれーっ!!」
「やーだね♪ 最高速度ー」
ぐんぐん風を呑み込んで。ほら、もう飛べそうだよ。
「あはははは♪ ほら、そんなにしがみついたら危ないよ? 横島は悪い子だなあ♪」
「うわっ、根に持ってるなお前! ごめんっ、さっきはごめんってーっ!」
「わかればいいのよ」
「……死ぬかと思った……」
「自業自得でしょ」
「まったく、さっきのはホントに冗談だって、わかってんだろ?」
「んー…、でも、でもね……」
わかってても、言われたくない。
だって、還り道はとっくに忘れてしまったんだもの。
キミのせいで。
「今さら還られたら……俺が困る」
「……うん」
キミの全てが、何もかもが。私を離さない。何もかもが、私を溺れさせる。
私は、空を見上げてみた。
いつか見たことがあるような青い空が、どこまでもどこまでも広がっていた。
「……マモ、……タマモってば」
「……あ、ゴメン。何?」
「いや別に。タマモとは、ここ来るのも初めてなんだなって」
「……うん」
「普段は来ないもんな、こっちの方」
「……うん」
「きれいな眺めだろ? ここからだと街がいっぺんに見えて」
「……うん」
「どした、ぼーっとして」
「……うん……あのね」
「なに?」
「…………抱きしめて、くんない?」
「……ん」
あったかいリズム。2コの心臓がくっついていく。
「しあわせだなぁ」
「……そか」
「あったかいよ」
「そうだな」
「心臓の、音がするよ」
「ドキドキいってるな」
「……うん」
二人の距離がだんだんなくなっていく。
「いいのかな」
「何が」
「こんなに、しあわせで」
「いいんだよ」
「しあわせだよ。……ときどき、不安になっちゃうくらい」
「いいんだよ、タマモは。しあわせで」
「そう?」
「そ」
神様は、何も禁止なんかしてない。しあわせになるのに代償や犠牲が必要なほど、この世界は無粋じゃない。
「ねぇ、横島………私のこと、スキ?」
「……ん。俺は好きだよ、タマモのこと」
「ダメ」
「え?」
「“好き”じゃダメ」
「何だよ。そう聞いたのは、お前だろ」
「ちゃんと言ってほしい。“好き”じゃなくて――」
「……! う、あう……」
「……」
「……」
「……」
「…ズ、ズルいぞ。お前だって、そんなの言ったことないじゃん」
「私は子供だもん。生まれ変わったばっかりだもん」
「…むぅ」
「『アイシテル』なんて、まだ言えないよー♪」
「い、い、言ってるじゃんかっ」
「あはははっ……言ってないよ。横島の気持ちを代弁してあげただけだよー♪」
「こ、こらっ、逃げるなっ!」
だから笑おう。せいいっぱい笑おう。小さな幸せを、ひとつひとつ積み重ねながら。
「タマモっ! 飛んじゃダメだって! 誰かに見られたら……」
「いーよーだ」
「よくないっ! だから逃げるなーっ!!」
小さな二つの手をつないで、キミと一緒にどこまでも行こう。
「……っ、はあっ……捕まえたっ……」
「……ちぇ」
「ほら、はやく降りてこいよ」
「イヤ」
「どうして」
「横島に、見てもらいたいから」
「……俺に?」
「もっと、見てほしいから。私が、こういう生き物だって」
「……タマモ」
「誰に見られてもいいよ。横島が――」
「…………」
「横島が、受け入れてくれるなら。私は、それでいい」
見て欲しい。――この私を。ありのままの私を。
聞いて欲しい。――この胸いっぱいに詰まった、カタチにならない言葉たちを。
「……答えなんて、わかってるくせに」
「……知ってるけどね」
うん、知ってる。わかってる。でも、だから――
「ありがとう」
「よせよ。そんなのはおまえらしくない」
「ん……そうかな」
「ああ。そうだ」
「うん、そうだね」
「――でも、ありがとう」
だから私は、いつだって、まばゆいばかりにしあわせで……。
でも、時々考えてしまう。
ふと、考えてしまう。
本当に、勝利を手にしたのは、果たして―――。
今までの
コメント:
- 終始横島クンを振り回しているように見受けられる玉藻ですが、その反面横島クンから「幸せ」を享受している点、そして横島クンから受ける「幸せ」が無い生活が考えられない点などから今回は横島クンの勝利でしょうか?(笑) ラストの玉藻の「ありがとう」というセリフが全てを物語ってますね。猫姫さま(さま?)らしい温かみ&爽やかさの溢れた作品だったと思います。お疲れ様でした♪ (kitchensink)
- さすが猫姫さんですね。とてもお話を書くのがうまいですね。
タマモの気持ちがうまく書かれていて楽しめました。
それはそうと横島くんはもてますね。 (3A)
- いやあ、いいお話でした。恋する少女のときめく心が伝わってきました(爆←男のくせに)。ちなみに文中で引用なさっているのは川本真琴の歌ですね?(にぶんのいち、だったかな?)
さすがは猫姫さん!といった感じのお話でした。楽しませていただきました。 (ヨハン・リーヴァ)
- いい話読ませていただきました!!
私も文章に引用されてるの1/2だと思いますよ。
あれはよく聞きましたから修学旅行のバスで誰か
歌ってましたからね。(話しがそれましたねスイマセン)
ほんといい話でした。 (あゆむ)
- はじめましてm(_ _)m・・・グレ展では(^_^;)
猫姫さん ラヴ!・・・い、いや、違くて・・・違くはないけど・・・タマモ ラヴです!
>「今さら還られたら……俺が困る」
タマモが思う事を多分横島も思ってるでしょう・・・「勝利を手にしたのは相手」と
この勝負、引き分け・・・いや、二人とも勝利者!
あえて勝利者を一人に絞るとしたら・・・こんなに素晴らしいお話を読ませてくれた『猫姫さん』ですね (ぴろしき)
- お互いの心情がスッと入ってきて、凄く読みやすかったです。横島に甘えるタマモも、可愛らしくてグッドですね。 (tea)
- ―――――!!タマモが横島と!?
横島って誰とでも合うなぁ・・・
しっかし・・・まぁ・・・こころがぐっ!!とくる話です。
勝利したのは―――やっぱり”数々の強敵”を破って横島を勝ち取ったタマモかと思ったりしますが
やっぱり勝利者は、ある意味一番遠かったタマモのこころを奪った横島の勝ちでしょうね。 (NGK)
- な、なんか猫姫さん凄い…と言うか素晴らしいです。最初から最後までラヴを貫き通すなんて、私には到底無理です。…でも、元から私は挑戦するだけの精神力が…(書くと疲れるらしい←笑) (マサ)
- うわぁ…良いです!すごく!
この題材って、こういう風にも料理できるんですね。いや、猫姫さんだからこそなのかも。 (kort)
- 前から思ったいた事ですが、姫君の書かれる“恋愛感情”には、微塵の揺らぎも無いんですよね。もー、全身全霊でスキって感じで。相手以外に目が移る可能性ゼロ!
流石は、「黒犬さんの何処がスキ?」と訊かれて即座に、しかもあっさりと「全部です」と答えられる猛者! (ぱっとん)
- ↑以前、黒犬氏三人説が出たときも、三人共手放そうと、しませんでしたもんね。
タマモの、横島に対するよそよそしさが消えるとこうなりますか……
新感覚のタマモで、しかも確かにあのタマモでもある。
猫姫さん、キャラ動かすの上手過ぎ!!
横島のことを「キミ」と呼ばせていたのも絶妙な業でしたし―――
単車……も?な、なんか、こだわりというかを感じますが?(笑) (魚高)
- 姫へ。単車を弄っている時に後ろから襲い掛かるのは止めて下さい。マジで危ないんです。君が。
>しあわせになるのに代償や犠牲が必要なほど、この世界は無粋じゃない。
なんか、妙に気に入ったフレーズ。よし、俺も何処かで使おう(笑) (黒犬)
- タマモちゃん可愛いっす!横島が羨ましいですよー。
この小説全体が可愛い雰囲気で和みます。
・・・さ、CD聴いてこようかなっ!(笑) (眠り猫)
- 横島くんが悪いっ! 全てっ!!(爆)
「還す」なんて、冗談でも言っていいものじゃないですよね!
この対決、横島くんはタマモにいいように弄ばれてますが、もともと非があるので横島くんの負けは既定事項です。
タマモのまっすぐな気持ちが、いたずらっぽくもかわいい言動や心理描写を通して、流れるようにスムーズに伝わってきました。
『GS美神』の二次創作という枠を超えても、普遍的に評価されうる作品だと思います。
猫姫さんの企画へのご参加を光栄に思います。お疲れ様でした。 (斑駒)
- ・・・・・・・・・・・幸せーな話すぎてなんて言って良いかわかりません(T-T)
とりあえず一言、グッドジョブ!T▽T)b (ゆうすけ(侍))
- こんなタマモも好いですね。可愛いくて。 (べべる)
- 猫姫さん、お疲れ様でした。
こういう形の対決もあるんだな、と……文も丁寧で読みやすく、面白かったです。
今は旅の空……? (AS)
- 普段から「反対するくらい詰まんないんなら読まなきゃいーじゃん」とか、
「ラブコメは生理的にうけつけねーんだよ」とかのたまっとる俺が反対票投じるのは、
何も嫌がらせというわけではないことを前置かせてください。
その意味で、読破した作品には例外なくコメントを入れる俺が、反対票を投じるというのは
俺のコメントが残っていない作品よりも、俺の主観の上では優れているという評価です。
というか、ホントに反対票投じるのは初めてなんですけど、
はっきりいってつまんなくないです。ただ、この男女を横島とタマモ、とするのは、
あくまで俺の主観の上では、少々説得力に欠いた、ということにすぎません。
俺も書く側ですし、反対を投じるのは心苦しいですが、譲れない信念と感動の板挟みでした (ダテ・ザ・キラー)
- 結論から申し上げると、私はこの作品に関して「反対」を入れざるを得ませんでした。
私が基本的にラブコメ好きなのは、猫姫さんも御存知のこととは思いますが、
この作品におけるタマモのキャラに対して、どうしても納得がいきませんでした。
私としては、
〜何故タマモが横島を『欲しくてたまらないもの』と形容するほど好きになったのか〜
という部分がどうしても引っ掛かってしまい、特にそのことを問題視しました。
これは、私がこの作品を受け入れられるかどうかを決するには非常に重要な部分でした。
それが、この部分を飛ばされてしまったために、私にはもう作中のタマモを受け入れる
機会すら見出すことができませんでした。 (溶解ほたりぃHG)
- もし、タマモが作中のようなキャラになる『きっかけ』がどこかに描写されていれば、
私の捕らえ方もまた違ったものになったと思いますが、それだけに残念です。
このストーリーの基幹となる『原作とは異なるタマモのキャラ』に説得力がないというのは、
一歩間違うと私のように『どうしても受け入れられない』読者を増やすことになると思います。
私はタマモ者として、作中のタマモのキャラを、たとえ猫姫さんが望まれていたとしても、
受け入れることはできません。 (溶解ほたりぃHG)
- 長々と書いてきましたが、結局のところ、反対理由はこれ以外の何物でもありません。
今回の意見は、私の個人的な考えによるものであることを、どうかご理解頂きたく願います。
最後に、もしこのタマモのキャラを受け入れられたと仮定した時の感想は、これまでに
皆さんのコメントで繰り返し語られているようなものになることを明記しておきます。 (溶解ほたりぃHG)
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