ザ・グレート・展開予測ショー

#新歓企画!『対決!!』ver.ヨハン・リーヴァ2


投稿者名:ヨハン・リーヴァ
投稿日時:(02/ 7/26)

昼下がりの美神除霊事務所。
いつものメンバーに加えて、今日は何故か小鳩がいる。
「・・・と、いうわけなのよ」
美神が額を押さえ忌々そうに言った。
「あたしとしてはあのバカが生きようが死のうが関係ないんだけどさあ、まあ死なないにこしたことはないからね」
「美神殿は素直ではござらんなあ」
「・・・何か言った?」
「い、いやなんでもござらん」
美神の殺気に満ちた視線を浴び、シロは慌てて両手を振った。
「そういうわけで小鳩ちゃんにあのバカの栄養管理をお願いしたいのよ・・・やってくれる?」
「あの、なんだったら私がやりますよ?」
おキヌが胸に手を当てて言った。
「おキヌちゃんは駄目。明日からは試験でしょ?あのバカのせいで成績が落ちたらどうするのよ」
「でも・・・」
「大丈夫です。私、やらせて頂きます。学校は今日から夏休みですし」
それまで黙っていた小鳩が口を開いた。
真っ直ぐな眼が決心の強さを物語っている。
(あ〜あ、うちの学校が普通の日程なら横島さんと一緒にいられたかも知れないのに・・・)
おキヌは心の中で嘆いたのだった。
「OK。それじゃお願いね」
話がまとまったかに見えた時。
「いやや〜!一日に焼いたヤモリを一匹だけの生活を一週間も続けたら死んでまう〜!」
それまで大人しくしていた横島が突然騒ぎだした。
「タマネギとヤモリは嫌いや〜!」
「うるさい!元はといえばあんたがあんな低級霊に寄生されたのが原因でしょうが!」
「あれは襲われた美神さんを助けようと・・・ぶべらっ!?」
鋭い肘打ちが容赦なく横島を襲う。
「あんなの予測済みよ!あんたがいらないおせっかいを焼くから余計に時間がかかったのよ!?」
「そんな〜・・・あんまりや〜」
「とにかく!」
美神は腕を組んだ。
「中の霊はあんたのエネルギーを栄養にしているから、あんたが栄養を取らなければ向こうも弱っていくの。
それを一週間も続ければ、耐え切れなくなって出てくるはずよ。
ちなみにヤモリを一日一匹食べるのは霊力が下がりすぎて人格を乗っ取られるのを防ぐため。
どう?納得いったでしょ?」
「いややあ!納得いかへん!」
「安く仕上げるにはこの方法が一番なの!つべこべ言ってると時給下げるわよ!?」
「ひ、ひどすぎる・・・」
「頑張りましょ、横島さん!」
小鳩の励ましは横島の耳に届いたのだろうか。


その日の晩、横島は自分の部屋で寝っ転がりながらぶつぶつ文句を言っていた。
「くそっ、いくら貧乏暮らしに耐えてきた俺とはいえ一週間焼いたヤモリだけでは辛すぎる。
何とかして食糧を確保せんと・・・」
こんこん。
「ん?誰だこんな時間に」
扉を開けると、TシャツにGパン姿で大きなかばんを持った小鳩といつも通りの格好をした貧乏神がいた。
「おお、新鮮・・・じゃなくて、どうしたの?こんな時間に・・・?それにそのかばんは?」
「あのお、・・・そのお・・・えっとぉ・・・」
赤くなりもじもじする小鳩。その姿はうぶな中学生のようである。
「なにってお前、お前がこっそり余計なもん食わへんように見張るんやないか。泊りがけでな」
「と、泊りがけ!?し、しかし・・・」
「おまえの言いたいことはわかっとる。みなまでいうな。要するにお前が小鳩に妙な真似せんようにワイが見張るというわけや。どや、名案やろ?」
「う、むむむ・・・」
「よ、よろしくお願いしますね」
こうして三人の奇妙な共同生活が始まった。
始めの三日間は問題なく過ぎていった。
が、四日目の昼あたりから横島の様子がおかしくなり始めた。
「ねえ貧ちゃん。横島さんの目が虚ろなんだけど・・・大丈夫かな?」
「う〜む、だいぶきついみたいやな。減量中の力石徹と同じ目や」
「それってかなり危ないんじゃ・・・?」
小鳩の予感は的中した。
五日目の晩、横島が奇声を発し部屋の外に飛び出そうとしたのだ。
「うおおおおお!!」
「暴れ方まで力石やな。鍵閉めといて正解やったわ。どうせこいつに扉を破るパワーはないやろうし」
「貧ちゃん!呑気に分析してないで横島さん押さえるの手伝ってよ!」
「おお、わかったわかった」
力を合わせた二人に脱出を防がれた横島は、みっともなく泣き出した。
「腹減った〜腹減ったよ〜」
「横島さん、あと少しですから頑張って下さい。ほら、おさゆ飲みませんか?」
「俺はボクシング選手とちゃうんや!この鬼!」
「・・・っ!!」
小鳩の目に突然大粒の涙が浮かぶ。
「私は・・・私は横島さんに良くなって欲しかっただけなのに・・・もういいです!好きにしてくださいっ!」
小鳩は部屋を飛び出した。
「え!?え!?なんで・・・?」
慌てふためく横島。
女に泣かされた経験はいくらでもあるが、泣かれた経験は数えるほどしかない。
「・・・なあ横島。お前小鳩がいつ何を食うとったか知っとるか?」
「え・・・?そ、そういえば・・・」
確かに、弱った横島の話し相手になってくれたり、部屋を片付けてくれたりしてはいたが、食事を取っている姿は見たことがない。
「お前がつらいのに一人だけ食べるのは申し訳ないゆうてな。この五日間あいつもほとんどなんも食うてへんで。
せいぜいお前が寝てる間にパンかじってたぐらいや。はは、ワイも付き合わされたんやで?」
「・・・俺、小鳩ちゃん探してくる!」
横島も、やれやれと肩をすくめる貧乏神を残して部屋を飛び出した。
空腹からくる眩暈に倒れそうになりながら走り、ついに小鳩を見つけたのは近所の公園のブランコだった。
駆け寄る横島。それに気づいた小鳩は一瞬ほっとしたような表情を見せたが、すぐにそっぽを向いてしまった。
「あ、あのさ小鳩ちゃん・・・ごめんね?小鳩ちゃんも我慢しててくれたのにひどいこと言っちゃって・・・」
「・・・貧ちゃんから聞いたんですか?」
「うん。それで一言謝りたくて・・・。これ、俺の誠意」
横島は文殊を取り出した。文殊には「耐」の文字が浮かんでいる。
横島はなんとそれを一息で飲み込んでしまった。
「よ、横島さん!?何を!?そんなの飲んだら苦しいですよ!?」
「うん、これできっと最後まで頑張れるから。ううん、頑張って見せるよ!」
「横島さん・・・!」
小鳩の目から大粒の、しかしさっきとは意味合いの違う涙がこぼれた。
「わ、わわ!?小鳩ちゃん!?」
一度ならずに二度までも泣かれてしまい、慌てる横島。
そんな二人を、貧乏神はまた肩をすくめながら見ていたのだった。
(やれやれ、あんの天然スケコマシが・・・純な小鳩じゃ到底かなえへんな)


文殊の効果はてきめんで、横島はあれから暴れることもなく大人しくしている。
それならもっと早く気づけよとも思うのだが、彼は追い詰められないと知恵が働かないらしい。
なにはともあれ、七日目の朝。
「ん!?な、なんか腹の底から・・・!?」
「どうしました横島さん!?」
「いよいよか!」
「ご、んごへ〜!?」
横島は遂に取り付いていた霊を吐き出した。
霊の形は、さながらミイラのようである。よっぽど消耗したらしい。
「この野郎、よくもいままで・・・!」
横島は万感の思いを込めて霊波刀をつきたてた。
ぽひゅ。霊は悲鳴すら上げなかった。
「横島さんっ・・・やっと・・・やっと・・・」
「うん。小鳩ちゃんのお陰だよ。ありがとう」
「・・・横島さんっ!!」
小鳩はこらえきれずに横島に抱きついた。
その時。
「横島クン、もう霊は外に出た?」
横島の幸せは長続きしないということなのだろうか。
「み、美神さん!?」
玄関で仁王立ちしている美神。
「・・・ふ〜ん。少しキツいことさせたかなってわざわざ給料持ってきてあげたけど、邪魔だったみたいね?」
「あ、そのこれはそのっ・・・」
慌てて離れたが、時すでに遅し。
「ぐあっ!?」
給料袋が彼の顔面を直撃した。



「魔鈴フルコース、オードブルはラザニアのクロノス風味です」
「ああ、どうも」
「ふふ、今日は二人してデートかしら?」
「いえ、そんなわけじゃないです!」
「あらそう?とてもそうは見えないけど」
「すいませ〜ん、オーダーいいですか〜?」
「あ、は〜い。少々お待ちください。・・・最近忙しいわね。バイト雇おうかしら?」
魔鈴が去り、二人だけの空間が生まれる。
「あの〜、いいんですか横島さん?こんな高そうなのおごってもらって・・・」
「いーのいーの。気にしないでよ、小鳩ちゃん。給料もらったばっかだし」
次の給料日まで袋めんで過ごすなんて、口が裂けてもいえない。
「じゃ、乾杯しようか?」
「はい。かんぱ〜い」
「かんぱ〜い」
シャンパン代わりのサイダーに口をつけた瞬間、横島はいいようのない恐ろしい殺気を感じた。
「ま、ままままさか!?」
辺りを見回したが、それと思しき人物はいない。
「まさかばれるはずは・・・いやしかしあの感覚は・・・」
「−?どうしかしましたか・・・?」
「い・・・いや、別に・・・」



横島たちからは死角の席で、殺気の主はシャンパンをがぶ飲みしていた。
「ったく、丁稚の分際でなに夕食おごってんのかしら?そもそもなんでこの店なの?あんな女の料理食ったら小鳩ちゃん腹壊すわよ?」
「まーまー、そう言わずに・・・」
「おキヌちゃんもやめておいたほうがいいわよ。あの二匹は別だけど」
美神が指差した先には、二人席に座り向かい合わせで一心不乱にうどんをすするタマモと一心不乱にステーキにかぶりつくシロがいる。
「まったく。あたしがこうして見張っとかないとあのバカはなにするかわからないんだから・・・。おキヌちゃん、目を離しちゃ駄目よ」
「ふふ、はいはい」
(もう、素直じゃないんだから)
おキヌは心の中で呟いた。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa