ザ・グレート・展開予測ショー

推定無罪! その14


投稿者名:A.SE
投稿日時:(02/ 7/24)

「昨日も言ったけど、事態は非常に深刻よ!人間中心の現代社会では、妖怪の論理も事情も全くと言っていいほど省みられない。もしシロちゃん、タマモちゃんが捕まれば、情状酌量も未成年であることへの考慮もなく、単純に危険な妖怪として除霊されることになる。彼女達を助けるには私達が事件の犯人を『除霊した』ことにするほかないのよ。」
「しかし…たった二人で上手くやれるかなあ…。それこそ退治してしまうんならともかく、説得して気づかれないようにその場から連れ出すなんて…。せめて二手に分かれて同時に両方へ行ったりせずに、四人がかりで片一方ずつ片付けたほうが…。」
「4人がかりで確実に一方を解決したとしても、その間にもう一方が取り返しのつかない事になったら意味無いわ。それにこの件には公安からオカルト知識のある捜査官が総出でくっついてくる。私たちに協力するというのはタテマエで、実際には行動を監視するためよ。それをいくらかでも分散させないと安全にタマモちゃんたちを逃がせなくなるわ。」
「しかし大丈夫なのかね?これは君にとっても西条君にとっても危ない橋になるんじゃ…」
「危ない橋は前からですよ。ここまで来て自分の身可愛さに二人を見殺しにはできません。うまくいけば公安もこれ以上ウチに難癖はつけられなくなる。失敗すれば…多分免職ですね。でも何にせよ、捜査機密の一部まであなた方に見せてしまいましたし、ここまできて後には引けませんよ。」
「ケッ、自分の身可愛さに美神さんを助けようとしなかったクセに…」
「ここもまた『後には引けない』か…」
「なに!?」
「どうしたの?」
「い、いえ、何でもないっス!」
「いや、なんでもないよ。」
「とにかく、警察は今までの捜査資料から次の標的になる病院を予測するのは難しいとしてるけど、私たちはタマモちゃんの性格を知ってるし、妖狐に関する知識もあるから、ある程度行動パターンを読む事が出来るわ。」
「というと?」
「この地図をみて。被害にあった病院に印がつけてあるわ。これは資料の中でも指摘されてる事だけど、どの病院も比較的近くに広い緑地がある。もっと言えば被害に遭うのは緑地から2キロ以内の病院よ。」
「緑地をねぐらにしてるんスね…。でもどうして2キロ以内なんスか?」
「キツネの行動範囲は巣から半径2キロ以内なのよ。それにこれを見て。被害に遭った病院の写真よ。」
「…建物の形や雰囲気がどこと無く似てますね…。これは…白井総合病院…?」
「その通り!彼女は令子たちと何度か行った事のある白井総合病院に似た形の建物を『病院』と認識してるわけね。そして極めつけはこっちの地図。」
「このたくさん打ってある赤い点はなんだい?…ん…この点の多い場所にそって被害も移動してるのか…?」
「これはね、都内の立ち食いそば屋の分布地図なのよ。」
「そうか!あいつ金が無いからたち食いできつねうどん食べながら移動してるんスね!?」
「なるほど!これだけデータがあればタマモちゃんが今どの辺りでどの病院を狙ってるか予想出来ますね!」
「問題なのは事件を起こす周期が3日から10日と安定してない事だけど、それもこっちのカレンダーを見てもらえば何が基準になってるのかわかるわ。これにはこのところ何ヶ月かの天気が書きこんであるんだけど…」
「…必ず2日前から晴天が続いてる日に行動を起こしてるのか…。野宿してるから雨が降ると体調が整わないだろうし、空気が乾燥してたほうが幻術のキレも良い…。」
「とすると、昨日今日と晴れが続いてるから…」
「明日が危ない。天気予報でも明日は晴れだしね。だからなんとか監査室と公安には明日動く了承を取り付けたわ。同時進行でシロちゃんの事も片付けましょう。」
「明日か…シロの奴今晩のうちに無茶しなきゃいいけど…。」
「私も早く行きたいのは山々だけど、監査が終わったとはいえウチは動きを制限されてるし、あなたも保釈中の身だから、今すぐというわけにはいかないの。とにかく明日まで何も起きないことを祈ってしっかり作戦を練りましょう。」

「わかったある。教えてくれて感謝するあるよ。ああ、それは安心するよろし。どこからの情報かは絶対漏らさないある。これはあんたの弟子を助けるための作戦でもあるんだから、いいかげん覚悟決めるよろし!それじゃ…。
 ケケケ、上手いあるぞ…!明日、心霊関係の捜査官が全部出払って大捕り物やるそうある。これは絶好のチャンスあるぞ。エミちゃん、結界呪場の形成は?」
「順調に行ってるワケ。明日には十分本起動が可能になるワケ。」
「じーさん、システムの点検の方はどうある?」
「もうあらかた済んどる。小型コンデンサ内圧正常、収束照射の微調整も完了じゃ。本格的な試運転をしてみる事はできんが、なーに、こいつは以前にもオーストリアで使った事があるから大丈夫じゃろう。なんせワシはこれでヒトラーの出生証明書を…」
「もーその話はわかったあるよ!…これが成功すればワタシにはゆくゆく大儲けが待ってるある。日本の霊具業界を制覇できるかも…!」
「わしゃあ日本国籍をもらえる約束になっとるからな…。そしたら年金と生活保護の支給がうけられる…!」
「最近ナマイキで払いのシブい検察の連中をこれでギャフンと言わせてやれるワケ!その上令子に恩も売れる…!!」
 ケケケケケ… ワハハハハ… フフフフフ…

「ったく…いきなり明日本番だって、一体何が本番なんだよ…!?」
「だから、冥子お姉様が言ってらしたでしょ!?巫術を使ってなにか霊視をするんですわ!」
「なにかじゃわかんね―よ!何を霊視させようってんだ!?」
「そんな事私が知るわけありませんでしょ!?」
「知らねえくせに偉そうに言うんじゃねえよ!」
「なんですって!?」
「ふ、二人ともそんな喧嘩しないでください…私が全部悪いんです、こんな事にまきこんでしまって…」
「べ、別におキヌちゃんは悪かねえよ…。あたしらが自分で協力するって言ったんだから…。」
「…とにかく、いまさら文句を言っても始まりませんわ。ここまできたら令子お姉様をたすけてくださるという鴫ノ池先生の言葉を信じる他ありませんもの…。」
「チェッ、まあとにかく明日本番だってことは、これでこのヘンテコな斎戒生活もお終いだって事だな。なんだかわかんね―けど一発気合いれてやっか…。」
「ありがとうございます…二人とも…。それじゃ、最後の沐浴に行きましょう…。」

「…わかった。くれぐれも気をつけてくれ。結果が出たらすぐ連絡を…うむ。では宜しく頼む…。
 …フフフ、いよいよ明日か…。上手くいけば首相の椅子まで一直線、発覚すればさすがの私も手が後ろにまわる…。いままで色々きわどい事もしてきたが、こいつはまさしく鴫ノ池麟太郎一世一代の大博打だな…。」

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