ザ・グレート・展開予測ショー

彷徨う二つの心(8、朝日影・前編)


投稿者名:マサ
投稿日時:(02/ 6/ 4)

人気に少ない総長の都内を、一人の少年が歩いていた。
その表情に複雑な思いを宿して、唯晴れ渡った空を見ていた。
そして、彼は今では珍しいレンガ造りの洋館の中に入っていった。
「おはよ、人工幽霊一号!」
『おはようございます。今朝はお早いですね』
屋敷の何処からともなく返事が聞こえてくるのを聞きながら、彼はゆっくりとした足取りで階段を上っていった。
昨日の就寝(気絶した)時間が早いためか、目がさめたのは日の出頃だ。
そんな時間で立ち入り可能な所は、この屋敷の管理者が人間ではない事に感謝するべきだろう。
事務兼応接用に使われた三階の一室のドアを静かに開け、中に入ると、左手にある食卓を囲む肘掛け椅子に一つに腰掛ける。
はぁ〜と溜め息を一つ付くと、彼は食卓に肘をつく。
自分は何をしているのだろうかと考えた所で、少々笑いがこみ上げてきた。

どのくらいの時間そうしていただろうか。
暫くすると、入り口のドアが前触れも無く開き、眠たそうに目をこすりながら一人の少女が現れた。
「おはよう…あれ!?横島さん!!どうしたんですか?今日は妙に早いじゃないですか!?」
口に手をあて、驚いた様子で彼女は言う。
もう眠気は吹き飛んでしまったようだ。
「ああ、おキヌちゃん。おはよ!」
どこか嬉しそうな笑顔で横島。
おキヌはお茶を入れてくると言って台所にぱたぱたと消えていった。
いや、どちらかと言えば、その笑顔に目を合わせていられなかったといった方が正しいかもしれない。
彼女は昨日の事が多少なりとも気になっていたのだが、無理に明るく振舞っていたわけでもなく、唯、普通に心のままに見せた―笑顔だった。
それがおキヌには嬉しかった。
おキヌが紅茶の入ったカップを盆に載せて、そして気持ちをしっかり落ち着かせて戻ってくると、横島はなにやら考えている様子で俯いていた。
はい、と言っておキヌはティーカップをことっと鳴らして横島の前に置く。
自然に彼女の表情に微笑が生まれる。
ティーカップの音で我に返った横島は、朝日の中で光り輝く彼女の姿を見て再び動きが止まる。
魅せられたという表現が一番しっくりくるかもしれない。
そして、一言。
「綺麗…」
それは、彼の口から無意識に出た言葉。
それを聞いて、おキヌは不思議そうな面持ちで彼の隣に座った。

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