ザ・グレート・展開予測ショー

母への想い 完結編


投稿者名:NOZA
投稿日時:(98/11/27)


おきぬ…………おきぬ……………
《………おかあ、さん………顔の見えない………おかあさん………》
…………おきぬ………優しいおきぬ…………

その瞬間、おきぬは目を開けて立ち上がった。体中が悲鳴をあげたが、労ってあげることはできなかった。
ゆうじが見おろしていた。肩で息をしながらおきぬは話し始める。
「ゆうじ君、私は覚えているわ………子守歌の他に一つだけ…………お母さんの『優しさ』を!!」
「………………」
「ごめんなさい………ごめんなさい、ゆうじ君…………私はあなたを助けたいの!!」
ネクロマンサーの笛はまだ手の中にあった。それを口元に運ぶと、おきぬはゆうじの顔をした怪物を睨み付けた。
ヒャクメに鍛えられた千里眼がきらめいた。怪物の体の中に何か異質な物が見えた。
それがヨリシロなのかは判らない。だが、霊団にとって重要な物に見えた。
《あそこ………あそこを!!》
おきぬはネクロマンサーの笛を高音部の穴のみで全力で吹いた。
瞬間。
パン!と音を立てて街灯が砕けた。駐車してあった車の窓が派手な音を立てて割れた。雪のように木の葉が
すべて舞い落ちた。
ネクロマンサーの笛から信じられないほどの超音波が発生したのだ。
グオオオオオオ…………
ゆうじの顔をした化け物が苦しげにのたうっている。
変換された霊波は強烈な敵意を持っていた。吹き手に似つかわしくなく。
鋭い超音波のような霊波は霊団の結合部を破壊し、なおかつ共鳴現象を起こして怪物の内部を破壊した。
そしてついに、怪物の体がぐずぐずと崩れ始める。
おきぬはなおも笛を吹き続けていた。睨み付けたまま、泣いていた。
《………ごめんね、ごめんね、これしかないの。これしか方法がないの!!》
崩れゆくゆうじの顔が、一瞬だけ笑ったように見えた。
…………ありがとう………この子達は連れていくよ…………
おきぬは、確かにゆうじの声を聞いた。

怪物がいたところに残っていた物は、腕と足が折れ、ヒビの入った超合金の怪獣のおもちゃだった。
おきぬの透視した異質な物の正体だ。
ゆうじの物に間違いない。今は何の霊波も感じないが、ゆうじの霊もこれに宿っていたに違いない。
その怪獣のおもちゃをおきぬはそうっと、まるでわが子のように抱き抱えた。
《お義父さんの氷室家に届けて、鄭重に弔ってもらおう。》
おきぬは何故か、公園の奥の植えこみをちらりと見たあと、ゆっくりと歩き出した。

この子の可愛さ限りない
山では木の数萱の数…………

誰もいない公園を、静かに、優しく子守歌が流れた。


誰もいないはずであった。
静かになった公園の奥の植え込みから突然、がさがさと二つの人影が立ち上がった。
「…………どうもおきぬちゃんに変な霊気がまとわりついているかと思ったら………。どうしてこうも金になら
ないことをやりたがる人が多いのかしら…………」
美神は左手でコートに付いた葉っぱを払いつつ、ぶつぶつと文句を並べた。
「そー言う美神さんこそ、なんで一千万のおふだを握りしめているんですか?」
「こ……これは、その………念のためよ、念のため。あ、あんたこそ文珠を三つも握りしめていたくせに………!!」
横島のツッコミに、いまいち切れが悪い。
「それはそうと何故おきぬちゃんが吹っ飛ばされたとき、俺が助けようとしたのを止めたんですか?文珠取っちゃっ
て………」
美神は大きくかぶりを振った。
「必要なかったからよ。…………あの霊は本気じゃなかったのはすぐに判ったわ。」
「本気じゃ、なかった?」
「ごちゃごちゃ言っていたけど、害意は感じなかったわ。だいたい、あの悪霊が本気なら最初の一撃でおきぬちゃん
全身骨折よ。倒れ込んでるときも何もしなかったし、決定的ね。」
「………成仏したかった、てことっスか?」
「おきぬちゃんにならってことかしら。私や横島君だったら、また別ね。」
横島は感心したように頷いた。
「でもおきぬちゃん、いつの間にあんな大技を………」
横島の問いに、美神は腕を組んで困ったようなしぐさをした。
「あの技、全然使いきれてないわ。」
「へ?」
「『ネクロマンサーの笛』は破魔のアイテムじゃないし、音が完全に霊波に変換されてないもの。咄嗟に思いついたんで
しょうけど、派手なだけで、訓練不足のおきぬちゃんには使いこなせないわよ。」
「じゃ、あの悪霊は………」
「周りに取り付いていた雑魚には効果があったでしょうけど、おそらく、自分で成仏したの…………おきぬちゃんが好き
だったから、おきぬちゃんの優しさを危惧していた。あの悪霊はおきぬちゃんの本気を見たかった…………勝手な想像だ
けど。」
「じゃ、あの技は効果が無いっておきぬちゃんに教えておかないと!」
「それこそ必要ないわ。………あの子には判っているはずよ。全部、ね。それより早く戻るわよ。おきぬちゃんが事務所
に着く前に。」
「へーい。………あともう一つ聞いておきたいんっスけど、おきぬちゃんが倒されたとき俺の文珠で何をやったんですか?」
「バレてた?『想』よ。」
「…………想い?」
「テレパシーで応援してあげてたの。あれで十分よ。」
横島は美神にどんな応援をしたのか、とは聞かなかった。
聞いても教えてなどくれないだろうから。

翌日。
今日はなんら凶悪な事件は起きていなかった。不謹慎なアナウンサーは退屈そうに見えた。
おきぬは静かにテレビを見つめている。
美神と横島はとり込み中であった。
美神が横島のために、心のこもった手料理を食べさせようとしているところだったのである。

「さあ、横島君。特製中華風ワカメスープよ。たくさん食べてね。」
「…………美神さん、このワカメ、スープの中で泳いでるんですけど…………」
「新鮮よね・」
「…………このワカメ、あのマグマの沼でテラピアみたいなのと格闘していた奴じゃ…………」
「天然物ね・」
「…………何故俺が食べなきゃいけないんですか?」
「いやねぇ、横島君。私の手料理を食べて欲しいからに決まってるじゃない………ついでに効用も判ると、厄珍が高値で
買い取ってくれるって。」
「……………………………」
「……………………………(ドキドキ)」
「イヤだああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「コラッ!!!喰わんか横島ァァァァァ!!!!」
「ピチピチしたワカメなんてイヤっスうううううう!!!!!!」
「あ、あの、美神さん、横島さん…………」
「?何、おきぬちゃん??」
美神は右手で横島の鼻をつまみ、左手で元気にワカメの跳ねるスープ皿を持っていた。こうすれば、何分後かには横島は
口を開けざるおえない。………鬼である。
「……………いいえ、何でもないです。」
聞いても、答えてくれるはずはなかった。ある部分はやたらシャイな人たちだから。
おきぬは窓から空を見上げた。
神様、どうかゆうじ君の優しいお母さんになってあげて下さい。
声に出さず、おきぬは心の中で願った。


「ぐぼがぼぼぼぼが………わがべがわがべが……*☆◎□■♀℃%##▼※」
横島最大の不幸は、何故かおきぬが止めてくれない時があるということに間違いなかった。

                                【終わり】


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