ザ・グレート・展開予測ショー

母への想い その2


投稿者名:NOZA
投稿日時:(98/11/27)

その夜。
「………首都圏で続発する女性の惨殺事件はこれで6例目を数え、警察に対する不信感は
募るばかり…………」
おきぬはいつになく真剣な眼差しでそのニュースに見入っていた。
美神はと言えば、もう全くそんなニュースに関心を寄せていなかった。
美神と横島は取り込み中であった。

「いい、横島君。私はどーーーしても採取したこのキノコの効用を知りたいのよ。あの土地
で取れた物で、新種で効果抜群なら、一千万は下らないわ!!!」
「だからって紫色で‘いぼ’からシューシュー煙り噴いてるキノコ何て喰えますか!!!」
「大丈夫よ、横島君。あの土地には純粋な毒を持つ植物は生えていないの。必ず魔法的な意味を持っているわ。
…………それに何より、横島君。」
「な………何っスか?」
「私があなたの命と引き替えにするわけ無いじゃない。」
「………ぜ………全然説得力がない…………」
「私を信じて。」
「いやじゃああああああ!!!!!」
「こら!!、喰え、横島ァ!!!!!!」
「ムラサキは消化に悪いっス〜〜〜〜!!!!!!!」
「あ、あの、美神さん、横島さん、私ちょっと用を思い出したのでそこまで出かけてきますね。」
横島最大の不幸は、何故かおきぬが止めに入ってくれない時が存在することなのかもしれない。
おきぬは激しい横島の抵抗の声を聞きつつ、ドアを閉じた。

美神は横島の口元まで強引にキノコを押しつけていたが、ぴたりと腕を止め、ドアを見つめた。
大切なはずのキノコをごみ箱に放り捨てると、コートを手に取った。

おきぬは公園に向けて走っていた。
妙な胸騒ぎがした。『予感』と呼ぶものか。
違う。この胸騒ぎは『予測』が当たることへの恐怖。
おきぬの瞳は公園から出ていこうとする男の子の霊を見つけた。
「ゆうじ君!!」
男の子の霊はビクリとして、おきぬを見た。
泣いてはいなかった。その目には戸惑いの色が浮かんでいた。
「なんで、なんで夜に来たの?」
その問いにおきぬは答えなかった。
「帰って。夜はきちゃダメ。夜はこないで。」
「ゆうじ君…………何処に行くの?」
「……………僕は何処にも行けない。もう、帰れないんだ。」
「…………………」
「ただ、ともだちのおねがいを聞いてあげるだけ…………」
ゆうじの霊体に異変が起こり始めていた。子供の肌が、金属のようなものに変化したように見えた。
「………友達の、願い?………」
ゆうじの目から戸惑いの色が消え、代わりに激しい怒りの炎が閃いた。
「そうだよ。僕と同じように、ママに殺された子供のね!!」
ゆうじの霊体が急におきぬと同じ大きさになった。それとともに霊体全体が質量を伴った金属のような体へと変質
していくようであった。

おきぬは真っ青になっていた。ゆうじの霊体の変化に驚いたのではない。
「ママに………お母さんに、殺された…………な、なぜ……」
ゆうじの目から激しい怒りとともに、涙がこぼれ落ちた。
「僕のせいだって………お母さんがお父さんに嫌われたのは、僕のせいだって…………」
おきぬはめまいで倒れそうになった。
確かにおきぬが死ぬ前にも、親が子を殺すことはあった。飢饉のとき、貧しさで一家が滅ぶ瀬戸際のとき、災害を鎮
めるために人柱にするとき…………
だがしかし、どんな事情があったにしろそんなくだらない理由でわが子に手をかける親はいなかった。
おきぬは、もうとっくに『現代』に慣れていると思っていた。だがこれは、極めつけだ。
「好きだったのに…………ママを好きだったのに…………」
おきぬは倒れてしまいたかった。だが、ここで倒れるわけにはいかなかった。
「どちらが幸せなの?ママの顔も知らないおきぬお姉ちゃんと、ママを忘れられないこの僕と!!」
おきぬは何も言えなかった。ゆうじの言葉だけが心にナイフのように突き刺さった。
「そして僕は………僕は………ママを殺したんだ。」
聞きたくはなかった。想像はしていたけれど、聞きたくはなかった。
殺されたゆうじが、ママを殺す方法。たった一つしかない方法。
《…………無駄飯ぐらいの税金泥棒。あれは絶対に悪霊の仕業だってのに。》
美神のぼやきがおきぬの頭の中で繰り返された。
ありったけの勇気を絞り出して、おきぬは問いかけた。
「………あの女性連続殺人は、ゆうじ君が…………」
そう問いかけた瞬間、ゆうじの目から怒りが消え、ただ深い悲しみで満たされた。
「やっぱり、気づいていたんだ………最初から、僕を祓うために声を掛けたの?」
「違う!!それは絶対に違うの、ゆうじ君!!!私は、私は………」
おきぬは自分自身の声の大きさに驚いた。ゆうじはおきぬの反論を聞かなかった。
「………僕は最初にママを殺して、それからは………友達の恨みを晴らすために………!!」
ごう、と風が吠えた。
ゆうじの周りに小さな悪霊が集まり始めた。
ゆうじと同じく、母に殺された子供の霊。
ずっとずっとさまよっていた。自分たちの恨みを晴らせる者が現れるまで。
……………悪霊を生み出すのは誰?
「………おきぬお姉ちゃん、この子達もかわいそうだよ。恨みを晴らしたくても、力がない……だから僕が…………」
「そんなの友達じゃない!!」
「………………………」
「友達じゃない………友達じゃないよ………何で友達がゆうじ君を傷つけるの?」
「…………傷つけられて何か、いないよ。」
ゆうじの周りを回っていた悪霊がゆうじに合体した。
その瞬間、ゆうじの霊体は5メートル程まで巨大化し、姿は金属製の怪獣のようになった。それでいて、顔はゆうじの
ままだ。
おきぬは2、3歩後ずさった。
「違う。ゆうじ君は傷つけられている………私が、助けてあげる!!」
おきぬはポケットからネクロマンサーの笛を取り出した。
ゆうじ君と悪霊を引きはがせれば………!!
夜の公園に澄んだ笛の音が渡った。
ゆうじは一瞬ひるんだが、何事もなかったかのように一歩を踏み出した。
効かない!!!
「………そんなのじゃ、僕を倒せないよ…………」
記憶を取り戻したときに追われた霊団とわけが違う。奴等は自分たちの欲望だけでおきぬの肉体を乗っ取ろうとしただけだ。
ゆうじ達は違う。
憎しみ、絶望、恨み、…………相反する思慕、希求、恋慕……………
強烈な『母への想い』。
その思念が霊団の結合を強固にしていた。
おきぬは愕然として、ネクロマンサーの笛から唇を離した。
「優しすぎるよ、お姉ちゃん…………そんなのじゃ、僕を助けられないよ!!」
ゆうじの顔をした怪物の尾が、鋭くおきぬの脇腹を打った。
格闘戦では美神どころか凡人以下の能力しかない。数メートルも弾き飛ばされ、無様に転倒した。
あまりのショックにおきぬは気を失いかけていた。
《美神さん………横島さん………》

                           【完結編へ続く】


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