ザ・グレート・展開予測ショー

破滅の歌  終章の四 〜失う事と見付けたり〜


投稿者名:S・R
投稿日時:(02/ 6/ 1)

 やっと・・・やっと書き込めました。長かった・・・
 テスト終了直後でもないと辛いでふ。いっぱいいっぱいでふ。


 それではさっさと終わりに・・・
「待たんかいッ!」
 おや横島。今更なんか用か?っつかそもそも死んでるだろ。
「それだっ!何で俺が死ぬんだよ!?」
 そういう展開だから。
「何でそういう展開になるんだよ!!」
 何となく。
「だあっ!かっ!らっ!俺が死ぬ必要がどこにあるってんだ!」
 だからそういう・・・
「ギーーーーーーー!!」
「まあまあ、横島さん。落ち着いてくださいよ」
「おキヌちゃん!?」
「別にこの人が何書いたって私たちがどうなるわけでもないんですから。ね?」
 ・・・えー・・・
「そうよ!第一こんな展開になる前にあんたは私に殺されてるでしょ?」
「美神さん!」
「そ……それはどういう……」
 ・・・あのー。
「あんたが私を裏切ろうなんざ五億年早いって事よ」
「何でそこで神通棍を構えるんです?」
「考えてたら何かムカついてきたからよ!」
「美神さん!本気で殴ったら横島さん死んじゃいますよ!」
 だぁっ!もーおまえら全員皆殺しだ!
「げっ!」
「それはちょっと……」
(全員皆殺しってなんだよ?)
 横島!お前はもっぺん死ね!
「なにくそっ!最後の最後まで抵抗しちゃる!」


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 鉛色の空から、滴が降りてくる。上を向けば押しつぶされそうな、圧力があった。
 外が暗いせいで、屋内の照明が眼に痛い。
「すっかり遅れちゃったわね……もう終わってるかな?」
 澪が空港に到着した時の天気は、だいたいこんなものだった。


 時を同じくして、美神一行も空港に到着していた。ただし、全員表情が硬い。
横島がらみの呼び出しなのだから、無理もない。
「わざわざ仕事以外に横島さんの事を書くなんて、何者なんでしょうね?」
 おキヌがほとんど独り言でつぶやく。
「このごろ仕事が減ってるからあれだけ前払いすれば普通に飛んでくるのに、馬鹿な奴でござるな!」
 次いだシロが速攻で殴られた。
「せっ、拙者は本当の事を……」
「やかましい!減ったのは誰のせいだと思ってんの!」
「横島のとこの方が格安だもんね〜」
 売店の品に眼を遣りつつ、タマモ。
「何?私がボッてるとでも言うの?」
「そそ、そんなこと言ってない……!」
 早速空気がギスギスしてきたところで、不意にシロが叫んだ。
「あっ!澪どのー!」
「シロちゃん!久しぶり!」
 駆け寄って、頭をなでられた。いつの間にやらもう一つの主従関係が生まれているらしい。
「シィーロォー?」
 がっ!と、さっきまでなでられていた頭を鷲掴みにする。
「アンタ何やってんのよ!?」
「こっ、これはそのあの」
「止めてください!シロちゃんが怯えてるじゃないですか!」
 澪が美神の手をふりほどき、シロを庇う。
「可哀想に……震えてるじゃ無いですか!いったい普段何やってるんです!?」
 なるほど、澪の腕の中でシロの表情は引きつっている。
「うるっさいわね!それの飼い主はあたしなのよ!躾に口出さないでくれる!?」
(あああ……後で殺される……!?澪どのそれ位で止めて欲しいでござる!)
 この時、シロは確かに死の予感を感じた。
「まあまあ、その辺で止めておきましょうよ。それより、横島さんの所に行くんでしょう?」
 が、キヌの一声で瞬時に静まった。
「あ!いけない、急がないと……」
「だったら、私達と一緒に行きませんか?車、ありますよ。」
 澪が背を向ける前に、おキヌが続けた。
 かなり意外そうな顔をしている。
「それは名案でござるな(拙者もひどい目に遭わずに済むし)!」
 一人シロだけは乗り気……というより、必死になっていた。







 結局、シロの(命懸けの)説得で澪が同行する事になったが、雨天に加え、
最悪の人間関係のせいで、
(息が詰まりそう……)
 乗り心地も最悪である。
 それでも、目的地にはかなり近くなっていた。








 鉛色の空から、滴が降りてくる。上を向けば押しつぶされそうな、圧力があった。
 もはや光を宿さない横島の瞳にも、雨は容赦なく降り注ぐ。 
《寒い……》
 と、今の気持ちを言語化すればそうなるが、実際はほぼ何も考えられないでいた。
 刺されて、捨てられてからまだ10分程だが、肉体の腐敗は始まっている。
《寒い……》
 しかし、幽体は浮かび上がらない。深々と心臓まで刺さっている、
背中の鎌が黒い波動を出し始めても、横島は気付かない。



  やがてその波動が全身を覆い、その姿が異形の者へと変わるまで、横島は気付かなかった。




 そろそろ舗装が行き届かなくなった道を、がたがた言わせながら一台の車が走る。
 少し先に、黒い物が見えた。雲が保護色になって見づらかったが、それはまさしく
「みんな、伏せて!」
 ぼむっ、と腹に堪える音とともに、後ろの地面がドームを逆さにしたような形で抉られた。
「あれね……!人工幽霊!迎撃して!3・4・5番!」
『了解!』
 声とともに、どこからでたのかミサイルが撃ち出された。が、きれいに腕の一振りで
すべて撃墜される。 
「いつの間にそんな武装を!?」
 つっこみに答えている暇はなかった。
「また来る!結界準備!前方に全部回して!」
 だいぶ近くなった黒い物は、よく見るとあまり黒くなかった。
 まず、三本の腕、三本の足が生えていて、それが異常に細い。尻尾はぱっと見で分
からない程でたらめに多く、皮膚はぬるぬるしているのか、嫌な光を放っていた。
 今大きく開けている口だって、くちびるだかくちばしだか、よく分からないものが
生えている。
 総じて不細工な造りだった。

 その口の奥に、光が見えたと思うと、一瞬のうちに視界が白に染まった。
 霊波砲だった。
 車が止まる。中にいた美神達が一斉に飛び出した後、爆発した。
「くっ……」
 顔を上げた澪の前には、さっきの魔物の姿があった。
 反射的に腕を振り上げ、霊撃を放つ。
 爆音。
 しかし、やはり傷一つ無い。
 光が、澪の存在を永遠に消し去った。


「よくも!」
 疾風のようにシロが斬りつける。が、やはり有効打ではない。
 魔物がその口を開けた。
 シロはすでに間合いの外に退避している。
「させない!」
 タマモの鬼火が、口の中で膨れあがる。たちまちそれは全身を包むものとなった。
『グギャアアアアア!』
 これ以上ないほどに容姿に相応し声で叫ぶ。
「おキヌちゃん、笛!」
「はい!」
 一秒ほど遅れて立ち上がった美神とおキヌが臨戦態勢を取る。
 ほぼ同時に、鬼火もかき消された。
 おキヌが精神波を送る。
『あなたは何でこんな事をするの?』
『ギ……オ…………チャ……………………』
「極楽に行かせてあげるっ……!」
 美神が、大上段から神通棍を振り下ろす。まともに食らって、魔物がうつぶせに倒れた。
「まだまだ!」
『お願い、答えて!』
『オキ…………ヌ…………チャ……ン……?』
(え……?今の感じ、まさか……)
 美神を背中に生えた三本目の腕で吹っ飛ばす。
『横島さん!横島さんなの!?』
 さらにシロ、タマモの追撃を尻尾で捌き、おキヌの方に口を開けて、
『おキヌちゃん!』
 心の叫びに呼応するように口から光がのびて、おキヌの足首から上が無くなった。
 全員の目がおキヌがいた場所に釘付けになる。刹那、首の折れる音が二回して、
 魔物が吼えた。
『ギャアアアアアアッ!!』
「この野郎ォ!!!」
 美神が三たび神通棍を振るう。
 防御は、しなかった。そのまま地面を転がった。
 魔物の周りの空間すべてを覆うほどの激しい攻撃に、抵抗しない。
 このまま微塵につぶされるかと思われたそのとき、

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
 魔物を中心に爆発が起こった。
 美神、シロ、タマモ、おキヌの足が、大地と共に灰になった。


















 クレーターの中心で、魔物が空を見上げている。
 空は、晴れ渡っていた。澄み切って、どこまでも高い。
 羽もないのに魔物は浮かび上がり、何事か、おそらく自身にすら理解できない調子で叫んでいた。
 長く短く、低く高く、それはまるで、破滅を歌っているかのようで……





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