赤い罪
投稿者名:来栖川のえる
投稿日時:(02/ 5/26)
「彼は、一つの些細な罪を犯した」
「ヨコシマっ!」
私はそう叫びながらヨコシマに手を振る。
「ワリイワリイ、出席日数のことで呼び出されてて、ちょい遅れちまった」
そう言いながら、ヨコシマはすまなそうに頭を掻いた。
----------ヨコシマの声。
優しい、優しい声。毎日聞いてるのに、こんなにうれしくなる。
私がヨコシマの手をぎゅっと握ると、ヨコシマもすぐに優しく握り返してくれる。
その手から伝わるぬくもり、心地よさ、あたたかさ、優しさ。
思わず顔から微笑みがもれてしまうのが分かって、私はちょっと顔を赤らめた。
「?どうしたの?」
「ん・・。ううん、別にっ!」
なぜか妙に恥ずかしくなって、私はあわてて顔を振る。
私たちは、歩いている。手を繋いで。互いが互いの歩調に合わせて。
-------幸せ。ヨコシマと歩くことが、幸せ。
他愛の無い話-------学校の話や、美神さんの事務所で何があったか・・・とか。
そんな会話が、幸せ。
私の耳にヨコシマの息遣いが聞こえる。私の肌にヨコシマの温かさが伝わる。
ただの、学校帰り。
ただ、歩いているだけ。
ただ、手を繋いでいるだけ。
だけど、幸せ。
だって、好きだもん。
ヨコシマが、大好きだもん。
ヨコシマの一言一言が、私の心に染み渡っていくのが分かる。
ヨコシマがいるだけで、周りの風景が暖かい光を放つ。
好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。
大好きっ!
-------そう、私に命を吹き込んでくれたのはヨコシマの息。
私は生まれたときから「一年」という時間の中で生きることを命じられた。
・・・自分の限界、生きていられる限界が分かっているのは、たまらなくつらかった。
これから何をやろうとも、私は一年で死んでしまう。
どんなにやりたいことがあっても、一年でおしまい。
夕焼け、好きだけど一年間しか見れない。
一年間しか・・・
だけど、私はみんなに心配かけたくなかったし、その事実を忘れたかったから。
だから、一生懸命自分の仕事をまっとうした。
みんなも辛かったと思う。
だけど、みんな明るかった。
明るくなくてはならなかった。
そんな時、ヨコシマが来てくれた。私たちみんなに、優しくしてくれた・・・。
彼のぬくもりが、私たちの凍てついた心を溶かしてくれた。
一緒に夕焼けを見てくれた。
アシュ様を倒して、寿命もなんとかしてくれるって、言ってくれた。
--------私は、ヨコシマが来て、生まれたのだ。
「-----だったんだけど・・・・聞いてた?」
気がつくと、ヨコシマが私の顔を覗いていた。
「え・・?あ、ごめん!」
私はあわてて返事を返す。
「ええ!?だからさあ・・・」
と、ヨコシマはまた話し始める。
その時、どうしてそうなったのか私にもよくわからなかったけど、何者かにいきなり背を押されて彼の方に突き飛ばされたような気がした。
私の唇は、彼の温かい唇に重なっていた。
「・・・ん!?」
最初の一瞬、ヨコシマは突然のことに驚いて目をパチパチさせたけど・・・・・すぐに私を優しく抱きしめてくれた。
ヨコシマのぬくもりは、その優しさを表し。
ヨコシマのぬくもりは、その暖かさを帯び。
ヨコシマのぬくもりは、その愛情を持ち。
私の心に、染み渡る。隅々まで。
私の心に、安らぎを与えてくれる。
私の心に、心地よい風を吹かせてくれる。
好きよ、ヨコシマ。
-----------------彼は、一つの些細な罪を犯した。
それは、彼女を愛し、愛されてしまったコト。
赤い空が、二人を優しく包み込む。
「一緒に夕焼けを見ようね、ヨコシマ」
{こんちゃ。のえるッス。ルシオラッス。ダメダメ作品です(笑)。言いたいことを凝縮して入れすぎちゃって、まとまりのない話になってしまいました。
本来、作品解説はあまりしたくないのですが、誤解が生じると、読者も私も嫌な思いをするので、一応言っておきますと、「罪」とは、「ヨコシマの横島に対する罪」ですよ?なにも、ルシオラを愛したこと、それ自体が罪なワケではありません。彼は幸せだったでしょう。ルシオラも幸せだったでしょう。だけど、彼女が死んでから横島が苦しんだのは、その「愛」ゆえでしょう。そこが、「罪」。彼が、彼に対して犯してしまった、ちっちゃな罪だというワケです。まあ、最後に「優しく包みこむ」と書いておいたんで、分かってくれるとは思いますが・・・。
あとですねえ、僕が今までルシオラものを書いてきて一番書きたかったことは、まんなかのルシオラ回想に凝縮されてますので、その辺の感想なんぞもちょっと書いてもらえるとうれしいかなあ・・・?
ああ、眠さでかなりテンパって書いたんで、わけの分からない作品&解説になってしまった・・・・。
次回作は、もちっといいのを書きませう・・・・。 2002 来栖川のえる}
今までの
コメント:
- こーいうクセのある作品書くと、反対票多そうだな・・・・。
でわ、前の作品へのコメント返し行きます。 (来栖川のえる)
- >kitchensinkさん
なんか二人共にバストのことでご指摘を頂いてしまいました・・・てへっ☆
まあ、アノ変はちょっと書き直した方がいいかねえ・・とか書いてるとき思ってたんですが、すっかりわすれてしまいました・・・。
大先輩・・・まあ、そういってもらえると嬉しいですが、実力的なものでは底辺を支えているので、耳痛いです(笑)。 (のえりゅぅぅぅ) (のえる)
- >マサさん
ええ。岩手弁ですね(笑)。でも岩手弁の勉強を全くしてないのでこういうことに・・・好きな作家に岩手弁を使ってる人がいらっしゃらないので・・・(某有名な人もいますけどね)。
むしろ好きなのはドストエフスキーとか?いや、関係ないか。
ちなみに関東に住んでます。関西弁はウチの親父の実家が関西にあるんでちょっと知ってるんですが・・・・
先ほども述べた通り、外国の小説のほうが好きで、標準語のしかほとんど読まない=地方弁の会話が想像できない・・・・
というわけで、たまに思い出したように方言を用いるので、超いわかんの残る話になってしまうのはカンベンして下さいな・・・・・ (のえる) (のえりゅぅぅぅ)
- >みっちーさん
はぢめまして。はい。そうです。おキヌちゃんはすばらしい女性です!イエーッ!!・・・・・・・ハッ!? (NOE)
- >ふちこまさん
方言・・確かにそうかも・・。
そうですね。生きてるだけで幸せって人、なかなか居ませんよね。というよりも今は、「その生をどのように満たすか」ということが幸せに直結してるみたいですね。僕のアレで「生きてることのシアワセ」もちょっとでも感じてくださると、うれしいんですが・・。 (のえる)
- >魚高さん
はい。暇があったら書きます。っていうか次からはもちょっと内容のある話書くんで、期待しといてくださいな(笑)。
あぁ〜自己嫌悪・・・。でも、一応自分の中のルシオラにある程度のケリをつけたかったんだよな〜・・・あ〜ぁ・・・。
大好きだといってもらえて嬉しいですw。 (来栖川)
- >3Aさん
はぢめまして。コメントありがとうございます。よろしくお願いします。 (のえる)
- ちなみに・・・http://isweb36.infoseek.co.jp/play/aiai_noe/main.html
ヨロシク。 (来栖川のえる@エロティカいい曲w)
- このルシオラ&横島クンの関係の中に「罪」という言葉をお使いになるとは...しかも的を得すぎているくらいに得ていますね。寿命が一年、と思っていた頃のルシオラは言ってみれば実感の湧かない仮の姿だったのですが、横島クンの登場によってそれがようやく「生」として認識されるようになったのですね(多分←爆)。何故我々がルシオラに魅力を感じるのかが何となく分かった気がします。 それでは次回作も期待しております♪ (kitchensink)
- まあ当然こういう話書けば反対票入るんだが・・・・。反対するならコメントぐらい残して下さいな・・・・。 (のえる)
- 過ちは、犯して後に悔いるもの。罪は罰もて報ゆらるもの。
横島くんが自らに与えた罰は、ルシオラを失った苦しみを背負って生きてゆくこと……と、こーゆーわけですね。
しかし『罰』に対応すると思われる『罪』という言葉は、多分にネガティヴな印象を有するもので、『ルシオラを愛し、愛されたこと』を『罪』する表現の与える第一印象は、やはり否定的なものでした。
「それが罪なら、しなきゃ良かったの?」……と、否定つながりで論理を飛躍させそうになったりもしました(赤面)。
『些細な』というのも、あたかも『それ』が些末事であったかのような印象を与えてしまい、結果的には
『愛し、愛されたこと』=『罪』=『些細な事』
という字面のみを追った場合の図式が作品の印象を支配してしまった。とゆー感じでしょうか。
(斑駒)
- 文字の与える正負の印象、げに侮り難しです。
特に最初の一行は字面でしか判断が利かず、『これから否定的な話を始めるよ』という風な印象を受けてしまいます。
そこで私は、そのつもりで先を読み進めてしまうわけです。
つまり、何がどのように否定されるのかを捜してしまうわけですね。
そして、最後に端的にまとめられた部分を捜しあててしまうわけです。
……と、これが私の初見時の印象形成手順ですが。
これを回避するには、横島くんが自らに課した『罰』を明記するとか、否定的な印象を否定する文を入れるとか(分かり難い表現ですが『横島は後悔しているわけではないのだ』とか、解説内にもあった『罪と言っても、それは横島が自らに課したものに過ぎないが―』とかです)、もう少し言葉を足した方が良かったかもしれません。 (斑駒)
- とは言え、のえるさんも仰るように、この作品の主眼はルシオラの『生』に置かれているわけで、それに比べればたまたま強調される形になってしまった『罪』の話も些細な事です。
長々と反対意見のようなものを書いてしまいましたが、
前回のおキヌちゃん同様に生あること――この場合『きっとなんでもできるんですもの』な生――だけにでも幸せを感じ、その『生』を与えてくれたヨコシマに感謝し。愛し、共にある事に更なる歓びを感じるというルシオラの在り方には、大いに共感しました。
一字一句などには目を向けず、作品のテーマという大枠で見て賛成させていただきました。 (斑駒)
- 批判的な部分は、あくまで私の経験から、反対票の一因になったかもしれない点を予測しただけですので、参考程度で読み流してくださいね(汗顔)
『字義正負二元的読解法』は古文の読解などでは、わりと効果的なんです(大爆)
あ、あと、長々とコメント欄をお汚ししてスイマセンでした。 (斑駒)
- まぁ、要するに太陽(夕日)は罪なヤツ……ってか?(挨拶)
つーか、僕は、最初の一行と題名で、もう完全に
「よっしゃ!! 連載ものじゃ!!」
と、確信していました(←根拠なし) (魚高)
- 生誕の日とは別に、今の自分が生まれた瞬間。そういうのって、ありますよね(経験談)
『生まれ直した日』とでも言いましょうか(笑)
恋愛は、ある意味自分と相手の「現在の在り方」を決定してしまう行為です。
そして、その果てにイタミやカナシミを生み出したのだとしたら、それは『罪』と呼べるかもしれません。
もしかしたら、あらゆる恋愛は『小さな罪』を密かに抱いているのかもしれませんね。 (黒犬)
- 愛され、また愛する事を罪とする事は……彼女を失った直後に「俺には女の子を好きになる資格なんかなかった…!!」(『ジャッジメント・デイ!!(その14)』(35)参照)と号した彼が、なけなしの良心の呵責と格闘してゆく中で得た結論としては、どうなのでしょうか?
かの慟哭の際には「口先ではホレたのなんの」と言っておきながら「てめえのことばっかりで」、「命も惜しくない」と言っていたルシオラに「何もしてやらなかった」己(ヨコシマ)を責めています(同参照)。
しかしその後、彼女が転生する可能性を得た段で彼(横島)は「彼女に会えてよかった」とも言っています。つまり今回の作品の結論を事実とすると、思考が陰鬱な方向に逆戻りした事に為ってしまいます……よって、反対です。 (Iholi@ 原作原理主義)
- ……と云う原作寄りの解釈も可能かとは思います(『エピローグ:長いお別れ』(同)参照)が、実はここからが本番だったりして(笑)。
本作品の冒頭の一行は鈎括弧付きである処から、これは「彼(ヨコシマ)」に関する何某(「横島」)の告発とも捉えられます。つまり「横島」は「彼」の過去を(事の善し悪しは別として)「罪」と断じている。斑駒さんは「罪の話は些細」と仰ってますが、最後直前にも再び強調される「罪」は、題名にも在る通り本作の肝である筈です。
しかし作品の中心にはルシオラ視点の日常風景が描写されている。その純真(=無罪)な少女の心の動きは「罪」の大きさを強調こそすれ、「横島」「ヨコシマ」の存在を曖昧にして「罪」の意味を捉え難い構成にもしています。
続く。 (Iholi)
- 2つ上(原理主義)のコメント、初めの段落の書き方がマズいので……「愛され、また愛した事により結果的に我が身を苛んだ苦悩を、罪と〜」と、各自心の眼で訂正して下さい。
続き。
同じ日常を描くにしても、例えば「ヨコシマ」視点であったのなら、「横島」との関係がよりハッキリすると思います。もしくはルシオラを知らず共犯者として描くのも面白いかも。
……いや、実は本作は「『ジャッジ〜(14)』で、ルシオラの意識が完全消滅する一瞬前に彼女の思い出が走馬灯となって蘇り、それを追想する副人格的存在「横島」現れ全ての責任を自らの責任の下に処理する……「ヨコシマ」の人格崩壊を阻止する為に。」てな物語だったりして。 (Iholi@ 妄想癖)
- ルシオラの性格(下っ端魔族)だからこそなんでしょうね。『好き』の連発は。とりあえず、徒、題名を『罪』とするには一寸生きたルシオラの姿が現れすぎているきらいはあるのかもしれません。…あの、否定するわけではないんです。徒そのような考え方もあるのかな…と。…ごめんなさい。 (マサ)
- ここ(展開予測)ではですが、お久しぶりです。
感想は遅れましたが、遂にのえるさんの創作復帰ですね。お疲れ様でした。
本編も、ルシオラのお話として、素直に面白かったです。
頑張ってください。 (AS)
- いいお話ですよ。
ルシオラの気持ちが書かれていてよかったです。 (3A)
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