ザ・グレート・展開予測ショー

夕闇(裏側)中編


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 5/20)

そして、どれくらいたっただろうか?
一秒かもしれないし、数分かもしれない。
ゆっくりと―なにかを確かめるかのように口を開く
「うん―じゃ、ちょっと聞いてもらいたいことがあるんだけど、いいかな?」
―と。
もちろんである。
この言葉の頷かないわけは無い。
そして、さらに何か迷うように―目をせわしなく動かした後、意を決したように言った。
「―俺、うまく言えないんだけど、…うん。好きなひとがいるんだ」
静かな、静かな声で。
それは聞き間違い様の無い事で―
傷がついた。
―おきぬのこころにざっくりとおおきな傷が
視界は真っ白になり、一瞬体は傾きかける。
『―すきなひとがいる』
それは、いつかある事だ。
一生そこにひとりのひとに囚われて欲しくなどないし―いつか他に好きだといえるひとが出来る事を祈っていた。
それは、ほんとう。
だけどそれがこんなに―苦しいなって。
つけられた傷はぱっくりとひらき血がしたたり落ちる
―痛い。
ものすごく―痛いのだ。
だって―自分は好きなのだ。
まだ、全然――区切りなどついていないのだ。
ぐっと手のひらを握り―それこそ白くなるほどに
わななく唇を懸命に動かし
「そ………そう、なんですか…」
と言う。
なんとか普通を装い言いたいのに、声が震えてしまう。
駄目だ。
―と思う。
こんなんでは駄目なんだろうと。
もっと仲間なら喜んで―おめでとうとでも言わなければと。
だけどだくだくと傷から―血が流れているのだ。
痛くて、苦しくて、。
そして、哀しくて。
―なにより、嫌だ。
それでも、言わないと―とも思う。
『仲間』としての言葉を
だって嬉しいのだ。
痛いし、苦しいし、哀しいし、恐いし―嫌だけど嬉しい。
笑って欲しかったのだ。
ずっと
すっと―いなくなってからずっと笑ってなかった。
心から嬉しそうに笑うのを見たことなかったのだ。
―きっとじゃあ…もうすぐ笑ってくれるだろうと思う。
そんな風に好きだと言う人が横島のことを嫌うはずはないのだから。
なら…ならば
(そう、だね…)
おきぬはゆっくりと微笑をつくり祝福の言葉を送った―
震える声で
硬く握り締めた手のひらのままで
「良かった―ですね」

つづく


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