ザ・グレート・展開予測ショー

彷徨う二つの心(6、By the heat!・後編)


投稿者名:マサ
投稿日時:(02/ 5/19)

老師とおキヌは例の椅子の並んだ真っ暗な小部屋に入る。
「…この部屋のことは聞いておるか?」
「はい、前に横島さんが言ってました」
「よろしい。ならば椅子に座りなさい」
「こうですか?」

 ヴンッ ぱっ!!

おキヌが座るとあの仮想空間に移動した。
「!?…ここが話にあったところですね?」
「………」
老師は一つ頷くと、紙を一枚見せる。
それには蛇がのたくったという表現が丁度良いような字でこう書かれていた。

『ついてきなさい』

「は…はい(汗)《離せないことは知ってたけど、字もまともにかけないのね》」
とりあえずついていく。
「お、来たか」
大部屋にいたのは…
「あれ?ワルキューレさん、こんなところでどうしたんですか?」
「いやな、以前にジークから聞いた話だとこのサルと二人だけだと暇すぎると思ってな。ちょうど暇な生活って言うのも味わってみたくなったんで、そのついでさ」
「それはどうも…(汗)《なんか凄い組み合わせだな〜》」
「ウキッ!」
《あ、完全に猿になってる(更に汗)》
おキヌが呆れて見ていると、その猿(笑)はこれまた例の如くゲームにかじりつく。
今度は【ぷ○ぷよ】にハマっているらしい。(懐かしいな)
結局、おキヌのやる羽目になる。
「私はその辺りを散歩してくるよ」
半ば逃げ出し気味にワルキューレはどこかに行ってしまった。(なんと無責任な…)




――数時間後――
「か、勝てない…」
「ウッキッキ――ッ!」
今のところ老師の全勝である。
「ずずずずず…。はあ〜、なんか暇よね。………大丈夫かな、なんか心配…」
ほうじ茶を啜り乍ら溜め息をもらす。
《やはり不安か…》
老師は思う。
「ガスの元栓、ちゃんと締めてきたかな?」
「キ〜〜〜ッ<だ〜〜〜っ>」
老師は派手にコケる。
その間にCOMの【おじゃま○よ攻撃】が進行していき……
「ウキキキキキキ―――ッ!!<わしとしたことが―――っ!!>」
気付いた時にはもう老師の画面ではぷ○ぷよが成仏したところだった。
連勝記録が崩れ去った瞬間である。
ま、その後におキヌが作った料理を食べて「ウキ〜キキキ!<こりゃ〜うまい!>」とか叫んで機嫌を直したが。(そんなにうまいのか←感心)




――仮想空間の時間にして3ヵ月後――
「あの〜、何時までこ〜やってるんでようか?」
好い加減にこの世界の暇さには例え彼女でも呆れる。
「私も同感だ」
こっちの方はらしいと言えばらしいと言える。
「…うむ、もうそろそろ良い頃かの…」
「え?!」
老師は手から如意金剛棒を取り出し、空間を両断する。
「どりゃああッ!!」

 ズアッ  ブンッ

一瞬にしてあの真っ暗な小部屋に戻った。
「さて、行くとするか…」
「あ、はい。さようなら」
創作者の無理やりな話運びのよってワルキューレは妙神山を後にした。
「よいか、過負荷から開放された今、お前の魂は一時的に出力を増しておる。このスキに制御できるようになれ!」
「…はい」
おキヌの表情に緊張が走る。
外に出ると、闘技場の横のほうで横島が霊波刀を、小竜姫が神剣を構えていた。
「お、戻ってきた」
横島はおキヌの姿を確認すると構えを解く。
「横島さんも修行するんですか?」
「まあな。《本当はやりたくないけど》」
「頑張ってくださいね」
「それは俺の台詞だよ。俺の事より、自分のことを心配しないと・・・」
「…あの、初めて宜しいんでしょうか?(青筋)」
小竜姫は二人の会話を中断させた。
しかも、その目は珍しく冷静さを欠いた鋭さを持っている。
「あ、すんません」
少々怯え気味に謝って霊波刀を構え直す。
「いきますよ…!!」
「やぁぁってやる〜〜〜!!俺は死ぬのは嫌や〜〜〜!!」

 ギンッ  ガギィィィッ  キーンッ  〜☆

刃の衝突が金属的な音の不規則なハーモニーを奏でる。
金属同士でないにもかかわらず、こんな音を出すのは霊波刀ならではと言えるだろう。
「太刀筋が甘い!隙だらけです!もっと重心を低くして!」
「これでどうだ〜〜!!」
「まだまだ〜!!」



「美神殿、拙者寝てていいでござるか?」
「勝手にしなさい」
「…眠れないでござる」
「なら言うな!」
どうも不機嫌っぽい二人である。
「見てて疲れてきたのは確かね(汗)」
ここでもクールに分析しているタマモ。



「…さて、わしらも始めるぞ」
「はい」
老師とおキヌは円形の闘技場の真ん中に立つ。
「よいか、今からお前の能力を発動させる。…制御して見せろよ」
そう言って老師はおキヌに向かって手を翳(かざ)す。
「はあぁぁぁーーっ!!」
「…!?」
老師の手が鈍く赤い光を発した瞬間、体の中が熱くなる。

 キュィィィィィィ………

中和能力が再び柱状に発動した。
「……うっ…!」
急激なエネルギーの消耗におキヌは膝をつく。
「どうした?それを止められるのは己自信だけじゃぞ?心で力をコントロールするのじゃ。心で」
「………」
―でも…このままじゃ………もう…駄目なの…?―
「頑張れ、おキヌちゃん!!」
―その声は…―
「よ…こし…ま…さん…?」
横島は自分に出来る唯一の事をする。
そう、唯一の事を…。
「こんな所で死ぬな!!おキヌちゃんなら出来るから…絶対に出来るから!だから死なないでくれ!!俺は……」
―俺は?―
「…そうですね。…こんな所で…死ねませんよね…!…私の120%…出して見ます…!!」
おキヌはそう言ってゆっくり立ち上がった。
そして…

 バシュ――ッ

光がだんだん弱まって行き、掌だけに残る。
「できた…!」
「それでいい。消費の大きいものでも、抑えて使えば良いんじゃよ」

 シュウゥゥゥ……

やがて、光は消滅した。
「やりましたよ、私!」
「ああ、よくやったよ!」

 がばっ

横島が駆け寄り、抱きしめる。
「良かった…良かった…!」

ぎゅうううっ

「横島さん、苦しい…。………あれ?私、今立ってる。さっきは全然力が入らなかったのに…」
横島の腕を解き、不思議そうにおキヌ。
「どうやら、同時に潜在的な霊力を引き出せたようですね」
「まったく、おぬしらの成長振りは今まで見た中でも一番面白いぞ」
と神様二人。
まあ、片方は不機嫌な感じだが。
「…そうですか…。これで…私もっと役に…立て…ます…ね…」
「え?!ち、ちょっと!?」
緊張の糸が切れたのか、彼女はふらぁっと前に倒れこみ、横島に抱き抱えられる。
「おキヌちゃん…眠ってるのか」
実に気持ち良さそうに彼女は眠っていた、心寄せる者の腕の中で。
そんな顔を見て横島は一つ微笑する。
「…本当に、いつも頑張ってて前向きでいいコだよな…」
―!!?…そっか、俺は…―
横島はおキヌを抱き上げると、隅にいた美神のところに歩み寄る。
「美神さん、おキヌちゃんを…」
「あ〜そう」
不機嫌そうにしている美神とシロにおキヌを預けると、彼は気にせずに次の行動に移った。
「…稽古の続き、お願いします!」
「…いいでしょう。その代わり、勝手に中断したんですからそれなりに怪我の覚悟をしといたほうがいいと思いますよ」
小竜姫もだんだん憂さ晴らし的な感じになってきた。
「俺はやりますよ。…だあぁぁ〜〜〜!!」

 ギィィィンッ ガアァァンッ

横島は走りこむ勢いと共に一気に上段からの強烈な一閃を小竜姫に向かって放つ。
《何?!さっきと重さが違う…くっ!》
渾身の一発を神剣で受け止め切れずに威力を横に流す小竜姫。
「本当にやる気になったようですね…。其れでこそやりがいが在るというものです!」



=一時間後=
「はあ、大分…はあ…良くなりましたよ。…はあ」
「ぜ〜っ、…そりゃ〜…ぜ〜っ…ど〜も!」
二人とも体力切れということも有って、稽古を終了した。
「そんじゃあ、帰るわよ」
「…へ〜い」

 キィィィィィ……シュンッ

横島の『移動』の文殊でふもとの車の所まで移動すると、一行も妙神山を後にした。

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