ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(蜂想)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 5/18)




 ー終曲ー



『ふむ・・・』

 そう呟くと『彼』は、ゆっくりと椅子から立ち上がった。

 彼。

 漆黒だけを具現させたかの様な、闇色の男。

 尋常な量でない妖気や魔気と呼ぶべきものを、その身にまとわりつかせ、彼は苦笑いを仮面から僅かに覗く口元に浮かべた。

『狼牙の暴走は成らず。 デナリウスなど所詮使い捨ての人形でしかないので構いませんが、さて・・・』

 視線を向けていた映像から目を離すと、それまで見ていた映像がその場より掻き消えた。

『そろそろ残る三つの内、どれかの・・・さて、どの見せ物の時間から動かしましょうかね?』

 しばし思案した後、彼は宙に浮かぶ映像の内の一つ・・・人狼族の少女、かつては大妖怪であった妖狐の生まれかわりである少女、そして宇宙再構築をもくろんだ魔神の、その尖兵であった魔族の女性が大扉の前にたたずむ・・・その映像に目を向けた。

『やはり次は・・・私の作った人形が、先人の創造し遺した人形よりも優れている事を確認したい・・・』

 彼はそう言うや、映像に両の手をかざすと、何らかの呪文のようなものを唱え始めた・・・。





 ひたすら雑魚を斬り、焼き、殴り倒して・・・真っ直ぐに道を突き進んできた彼女ら三人の前に、とてつもなく頑丈に見える巨大な扉が、その扉だけが鎮座している。

「おっきな扉でござるなぁ・・・」

 先ほどまで、何やら不機嫌そうだったのもどこへやら、人狼族の少女、シロは惚けた顔でそんな感想を口にした。

「確かに大きいわよね。・・・念の為に言っとくけど、こんなの壊して先行けなんて言わないでよね」

 今度はシロの3歩程度後ろにたたずむ妖狐の少女ーータマモがいかにもやる気のない、いや関心すらないといった感じの、なげやりな発言をした。

(こいつら・・・!)

 ビシィ! と、魔族の女性であるベスパの、その右足で踏みつけている敷石にヒビが入る。

 怒声こそ上げたりはしなかったが、もはや誰の目にも明らかなくらいに、ベスパは憤りを感じていた。(犬科コンビ除く)

 いつしか・・・心中でベスパは、ここに辿りつくまでにも何度繰り返したかもしれない、あの『彼女』への、疑問と不満を並べたてていた。

(何であの女はこんな物見遊山きどりのアマちゃんを・・・!)

 次いで、ベスパは思う。

 自身が、姉や妹と共に、この世界に産まれてから、まだ10年も経ってはいない。

 しかし・・・その間にもベスパは、彼女は常人には想像しか出来ないような生き方をしてきた。

 宇宙の『創造』か、あるいは『死』か。

 対極に近い、このどちらかを望んだ魔神。
 
 ベスパにとってその魔神は・・・大恩ある『父』であり、また想いをよせる『異性』でもあった。

 その魔神の意志に従い、人間とそして『姉』と戦い、そして全ての戦いの終わりを、つまりは魔神の『死』を、姉の恋人であった青年に託したという・・・数奇としかいえない過去。

 その果てに、生き残った彼女は魔界軍に入る事を望んだ。

 そして現在。

(どいつだか知らないが・・・アシュ様の真似事をしてるなんていう、ふざけた奴がいる・・・!)

 かつての父が行ってきた所行を辿るような真似をして、何よりも自分達姉妹をベースにした『兵器』を創るという事までを模倣している。

 それはベスパにとって、己の誇りや想いのみならず、姉ルシオラと父アシュタロスへのこれ以上はない侮辱といえた。

 ベスパが閉じていた目を見開く。

『・・・行くよ! こんなところでグズグズ・・・』



「うわ〜堅いでござるなぁ〜」

「得意の根性で横に斬り倒したら? あんたの好きなバーベキューがたくさん作れそうよね」



「ーーーーーー!!!?!っ!?」

 ベスパは目にした光景を疑った。

 何一つとして警戒もせずに大扉に近付き、あちこち触ったりしている犬科の二人。

『ーーーこのバカ共っっ!!!』

 ベスパが慌てて駆け出した瞬間。


 扉を貫いて、一条の蒼き光線がベスパをも貫いたーー・・・





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