ザ・グレート・展開予測ショー

夕闇(中編)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 5/15)

「―明日は、晴れかなあ?」
なんでもないような声をつくって横島。
視線は、窓から離れない。
だが、本当は懸命に、震えそうな声を溢れ出しそうなこころを、抑えていた。
「そおですね。天気予報では、晴れだっていってましたけど―」
そんな横島にいつもの、のんびりとした声が返ってくる。
少しだけ高い―だけど心地よい声。
なんでだろう―と思う。
なんでこんなに惹かれているのだろう?
今もこの近くにいる事がとても嬉しくてもし、できうることならば、もっと近くにいたいと思ってしまう。
おきぬは優しい―それはもう分かりすぎるくらいに分かっている。
―そう、誰にでも、優しい。
(俺にだけじゃないのに―な。)
彼女は、みんなに好かれる人。
自分とは違う。
―別に卑屈になっているわけではない。
ただ、人種が違うのだ。
誰にでも無償の愛情を注ぐ事が出来る人種がおきぬで―
そんなことができないのが自分。
どちらが悪いとか、そーゆうわけではない。
ただ、違うのだ。
それは、厳然とすら言える事実。
―そしてきっと彼女には、彼女だけを愛する―いや好きだと言うひとがきっと似合う。
自分のように、もうただひとりのひとを愛するなんて事ができない奴は、もう違う
だけど惹かれるのだ。
もう、理由なんてわからない。
いや違う理由なんて関係ない。
ただ、好きで、傍にいたくて、苦しくて―もっと声が聞きたくなって―。
きもちがあふれてあふれて止まらなくなるのだ。
それは自分の中にある『彼女』を思うこころと同じこころで思うこと。
―自分は、もうおきぬを思えない
―だけど、好きだと思ってしまう。
横島は、出そうになる言葉を飲み込むように、珈琲を喉に流し込む。
いつも横島の好みに合わせてもらっているもの、少しだけ甘めの味なのに―それがひどく苦く思えた。

こくんと喉を鳴らす。
かたん―と音をたててマグカップが元いた場所へと戻る。
あたりはもう、暗くなっている。
太陽はもう、西の空に沈みそして空にある星が輝き始めた。
そして部屋も、―お互いの顔の表情まではわからない程度に暗くなる。
―そして少しばかりの静寂のあとに
「どおかしたんですか?」
というおきぬの控えめな言葉が降ってきた。
「―なんで?」
とは横島。
その言葉だけ聞くとどこもおかしいところは―ない。
「だって―すごく苦しそうな顔してますよ?」
「―………」
ひゅっと息を呑む音が聞こえた。
「そ、う、かな?」
「―はい。今も泣きそうな顔してます」
労わるような―声音でおきぬ。
その声を聞き―なぜだろう―横島はひどく―わけのわからない衝動に駆られた。
―このこころを伝えたいと
だけど、絶対に伝えてはいけない―と。
そして、自覚する前にそれは、言葉として出ていた
「うん―じゃ、ちょっと聞いてもらいたいことがあるんだけど、いいかな?」

つづく

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