「カクタス・フラワー」(完結編)
投稿者名:いーびる・あい
投稿日時:(98/10/31)
あれから一週間が過ぎた
引越しのため、「美神&横島『浄霊』事務所」の空き部屋の掃除中
奈々達は一冊の本に目を留めた
「南米の生きた宝石たち」 著者 美神公彦
「あっ、それは、うちの親父(笑)」
掃除の手を休めて、令子は懐かしそうに本の表紙の写真を人差し指で撫でた
「子供をほっといて、世界中の昆虫とか植物なんかを探しまわって
写真を撮ったり、研究するのが好きな学者馬鹿だったわ...
幼い頃はずいぶんとうらんだものだったなぁ...」
「母がね、亡くなったとき、私は『魔族』を憎んだわ、
そして、母と同じG・Sの道を歩もうと思ったの...」
「だけどね、恥ずかしいハナシ...母が命を削ってまでG・Sの仕事に打ち込んだのか
その理由までは思いを巡らす事はなかったわね...」
そう言って令子は本をテーブルにおいてソファーに腰掛けた
「...当時の私はアイテムに頼る事で『効率よく退治する』ことしか考えてなかった
だけど、効き目の強い『御札』とか『退治道具』はとても高価で
最初のうちはギャラのほとんどがそれらにそそがれたわ...
それが、いつのまにか『稼ぐ事第一』になってしまって
唐巣先生には『目的と手段が逆転している』と心配かけたっけ...」
奈々は「このひと」がこんなに素直な話し方をするのに正直驚いていた
(「過去の」記憶からは別人とも思えた...)
「だけど、『前世の出来事』...あれはショックだったわ...
あれほどまでに憎んでいた『魔族』...
その『魔族』だったの、このわたしが...
わかる?!憎む事で退治する、そこに自分の存在意義があったのに
...それが...足元から崩れるおもいだったわ...」
令子は目を閉じてヒトツ深呼吸をした...
「だけど、『あいつ』のおかげで何とか立ち直れたわ
深く考えてないハズなのに、人にヒントを与えてくれる...
『人間』と『魔族』...敵対するのではなく、『理解』し合う事
それでいてなおかつ戦うときは『誇り』を持って戦う
『自分の守りたいもの、大切に思うもの』たちのために...」
「お茶にしませんかー?」
どうやら必需品を買いに行った蛍子達が帰ってきたようである
茶菓子を食べながら、ひとしきり蛍子たちは「美神・父の本」を話題に
にぎやかに談笑した
「今では父さんの事もなんとか理解出来そうな気がするの...
あの時の父さんは『今のままでは消え去ってしまいそうな地球の生きた宝石たち』のために、世界を飛び回り、その大切さを人々にアピールするために『戦って』いたんだと...」
「この花は何ですか?」と葉子
「んっ...これは、あの窓辺に有るのがそうだと思う」
秋の日差しを受けた窓辺にはいくつかの鉢植えの植物があった
「父さんが、南米で採取してきた種子を持ち帰って
日本で発芽させた物なの、ずっと前にもらったんだけど
まだ一度も咲いた所を見たことがないけどね(笑)」
「...?...この小さいもの、つぼみじゃないですか?」
「えっ?」「なに?」「ほんと?!」
みんなが窓辺の鉢植えの所へ集まった
風が吹いて本のページをめくった
その植物の説明のページとともに挟んであったメモがあおられた
○○☆・カクタス
南米ギアナ高地に分布する多年生多肉植物
近年・環境の悪化により激減「幻のサボテン」と呼ばれる
昼開花性には珍しく、高い芳香を持つ
開花株まで成長するのに長い年月を要する
床に落ちたメモには短く、「大切にしなさい、愛する娘へ」
とだけ書いてあった
(終わり)
*****************************
今までの 賛成:1 反対:1
コメント:
- はい、異論・反論がいっぱい出そうですが...(笑)
破綻が出ないように努力したつもりです
それが「面白い」かどうかは皆さんが決める事で
自信と不安が半々ってとこですね
タイトルの意味は
「花開くまで時間がかかる」ということと
別々に育った「姉妹」が『ひとつ屋根の下』で暮らすということと掛けたわけです
(いーびる・あい)
- 完結おめでとうございます。展開や人物の描き方などとても楽しめました。
当初は「アシュタロスが死んだ後、残された3人娘はどうなったか」という話
だと思っていたのですが、「記憶を無くしたルシオラ、ベスパの視線から描く
本編の後日談」だったのですね。私は奈々は額面通りアシュタロスの娘だと信
じていたので、ベスパだったという展開はちょっと不満でした。「父親と母親
が育ての親のため死んだことを知った奈々の苦悩」という展開も予測していた
のですがやられました。しかしそうなるとルシオラの記憶も戻るだろうと思い
「横島と令子とルシオラの三角関係に焦点をあてた愛憎劇」なのかなんて妄想
もしてしまいました。
しかしこんなにすっきりとした終わり方になるのは意外でしたが、とても感
動しました。最後に美神(結婚しているのに、「美神&横島『浄霊』事務所」
とは夫婦別姓なのでしょうか?)の心情を告白させ、すっかり丸くなったその
性格に触れることで「十年後なんだな」と実感し、父親のメモが落ちて締めく
くる。良い終わり方だと思います。
次の作品でも楽しませてください。
(鈴木 充智谷)
- う〜ん、魔族のことですが、美神は一応敵と見なしていたとは思いますが、「必要
以上に」憎んでいたかどうかは疑問です。魔族との戦いが原因で母親が死んだという
表現は今まで無かったと思いますから。それと美神が金が好きなのはGSになる前か
らだと思うんですよね。唐巣神父の所にいる頃からああだったわけですから。先天的
に金が好き、というキャラは、漫画ではわりと良くありますし。解釈の違いというこ
とで反対に入れさせて頂きました。
とはいえ、この話はなかなかのものだと思います。真面目なテーマに正面から取り
組んだ点は敬服しますし、話も面白かったです。
(ホーエンハイム)
- あ、追加です。私は美神の父の研究対象はは文化人類学か、サル学(動物行動学?)だと勝手に思ってました。根拠はないんですが。どこかにその辺をはっきりさせる描写、なかったですかね?
(ホーエンハイム)
- Toホーエンハイムさま
>父親について
「小説・水迷宮の少女」から
勝手に推測したわけです...「虫と関係のある研究」だと...
それに、ひょっとしたら「○○ュ様」の生まれ変わりだったらと
(自分だけの)「隠し設定」を持ってたもので...(笑)
本当の「あいする娘」として...いままで出てこなかった理由も
まったく根拠が無いと言われたらそうですが...
(大ハズレだったらわらって誤魔化します...汗)
>はたして憎んでいたか
横島がいなかったら(時空消滅内服液の件)おキヌちゃんでさえ
「祓おう」としてなかったっけ...?(笑)
「悪霊をシバキたい」という禁断症状も...たんに「戦闘的な性格」かな
「金もうけにこだわる」というのは、(勝手な想像ですが)子供の頃に、
「もっとお金があれば母の治療に何とかなる」と思っていたとか...
まぁ、大金持でなくとも、けっこう「お金の心配のない生活」でしょう
中学生のときに少しぐれていたのは
これからの連載で(続いたならば)描写が出てくるのではないかと思います
本編に描かれるまでの「未確定の世界」ですから、
そこらへんに「想像力で遊ぶ余地」を見つけたいですね
To鈴木さま
>「美神&横島『浄霊』事務所」
ああいった「業界」では結婚しても仕事を続ける場合には(名前が売れているなら)元の姓でつづけることが「メリットがある」と判断したもので
戸籍上は改姓してると思います
>「愛憎劇」...まだそういったストーリーを書く技量が無いので(笑)
わりとさっぱりしたハナシづくりが好きなのでご了承ください
(いーびる・あい)
- あ、小説の方に何か書いてあるんですか?まだ読んでないんですよね。ファンとしては不覚の極み。確かに虫学者なら、仕事で南米の方にいてもおかしくないですしね。
考えて見ればまだまだ「想像で遊ぶ余地」がかなりあるんですよね。必ずしもそれらを全て描く必要はないわけなんですが、やはりまだ終わって欲しくはないですね。「創造」で遊ぶしかなくなるのはちょっと寂しいです。
(ホーエンハイム)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa