ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(宿縁)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 4/12)




 ー終曲ー



 ー魔城内部ー


 外観の無骨さとは裏腹に、中はまるで別世界だった。
 今では正確な所在も解らないとされる数々の芸術品が飾られており、一様に目映い輝きを放っている。天井には名高い工匠が手がけたかのような、洗練され気品に満ちた数多のシャンデリアといい、まるで王宮かどこかにでも迷いこんでしまったかのような・・・そんな錯覚さえ覚える。
「西条君?」
「うわっと!」
 西条は飛び上がった。見とれて惚けていたところに突然(でもないのだが)耳のすぐ側で名を呼ばれた為だ。
 すぐさま気を落ち着けようと二、三度かぶりをふって、声をかけてきた恩師、美神美智恵に向き直る。
 そんな元・生徒の様子に、美智恵は嘆息した。
「駄目じゃない・・・どんな場所でもここが敵陣まっただ中って事には変わりないのよ。ちゃんと気を引き締めなさい!」
 西条はシュンとうなだれた。ここにもし唐巣神父がいたなら何らかのフォローが入れられるところだが、あいにくその神父もここにはいない。弟子と呪術使いの女性、その女性のアシスタントをしているテレパシストの青年と四つに枝別れした道の一つ・・・右から数えて三番目の道を進んでいったのだ。
 ここに残るメンバーでは、ヒャクメやジークはともかくとして、付き合いのあった魔鈴めぐみもいるが、彼女も逆に付き合いの長さから、そこはプライドの高い西条。安易に慰めの言葉をかけるのをためらわせてしまっている。
 ようするに放っとかれるしか道のない西条だった。
「ゴホン!」
 美智恵の咳払い。ズブズブ沈没してゆく西条から、皆の目が剥された。
「最終・・・確認をしておくわ、いい?」
 一同皆(西条を除いて)頷く。それを見、美智恵も頷くとこう話を切り出した。
「さっきも言ったように、リミットは二時間と少し。それを0.1秒でも過ぎようものなら相手は即座『アレ』を動かすわ」
 ゴクリ、と唾を飲み込むジーク、ヒャクメ、魔鈴。
 彼女の娘と再会したり、かと思いきやまたすぐに別れたりなどする事で泣き疲れて、うとうとしている式神(十二神将)使いの少女と、貴族(のような?)Gメン捜査官の青年は話に加われていない。
 彼女はその二人には構わずに、言葉を続けた。
「そうなったら・・・アウト。何とか油断を誘って、あちらさんが『アレ』を発動させる前にウイルスを撒き散らしたのも、全ては『アレ』がこの戦況を一気に覆してしまう代物だからよ」
 そこまで言って、美智恵は口をつぐんだ。
(この城に入った時、ウイルスのフェイクから感じたのとはまるで違う波動を受けた・・・どうやら『アレ』を無理に一度発動させたみたいね・・・そうなると頼れるのは・・・)
「あちらさんに知られてない切り札、不確定要素のみ・・・」
『え?』
 ヒャクメがきょとんとして、こちらを見つめてくる。
 美智恵は軽く手を振り「何でもないの」とだけ言ってかわすと、四つに別れた通路に目を向ける。
 それを見たヒャクメも、少しばかり納得のいかない表情をしてたが、やがて六道冥子の精神感応力を持つ式神とリンクする作業に戻った。

(宿命の縁。過去からの業縁。そして未来から、か・・・)

 再度の彼女の呟きは、誰にも拾う事は出来なかったーーー


 同時刻。

 右から3番目のルート。


 一歩進むと、空間から闇が生まれた。

 覚えがある波動。

 離別した筈の『アイツ』の波動。

『エミさん・・・!』

 二人を片手で制すと、やっと、現れた。

 逢いたかった漆黒。闇色の悪魔がーーー


 同時刻。
 
 右から2番目のルート。


「案外ここまで楽勝だったすね〜」

 例によって、大荷物をしょった青年が気楽にそう言った時。

 前方の空間の一部が裂ける。何かが現れる。

 そこから覗くその腕、その掌中には破魔札が在った。

 しかしそれよりも、目を惹く・・・いや疑うべき光景。

「・・・私?違う・・・ママ?」

 そこに現れたのは、かつて神父の昔語りの時目にした、一枚の写真、その写真に写った女性の姿だったーーー





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