ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(蹴鬼)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 4/ 7)




 ー終曲ー



『くらえぃい!』

 雪之丞の眼前ーーー巨体(巨足)が宙に舞う。

 華麗(だかどーだかしらないが)に二回転し、遠心力をつけて、巨足はそのカカトを降り下ろしてきた。
「くぅ・・・っ!」
 無論雪之丞に、そんな予備動作つきの空中技をまともにくらうような、そんな愚鈍さなどあるわけもない。
 先に不意をつかれた時に背にした壁を蹴り、更にその勢いのまま対面してた壁を蹴り、俗に言う『三角とび』のように巨足へ飛び蹴りを浴びせる。
『がっ!?!』
 巨足が声をあげる。
 しかし・・・クリーンヒットしたとはいえ、今のはろくに霊力も込めてはいない、実質ただの飛び蹴りに過ぎない。恐らく巨足の発した声は、痛みとかそういうものでなく、単に面食らったというものだろう。
 何にせよ、解った事はこの巨足が自分を(『達』はつけない)始末する為に送り込まれてきた刺客であるという事、そしてその刺客は・・・
『どっせええぇいぃーーー!!!』
 視界いっぱいを覆いつくす足撃を、紙一重で避けると、右掌中に溜めた霊波を解放する。
 轟音。
 それはまるで巨大な岩石同士がぶつかりあったかのような。
 霊波を掌底として叩きつけ、生じたその余波を生かして雪之丞は後方へと大きく飛び去さった。巨足はゴロゴロと床を転がり、壁に激突。そのまま動かなくーー・・・
 ・・・は、ならなかった。
『効かあぁぁぁん!!!』
 そしてその刺客は・・・ーータフ。
 いや頑丈というべきなのか、ともかく雪之丞はうんざりした面で、巨足を改めて見やる。
 やはりーーー脚。
 ソレ(ソイツ)は人間の膝の下からを切り離して巨大化させた・・・というのが見たままの姿のその脚妖怪は、飛び蹴りの時感じた異様な手応えを裏付けするかのように、凄まじいタフネスさと打たれ強さを武器としていた。
「・・・よし」
 即座決断。
 彼はすぅっと息を吸うと、巨足に背を向けた。
『・・・む?』
 それは偶然。しかし好運。丁度彼が後方へ跳躍した時、跳んだ方向は進んでた方向と一致していたのだ。
(付き合ってられねぇ、そこの二人と遊んでろ!)
 面倒は極力避け、霊力の温存を計る。彼の頭脳が弾き出したのはプロフェッショナルとしての戦闘回避。
 しかし。
「待ちなさい、ジョーちゃん!」
 聞き捨てならぬ呼び方に、雪之丞は一瞬動きを止めた。
 そしてその瞬間。
「な、か、身体が・・・!?」
 自分の身体から、力が抜けてゆく。どういう事態なのか解らずに視線をさ迷わすと、ポリポリと頭を掻いている。GS協会副会長と目が合った。

「今まで言い忘れてましたけど、さっきジョーちゃんがこちらを攻撃した時に、同時にこちらも遅効性の筋肉弛緩剤を・・・」

 視界が真っ赤に染まった気がした・・・次の瞬間。

『逃がさぁぁぁんっっ!!!!!』

 渾身の巨大飛び蹴りにより、彼は吹き飛ばされた。

「雪之丞さんっ!?」
「あ〜あ・・・やっちゃいましたねぇ」
 陸奥季と副会長が雪之丞の身を案じて?声をあげると、巨足がぐるりと躯の向きを替えた。不敵に(どこからかは謎)笑う。
『見たかこの蹴りを!・・・この躯はとある大物ジョカトーレの鍛え抜かれた脚からクローンにて生成された!この蹴りに飛ばせぬモノなどないっっ!!!』
 標的を一人倒した?事に意気をあげたのか・・・巨足はそう自慢げにまくしたてた。やがてズン!と陸奥季達の方へと、一歩踏み出す。
『次は貴様ら・・・覚悟は良いな!?』
「いいえ」
 その威圧を誇示した巨足を前に、副会長は平然と口開いた。
「覚悟するのは貴方ですよ」
『?・・・何?』

 瞬間。

『こぉぉの野郎ぉぉおう!!!!!!!!!』

 背後からの強襲。
 全身目映く輝かせ、怒髪天を衝く雪之丞の、渾身の力を込めた(偶然だが姿勢がサッカーでのバイシクルに近い)蹴りは、カウンター気味で繰り出された巨蹴をものともせず、巨足を数十メートル先にまで吹き飛ばしたーー・・・

『何故じゃ・・・』
 巨足が呻く。
『何故・・・蹴りで負けた・・・ワシは間違ってたのか?』
 蹴りにおける敗北・・・それは『彼?』にとっては存在する理由、いや存在自体の否定にも等しかった。
『ワシは・・・』
 雪之丞が微かに顔をしかめる。しかしどう声をかけていいのかも解らずに、やむなくただ巨足の嘆きを見ていると・・・それまで何も言わずにいた副会長が巨足へと近づいていった。
『・・・・・・?』
 気配に気づき、巨足が躯を揺らす。副会長はそっと巨足のすね辺りに手をおいた。
「大丈夫』
 そのまま言葉を続ける。
「貴方は何も間違えたりしてませんよ』
 僅かに、ほんの僅かに巨足から放たれる『嘆きのオーラ』が和らいだ・・・のだが。
「ええ、貴方は間違ったりしてません。何故なら・・・」


『間違ってるのは貴方でなく、貴方の存在自体なんですから』


 巨足はピクリとも動かなくなった。

 そして。

(こいつ・・・イタリアいる内ぜって殺す・・・例え刺し違えても日本には帰さねぇ・・・禍根は絶つ!)


 彼の胸に確かな誓いを刻ませて、巨足との闘いは終わった。


 一方、別ルートでは・・・

「なんであんな見も知らぬ軍人の女と・・・せんせぇ・・・」
「うっさいバカ犬、イライラしてんだから静かに・・・」

『作戦行動中だよ!私語は慎みな!』

『は〜〜〜〜い・・・』

 ・・・こちらもやはり足並みは、揃っていなかった。




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