ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(腐縁)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 4/ 5)




 ー終曲ー



 薄暗い。

 壁に点在するよう取り付けられたランプだけでは、照らしつくせない程、幅の広い渡り廊下を『彼ら』は進んでいた。
 コツコツと、誰も口を開かない為に、足音だけが虚しく響く間が続いていく。 
 しばらくそうしている内ーー・・・
「あーーー!」
 先頭をズンズン進む(実際は故意的に、後続と距離を離している)青年が頭髪を掻きむしり、突然叫び声をあげた。
「おや、どうかしましたか?またそんな奇声をあげて・・・ああ、なるほど」
 後ろで、距離を開こうとしているのに、常に間隔を一定にしてついてくる童顔の青年が、ポンと手を合わせた。
「なるほど・・・陸奥季さん、今の雪之丞君は多感な時期によく発病するといわれる『ケタタマシ病』にかかっているのです」
 雪之丞は右手が勝手に動くのを感じた。
 止めようともせずに、委ねる。
「まぁ大変・・・」
 陸奥季綾、そういう名の女が気勢をそぐ相づちを入れるより先に、雪之丞の右手から放たれた霊波球が二人の足元に着弾、次の瞬間には床もろとも爆砕した。
「・・・判ってるんだ」
 爆破により巻き起こされた粉塵に視界を遮られてはいる。
 しかしーー・・・彼には判る。解っている。
「ああ、そうだ、んな事ぁ解ってんだよ!」
 ギュッ!と拳を握り締める。

「いや〜今のは結構なスリルがありましたね〜」
「そうですね〜私びっくりしちゃいました〜」

 目に飛び込んできた光景。
 それは・・・悲しさを通り越す程、予想通りでーー・・・

『無駄な事やってるって解ってるんだよっ!畜生っ!』

 雪之丞は頭を抱えて、ひたすら地団駄を踏んだーー・・・



 小一時間程前の事。

「・・・ちょっと待て」

 考えるより先に、彼はそう口を挟んでいた。
 実の娘から離れたがらない式神使いの女性や、膨れ顔をした犬科の少女達をなだめていた『彼女』が振り向く。

「雪之丞君?貴方まで何か不満でもあるの?」
 それは穏やかな声。包み込むような『母親』の声。
 しかし今の彼には、それに感じ入ってる余裕など無い。
「ここから通路が四つに分かれてる・・・こういうケースでは、効率良く人質捜索する為それぞれの通路に攻守バランスの取れた組み合わせでチームを作り送り込む・・・」
 それはつい先程、彼女の口から発せられた言葉。
 自分の発言を、確認するように繰り返した青年に、彼女も頷いてみせる。
「えぇ、だからーー・・・」
「だからっ!どうして俺が!よりにもよってコイツらと組まなきゃいけねえんだっっ!!?」
 彼は地団駄を踏み喚いた。次の動作でビシッ!と『コイツら』を指さす。
「いやぁ、陸奥季さんの煎れてくださるお茶、絶品ですねぇ」
「やだ・・・誉めすぎですよ、福会長さんたら!」
 そんな『コイツら』の様子を淀んだ半眼でしばし眺めてーー・・・・やがて彼は世にも陰欝な表情を彼女に向けた。

「頼む。後生だ。・・・チームの振り分け再考してくれ」

『ヤです』

 返されたのは、あっさりキッパリ、断固とした拒否の言葉。


「・・・・・・」
 それはまるで凍り付いた物体が地面と激突し、粉々に砕け散る様のように。
「あ、ゆ、雪之丞君!?」」
 駆け寄る神父の手も間に合わずに。
 彼は前のめりにーー・・・顔面から崩れおちた。



「結局のところ・・・」
 いまだ愚痴るのは女々しい。そう解ってはいても、彼は胸中に広がるやるせない気持ちを制御しきれずにいた。
 マイナス方向に進む思考を切り替えようと努力はしてるものの、上手くいかない。
(俺って・・・もしかして状況に流される運命の星の下にでも生まれ・・・!?)
 そこで彼の思索は中断を余儀なくされる。
 彼はーーー跳んだ。

「っ!?ーーーちぃぃっっ!!!」

 長年磨かれた危険への直感力。それは失意のただ中にあろうと、決して休止したりはしない。
 真横へと跳躍しながらも彼は確かに見た。
 真上から、圧倒的な重量をもった『何か』が、先程まで自分が立っていた位置に舞いおりてきたモノ。その姿を。
『ヌフフフフ・・・』
 そう、その姿、を。
『待っとったぞ・・・!』
 すが・・・た、を・・・

『こっから先は一歩も通さん!さあワシの腕を見せてやる!』

 舞いおりてきたモノ。それは・・・

『腕ないじゃん・・・お前・・・』



 それは足。巨大な『喋る脚』だったーー・・・



「勘弁してくれぇぇえ!!!!」






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