ザ・グレート・展開予測ショー

交差そのに。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 4/ 3)

―春の陽気のせいか、おかしな奴が出てくるもんだ。
と横島はそんなことを思いつつ視界の先にいる人物をみた。
というか本当は、銅鐸とやらを捜さないとならんのに、なんで自分は人間を見つけるのだろうか?、いやそれは仕方ないんだってそーゆうもんなんだから、とつい自問自答してしまう。
身長は自分より頭ひとつ分ほど小さいだろうか?
大きな瞳に、大きな耳―どーみても美形などとはいえないだが愛嬌の持てる顔立ちである。
肩まであるだろう髪を無造作に後ろでくくっており―その髪にしても艶のあるやら、滑らかな―などということはいえない、ぼさぼさの日に焼けた髪だ。
身に付けているものも季節感というものを完璧に無視している。
今は、春まっさかりだと言うのに、見たことも無い厚手のコートに皮製の靴、手袋、帽子、というまるでここが極寒の地であるようないでだちである。
これで怪しいと思わないほうがおかしい。
(でも…ま、イってる奴ではないなあ)
格好はおかしいしこれでもかというほど怪しいが、けったいな行動には出ていない。
―というか、どこか迷子のような印象をうけるのは気のせいだろうか?
きょろきょろと周りを見渡す様子はなにかを探しているかのようでもあり、ここがどこか確認しようとしているようでもある。
その瞳に時折、不安そうな影がよぎるが、とりみだしたりすることもない。
体中に血の跡やら、なにやらついており、顔は小さな擦り傷だらけである。
右の手の甲は、手袋を突き破って怪我そしているらしくじわりと赤い染みがついていた。
だが、この人物はそれにも気付かずに、手をぐっと握り締めあたりを見回し、なにか考えるように、視線を彷徨わせているる。
―その様子に、どこか捨てられた子犬のような―悲壮なものを感じるのは横島の気のせいだろうか?
このまま見てみぬふりをしてもいいのだが、なにやら、捨て犬を道路に(しかもトラックの走る)投げ捨てるような―そんないいようのない罪悪感に囚われ横島は口を開いた
「おい。右手の手の甲から血が出てるぞ」
と。


頭に布を巻いた―多分自分と同じ年齢くらいであろう少年は、ひどくぶっきらぼうに
「右の手の甲から血が出てるぞ」と言う。
「へ?」
とは藤吉郎。
そこで初めて自分の右手に視線をおくると―
真っ赤に染まった自分の手袋が視界に入った。
そして痛覚というものは現金なもので、途端にずきずきと痛みが起きる。
「っててえええええええ!!!!」
と、藤吉朗。
それもそれで今更だろう。
だが、はたと今それどころじゃないと思い口を噤む。
怪我なんぞあとで、治療はできるし、痛みもこれくらいなら、我慢できる。
それよりも現状を知る事が大事だ。
と藤吉郎は頭を切り替えると―
「すいませんが、ここは、どこですか?」
と聞いた。


横島はやっぱいかれてるのだろうか?と思い頭大丈夫か?と聞きたい衝動に駆られるが、目の前にいる少年は、どう見ても真剣である。
言動と格好をのぞけばどこにもおかしさを感じない。
「すいません。本当に変なことを聞いてるのは自覚してるんです。だけど俺にはここがどこだか、どんな『時代』なのかわからないから―」
と、その少年は横島の胡散臭そうな表情に気付いたのか、おろおろと慌てて言い募った。

「『時代』だって―」
と、その言葉をいったとたん横島から、胡散臭そうな表情が消えた。
「え?あ・はい」
と藤吉郎。
突然の横島変貌にうろたえる。
―時代を移動したなど一笑にされるか、もしくは頭がいかれてるのか?と思うのが普通であり、事実藤吉郎も、実際に体験しなかったらこんな事聞かれた日には、大丈夫かと聞き返すだろう。
だが、横島は緊張したように、ごくりと唾を飲み込み
「じゃあ、オマエ『も』時間移動能力者か?」
―と言った。
つづく

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa