ザ・グレート・展開予測ショー

終曲(再会)


投稿者名:AS
投稿日時:(02/ 4/ 3)




 ー終曲ー



 城塞の、その鉄扉の前に、彼らは集結していた。
「・・・何か、さぁ」
 揃って黙り込む一同の中で、浅黒い肌をした女性がいかにも面倒そうだ、と言いたげに唇を動かす。
「ん〜・・・この際ズバリ聞くワケだけど・・・」
 誰一人とし、その言葉に反応などしない。解っているからだ。彼女が次にどんな言葉を放つのかが。

「どーやってこじ開けるワケ?こんなバカでかいの?」

 ひゅるりら〜・・・と、冷たいのだか冷たくないのだか、そう、生ぬるい風が全員の身体を掠めていく。
 やがて、程無くして・・・全員の視線は、巨躯である一人の青年へと集中して注がれた。すかさず視線の持つ意味を看破した青年の頬を、一筋の冷や汗が伝う。
 皆声を揃え、その中、代表して青年に笑顔まで添えたのはやはり、浅黒い肌の彼女だ。

『頑張れタイガー』

 虎は荒れ狂った。いや慟哭した。

 全くどこまで・・・例え異国の地であろうとも、再会はしようと彼らは一致団結に程遠かった。

 そして、それを見・・・
「・・・フゥ」
 神父の洩らすため息もまた、相変わらずだった。

『まったく貴方達は・・・いくらタイガー君が人間離れしてよーとこじ開けられるわけないでしょ!?』
 さすがに見兼ねたのか、『彼女』の口からフォローの(実はフォローのようでフォローしていない)声が割って入る。
『そんな事しないでも大丈夫よ・・・ほら』
 彼女の言葉が終わらぬ内に、地面を擦る音と共に、扉が重々しく左右に開いていく。
 やがて、開いた扉、その奥から三つの人影が歩み出てきた。
『西条君・・・それに六道さんと魔鈴さんもご苦労様』
 いたわる言葉が三人にかけられる。
 少し照れくさそうにし、しかしどこか苦笑混じりの表情で、西条は彼女の側へと駆け寄って行く。(ちなみに冥子は無論、その彼女の娘さんにしがみついており、間違っても暴走されないように周囲をオタオタさせているのは言うまでもない)
「はは、少しみっともないとこも見せてしまいましたけっ!」
 苦笑いしつつの西条の言葉はそこで途切れた。
 後頭部からの鈍い衝撃に、地面に倒れ込む。
「何だぁ、西条か、てっきり敵かと思っちゃったっすよー!」
 爽やか、そして朗らかな笑顔のバンダナの青年。しかしその背後に隠した右手には、おどろおどろしい『何か』が渦巻いてそうな夜闇に紛れる黒塗りの金属バットがしっかり握られていた。
『ふ、ふふふ・・・』
 西条がゆらり、立ち上がる。
 そしてその右手は素早くホルスターへとーー・・・
 ガブ!
(・・・ガブ?)
 突然の不可解な擬音に、西条は眉をひそめた。
 ゆっくりと、首を回すとそこには・・・
 ガブガブッ!ギャブウゥッ!!
『ウ、うッぎゃああああぁ!!!!?ッっ!!!?』
 噛んでいる。噛みつかれている。ふくらはぎの辺りを黒い犬が噛みついている。
「いた、痛たたた!こ、こら、離せ!離れろ!」
 ブンブンと脚を振ると、ようやく黒い犬は西条の左脚から離れた。もちろんくっきりと歯形は残っている。
『よーこーしーまーくーんー・・・!』
 西条は抜いた。銀の銃弾装填済み拳銃を横島に向ける。
『人が疲労してる時にとことんやってくれたな・・・僕が黒い犬を物凄まじく嫌ってるという事まで調査済みか?』
「はぁ?」
『とぼけるな!僕はな!黒い犬が大っきらいなんだっ!何故かズラかぶったハゲ頭という事にされたり!何故か夜空に輝く嫉妬の星・・・不名誉な・・・!にされたり、またほんとに何故か幼児に愛の言葉を囁くド変態として、東京湾でドザエモンにされたり屋上から飛び降りさせられたり・・・!』
 西条はそこで言葉を切った。ゼェハァと肩で息をしている。
 一方横島はといえば・・・敵意に満ちた眼から、何だか奇妙な可哀相な『モノ』を見つめる瞳にシフトしている。

「なぁ西条・・・」
『何だっ!?』
「俺さ、良い精神科のお医者さん知ってるから・・・な?」

 ブツン!と西条がキれ、今まさに狂戦士化しようとした時。

『ポチ!』

 声がした。
「ポチ・・・ポチィ!」
 闇夜には特に目立つ、美しい銀の髪。一瞬、女性かとも思わせる中性的な顔立ち。
 その銀髪の青年(少年?)は人目もはばからずに黒い子犬に駆け寄ると、宝物に巡り合えた幼子のように顔を輝かせた。
「やれやれ・・・」
「ふふ・・・」
 銀髪の姿を現した方角から、一組の男女が姿を現した。
 男の方は、平時から鋭い眼を少しばかり細め、女性の方はただ穏やかに微笑んでいる。
「雪之丞!陸奥季さん!」
 構わず子犬とジャレつく銀髪の青年をさておいて、同じく夜には一際目立つ、美しい金髪の青年の声に皆が集中する。
 そして、こちらへと歩み寄る二人のその背後には、何やら不機嫌そうな軍服姿の女性、ベスパの姿もあった。

『どうやら、皆集まったみたいね』

(あの二人と・・・切り札の『彼ら』を除いて、ね・・・)

 今ここに超一流のGS達が再会し、一致団結しようと・・・



『ヨコ島君・・・」
「何だよ」
「こうなった以上は決着は後回しだ・・・それより優先すべき任務があるしな・・・しかし憶えておきたまえよ!?」
「ふぁ〜〜〜あ・・・あ、も〜忘れた」

『ギギッ!ツ、ツキノナイヨルニハキヲツケタマエ・・・!』



 ・・・再会はしたが、団結には程遠かった・・・





今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa