ザ・グレート・展開予測ショー

ライアー・ライアー!!2(ver.B)


投稿者名:sai
投稿日時:(02/ 3/31)

「文殊!?何でよ!?」
「さっき美神さんが横島さんをどつ・・・そのあのっ、こづいたときに拍子で文殊が
アイスボックスの中に入っちゃったんです!!」
言葉遣いに気をつけながら美神に答える。

「ですから、今の乾杯のときにコップに氷を入れた人のうち誰かが・・・!!」
全員が一斉に自分のコップを見る。

厄珍とカオスはビール。
冥子はミルクティー、魔鈴はハーブティー。
渋いところで伝次郎は日本酒だった為、彼らは氷を入れておらずセーフ。

その他はジュースだったりカクテルやチューハイだったり、主要メンバーの殆どは
可能性があった。

「・・・『真』・・・・・・・・・?ま、ヤバそうな字じゃないし、乾杯から暫く経つけど
 誰にも何にも起こってない所を見ると特に大した事はなさそーね。
 横島クンの文殊もそんな長持ちするもんじゃないから、せーぜーこの半日
 何もなきゃなんもないわ、きっと」

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ライアー・ライアー!!2(Ver.B)

なまじ『人』よりも強力な霊感を持っている為、気づかなくてもいい事に気づいて
しまう事がある。
彼女は、口にした瞬間に既に
(!・・・何かおかしい・・・!!)
と感じていた。ただそれが魔族のものではなく、また悪意的なそれでもなかった為、
即座に騒ぐ事はしなかった。
ピートと美神のやり取りを聞いて、心の中でひそかに後悔した。
(しまったわ・・・!いつも通りお神酒にしておけばよかった・・・!)
元々大酒飲みではないが、珍しく最近覚えた『かくてる』でも飲んでみようかしら・・・
とモスコミュールに切り替えたのが失敗だった。

(『真』の文殊・・・・・・真・・・?)
何食わぬ顔で考えつづける。『真』の文殊を飲んでしまうことで、どんな効果があるだろうか?

(・・・・・・まさか!!)
一瞬さあっと顔が青ざめたが、直ぐにポーカーフェイスに戻る。
「あ、ヒャクメ、ちょっと失礼しますね」
「ん?ひゃい」
ポテチをつまむヒャクメに会釈して、一人離れた桜の木に手をつき『反省』のポーズをとる。

そのままボソボソと独り言を始める。




「私の名前は?・・・・・・・・・・小竜姫」
自分のセリフに満足なのか、独りよしよしと頷く。はたから聞いていたら記憶喪失
なのかと思われるようなセリフだが、宴会場からは離れていて誰も聞いていない。
「姉の大竜姫は怖いですか?・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
自らの問いに、今度は暫く沈黙する。しかし、その小さな唇は震えている。
「・・・・・・・・・・・・・・・こっ、怖いです・・・・・・!」
ゆっくりと答える。
その色白の顔が今度こそ青くなり、だらだらと冷や汗を流す。
(間違いないわ・・・・・・・!!とんでもないものを飲ませてくれたわね、横島さん!!)

彼女、小竜姫にはこれから発する自らの問いは死刑台に上る儀式のように思えた。
「才能のある人間を育てるのは楽しいですか?・・・・・・・・・楽しいです」
そーよ、そーなのよ、うんうんとさっきよりも深く頷く。

す―――――っ、は―――――・・・!
一度、大きく深呼吸をして、問いを続ける。
「特別に肩入れしている人間はいますか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・います」
ぼふっ!!
紙のように真っ白だった小竜姫の顔が一気にピンクに染まる。





その頃、唐巣がヒャクメの席へやってきた。
「ヒャクメ様、小竜姫様はどちらへ?」
「小竜姫なら酔い覚まし中ですねー!」
と、小竜姫のいる方を指差す。
「あ、ホントですね。では戻られましたらお神酒を差し上げます、と」
「分かったのねー」





(キャ―――!!どうしましょ!?)
一方、はーはーと荒い息をつく小竜姫。飲みなれない酒も手伝って、
動悸が激しく考えがまとまらない。
ちなみに小竜姫用のカクテルを作ったのは全てヒャクメであり、しかも間違えて
アルコールとその他の成分の比を全て逆に作っていた事に二人とも気づいていなかった。
ごくっ、と小竜姫が息を呑む。
「では、よっ、よこし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」
ぼんっ!ぷしゅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・!!
「あらー?小竜姫ったら何やってるのかしらねー?」
小さな爆発音が聞こえ振り向くと、遠目に真っ赤な顔をして頭から湯気を噴いている
小竜姫が目に入った。




「あれー?小竜姫はー?」
酒席であるなしに関わらず、彼女にかかっては神様さえも呼び捨てである。
「小竜姫なら、あっちで酔い覚まししてるのねー!」
「あらホント。神様でも酔っ払う事ってあんのね」
「あー?普通そんなに酔わないんだけど、元々小竜姫はあまりお酒を飲まないのねー」
「ふーん。ま、いいわ、戻ってきたら彼女もこっちに呼んで」
「はーい」

そう答えたヒャクメの頬はうっすら桜色であり、よく見ると彼女の廻りには
カラになったウイスキーのビンが5、6本転がっていた。
彼女は他の神様の例にもれず酒自体は好きなのだ。しかも、今回はいつも止めてくれる
小竜姫が離れてしまっている為まったく歯止めが利かず飲みまくってしまい、
既にかなり酔ってしまっている事が小竜姫には更に災いした。








(ああっどーしましょっ!?)
火照った頬に両手を当て、混乱した頭で考える。

(いっそのこと、『仕事がありますので』と言って帰ってしまおうかしら・・・?)
堅実策のように思えたが、猿神と大竜姫の顔がふと浮かんでハッとする。

(あああああっダメよ!こんなウソがつけない状況でしかもなんだか酔っ払ってるし、
 猿神様や姉様と少しでも会話をしたら必ずボロが出ちゃうわ!!)
ただでさえ「最近天竜童子の管理が甘い。小竜姫個人の人界への出張も多すぎる」と
指摘されている上、二人の神界出張を見計らって内緒で遊びに来てしまったこともある。
今日だって「人界の自然科学調査」ということにして来ているのだ。

(バレたら10年くらい出張禁止かも・・・!いえ、しかも姉様の事だから
『ほう、あの小竜姫がな。それは面白い』とか言い出して、自ら人界へやってきて
メチャクチャにしかねないわ・・・・・・!!)

想像は悪い方へと流れていく。
が、思い切ったようにキッ、と顔を上げる。
(もはや私に引く道なし!!そうよ、まだ誰も気づいてないんだし今日一日
 余り喋らず大人しくしていればいいのよ!)
自分に言い聞かせ、一つ大きく深呼吸をしてから元のポーカーフェイスで
ヒャクメの元へ戻っていった。




「おまたせ、ヒャクメ」
「あえ、小竜姫?何してたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
「??」
帰ってくるなり、微笑んだままで何も言わない小竜姫をヒャクメが訝しそうに見上げる。
(『何してたの』?どーしてあなたはこんなときだけいきなり核心を突くのよっ!?)
少し困ったように細い眉根を寄せ、ヒャクメの耳に口を近づける。
「ぼそぼそぼそ・・・」
「え?何?」
「だから・・・・・・私・・・・・・・・・じゃったみたいなの・・・」
「えー!?よく聞こえないんだけど?」
「もぉ・・・だから、私が『真』の文殊を飲んじゃったみたいなのよ」
ぼそぼそっと小さな声で小竜姫が告げる。

しかし、古今東西酔っ払いは思考回路があまり回ってない。神様とて同じである。

「え―――っ!!小竜姫が『真』の文殊を飲んじゃったのね――――――!!!」
「ヒャクメ!声が大きいっ!!」

しかも、古今東西酔っ払いは声が大きい。神様とて同じである。
慌ててヒャクメの口を抑えるがもう遅い。




ぴた。




と、宴会場が静まった。全ての目が二人へと注がれる。
「ほ、ほほほほほ・・・・・!!」
小竜姫には、もはや笑ってごまかすより他に手はなかった。例え、何の解決にも
ならないことが分かっていても。





(つづく)

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