ザ・グレート・展開予測ショー

ライアー・ライアー!!2(ver.A)完結編


投稿者名:sai
投稿日時:(02/ 3/31)

「文殊!?何でよ!?」
「さっき美神さんが横島さんをどつ・・・そのあのっ、こづいたときに拍子で文殊が
アイスボックスの中に入っちゃったんです!!」
言葉遣いに気をつけながら美神に答える。

「ですから、今の乾杯のときにコップに氷を入れた人のうち誰かが・・・!!」
全員が一斉に自分のコップを見る。

厄珍とカオスはビール。
冥子はミルクティー、魔鈴はハーブティー。
渋いところで伝次郎は日本酒だった為、彼らは氷を入れておらずセーフ。

その他はジュースだったりカクテルやチューハイだったり、主要メンバーの殆どは
可能性があった。

「・・・『真』・・・・・・・・・?ま、ヤバそうな字じゃないし、乾杯から暫く経つけど
 誰にも何にも起こってない所を見ると特に大した事はなさそーね。
 横島クンの文殊もそんな長持ちするもんじゃないから、せーぜーこの半日
 何もなきゃなんもないわ、きっと」

美神の言葉に一同がほっとした表情を見せる。が、振り返れば美神の顔が夜叉の顔に
変わる。
「にしてもアンタうっかり『死』とか『狂』とかの文字で私が飲んじゃったら
 どーしてくれんのよっ!?こんなとこに文殊持ってこないで仕事で使いなさいっての!」

横島の胸倉を掴みガクンガクンと揺さぶる。ドラマで取り立て屋がよくやるアレだ。

「ああっスンマセンッ!?でもっでもっ、直接の原因は美神さん・・・」
「そーよ!!私があんたをしばいたからよっ!!なんか文句ある!?」

(((((!?)))))
「!?・・・いえっ!!何もっ!!おそばで使って頂けるだけで充分ですッ!!」

一瞬、場にいた全員が何か違和感を覚えた。
「あれ?先生、今何か変な感じが・・・」
「ああ、私も感じたんだが・・・何だろう?」

「まーいーじゃねーか。飲みなおそうぜ、横島も来いよ」
ピートと唐巣が思い出したい事が思い出せないような表情をしていたが、
雪之丞が後をひきとった。

宴は続く。
唐巣・ピート、エミ・美神、冥子・西条・魔鈴ら年長組が同じシートに
座っている。
「っとにあのバカにも困ったものよねー。どーにかなんないのかしら・・・!」
「まあまあ、美神君。GS資格を取得して以来、彼も成長してる様じゃないか。
そろそろ独立とかの話は出ないのかね?」
「まーさか!」

唐巣の言葉に即座に否定する美神。
(まだまだあのコは未熟ですから、もう5〜10年はウチで勉強させますわ)
そう言おうとして、口から出てきた言葉は。

「ええ、もう実力はそんじょそこらのGSよかよっぽどあるんですけど、
 ウチの稼ぎが減っちゃうでしょ?まー黙っときゃあのコだって実力充分なんて
 気づかないでしょーし!」
(はっ!?)
慌てて口を抑える美神。が既に遅く、西条たちが引いている。
「れ、令子ちゃん・・・」
「ほ、ほほほほっ!やーね、言葉のアヤよっ!唐巣先生、ワインもーいっぱい
いかが!?」

「あ、ああ、頂こうかね。しかし、美神君もがめついのはほどほどにくれたまえよ。
私も師匠として心配しててね、胃が切れてしまうよ」
「!なんだ、唐巣先生って胃に来るタイプだったんですね。私てっきり先生の生え際の
 後退が激しいのは自分のせいかってちょっと気にしてたんですけど、
 心配して損しちゃったわ!」

ブ――――ッッッッッ!!
(ええっ!!??)
西条と唐巣一斉に吹き出し、次第に周囲がざわつきだす。
「み、美神君・・・・・・君は・・・・・・!」
「先生っ、ち、ちょっと待って!!」

(お、おかしいわ・・・!何かがおかしい・・・・・・!!)
「・・・・・・・・!・・・ひょっとして・・・」
冷や汗を流しながらうろたえる美神を、つまらなさそーに見つめている視線があった。
エミである。もちろんピートの隣に陣取り、彼の片腕を抱えている。

「令子、アンタさー」
「何よ!?」
唐突にエミが割り込んできた。

「アンタ前に、極悪組の幹部に『近々エミの呪いがかかるから撃退してあげましょうか』 って大金で仕事を受けたそーね。私が警察から呪いの極秘依頼受けてたのを
 どーやって知ったワケ?」
「あーそれなら私、特捜の一課から五課まで全部のラインに盗聴器つけてるから
 何でも筒抜け・・・えええっっっっ!!!???」
「みっ美神君!?それは犯罪行為ではないのかねっ!?」

「やっぱりね。小竜姫様、これって・・・」
「ええ。『真』の文殊を飲んでしまったのは美神さんで、文殊の効果でウソが
 つけなくなってしまっているようですね」
エミの確認に、なぜかいままで高校生グループに混じっていた小竜姫が答える。
既に美神の廻りには人だかりが出来始めている。

「な、なんですって―――――!!??」

「そうそう美神さん、最近妙神山の床が傾いたり、蛇口から水が出なかったり
 するんですけど・・・」
「ああっごめんなさいっ!工事費ケチって手抜き工事やりました!!」

「美神、月に行った後マリアの調子がおかしいんじゃが・・・」
「純正パーツをケチってショーテック製を使ったわ!!」
(ひ、ひええ――――――っ!!!???)
「美神さんっ!!こないだ俺とおキヌちゃんだけでやってきた仕事ってホントに
20万円ッスか!?かなりキツかったんですけど!?」
「いーえっ!ホントは500万よっ!!!!」
(ぢょっどおおおおおお!!!!!!うぞ――――――!!!!!!)

(やっヤバいっ・・・!!このままじゃホントに破滅しちゃうわ・・・!!
 裏帳簿のありかや脱税額なんて言わされたら・・・あああああっ!!)
パニックに陥り、半泣きになって頭を抱える美神。

「それもこれもお前のせいじゃー!!」
ばきいっっっ!!!突然しばかれる横島。
「さっきは『私のせいだ』って認めたのに・・・!?(ガクッ)」
哀れ横島ノックダウン。
「事実はどうあれ、今美神さんの心の中で本気で思ったってことですね・・・」
「どこまでも強気な人ジャノー・・・!!」
触らぬ神にたたりなし、とタイガーとピートが引く。

「美神さん!」
気づくと、美神は女性陣に囲まれていた。
小鳩、おキヌ、愛子、シロ、小竜姫。メンバーに一瞬不吉なものを感じる美神。
「美神殿っ!前から聞きたかったことがござるっ!」
「あ、わたしもですっ!」
シロにおキヌ。目がマジだ。
(!こっ、これは・・・まさかっ!?)
小鳩の顔が微妙に赤い。囲みが狭まる。
「あの・・・、美神さんて、その・・・横島さ」

「キャ――――――!!!!!イヤ―――――!!!!!」
ぴゅ―――っ。
「「「「「あっ!?逃げた!?」」」」」

横島もびっくりの勢いで逃げ出す美神。

「面白いわ!令子の今までの悪事を全部ゲロさせて破滅させるのよ!!
 ほーほほほっ!!」
「狼の狩りからは逃げられぬでござるよっ美神殿―!!」
「これをネタに金をせしめて家賃を払うのじゃ!ゆけ、マリア!」
「これも青春よねっ!!」
花見もそっちのけ、後を追う面々。

「あ・・・」
取り残されるヒャクメと小竜姫。
「私たち、どうしましょう・・・?」
「えー?私はもう少しお花見してきたいのねー。
 真実はそれぞれの胸の中に。それでいいのねー、小竜姫も」
意味ありげに小竜姫を見やるヒャクメ。
「何のことか、分かりませんっ!」
そっぽを向いてしまう小竜姫の頬は酒のせいか少し紅かった。



―――――そして、日暮れ。

美神は、マリアやシロの追撃を根性で振り切り、今は神通棍を杖代わりに
とある路地裏をヨロヨロと歩いていた。
「き・・・今日は散々だったわ・・・!花見のはずがどーしてこんな目に遭わなきゃならないの・・・!?」
しかし文殊の効果ももう僅かで切れる。時効成立まであと10分を待つ犯罪者の気分で
あった。

「みっ・・・美神さん・・・!」
「ギャーッ!?」
こちらも追いかけ疲れてフラフラの横島が不意に脇道から現れ、美神の肩を掴む。
「やっと捕まえましたよ・・・どーしても聞いておきたいことがあって・・・!!」
「い、イヤ―――!!」
「逃げないで下さい!大事な事なんです!」
逃げようとする美神を、マジな顔で振り向かせる。その真剣な表情に美神が一瞬息を呑む。
「な、何よ・・・」

「美神さん・・・俺・・・!」

(ダメ・・・!今聞かれたら・・・私・・・!!)
立ちすくんで眼を閉じる美神。








「俺の時給、おキヌちゃんの五分の一以下なんですかっ!?」







「・・・・・・・・・へ?」






「いやですから、俺の時給・・・え?あの、美神さん?顔、怖いんですけど・・・!?」
疲れきっており気力のかけらも残っていないはずの美神から、ゴゴゴゴゴッと
霊気のオーラが立ち上る。

「このバカったれが・・・!」
「ち、ちょっと待っ・・・!俺、なんか変な事言いましたかっ!?」
「問答無用―――!!」
神通棍をバックスイングさせ、横島めがけ力強く振りぬく。
おお、理想のバッティングフォーム。

すぱこ――――――ん・・・・!!!!!!
「十分の一以下よ――――――っ!!!!」
「マジッすかぁ――ぁ―――ぁ――――ぁ―――――・・・・・・!」
強く高く飛んでゆく横島の声が、ドップラー効果で夜空に響く。



(アホらし・・・!・・・帰ろ・・・)
さすがの美神も今度こそ疲れ果て、帰路についた。


事務所では既に夕食が用意されていた。
「なんだぁ、もう切れちゃったんですねー。ちょっとつまんないなっ」
おキヌがいたずらっぽく美神に微笑む。
「あら、まだ切れてないかも知れないからなんでも聞いてみたら?ほほほほほ!」

にっこり笑い、カップスープに口をつける美神。
今宵も平和な美神の事務所であった。











「あれ?横島さんは?」
「あー、ちょっとヘコんでるかもしれないからそっとしといてやって」





「俺って0.1おキヌちゃん・・・・・・そりゃおキヌちゃんは役に立つけど・・・
 しくしくしく・・・・・・!!!」
屋根の上でひざを抱え、『存在の耐えられない軽さ』に打ちのめされてましたとさ。


(おわり)

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