ザ・グレート・展開予測ショー

動揺そのご


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 3/30)

その時の美神の顔は―甘い、恋人に贈る表情ではなく、挑戦的な―それこそライバルにでも向けるような笑顔であった。
いちゃいちゃするのに―相手の状況を見て、どこまでなら許されるか見極めるとはこれいかに?
横島は思わず額を抑えた。
なにかが違う。
いや、自分が理想としていたものとこれでもかっと言うほど違う。
恋人同士というものは、もっとこーなんというか、『貴方しか見えない』オーラを二人して出すものではないのだろうか?
いや、そんな美神を想像するのはものすごく難しいが。
だが、同時に横島はどくんっと再び煩く鳴る心臓の音を自覚した。
たいがい、たいがい、おかしいという自覚もあるが、こんな表情が一番綺麗だと思ってしまったのだ
優しい―女らしいひとよりも、強くて、あくどくて、誰よりも綺麗なひとが好きなのだ。
守られる存在ではなく、一緒にいるひと。
支えるのじゃなくて、いっしょに立てるひと―。
―それこそ、矛盾してるかもしれないが、だからこそ守りたいとも思うのだ。
守られる存在では無い―いつもかつも、守るつもりもない。
だけど、それでも弱ってる時や、ひとりで立つのに苦しい時には、傍にいたい。
―そして守りたい。
ひとりで立てるようになるまでの間だけ―。
(ああもう…)
横島は、観念したかのように、顔を抑えた。
そして、どうしようもないとも思う。
この人の行動にいちいち動揺するのも、嫌われたくないと思うのも、傍にいるだけで心臓が煩くて、だけど離れていると、ひどく落ち着かないのも
(惚れてるんだから仕方ねーよなぁ)
と。
そして手を顔から外すとそっと横島の襟首を掴んでいる美神の手のひらをつかみ、外す。
「ん?」
と美神は何っ?といった感じで首を傾げる。
そんな動作がいつもの感じと違いひどく、可愛い。
そっと両手で頬を包む。
もう心臓が爆発するんじゃなかろーかと思えるほど煩い。
手のひらから伝わる熱はあたたかく―確かにこの、目の前のひとが生きていることを知らせてくれる。
そんな当たり前なことが嬉しくて目を細めて―笑う。
美神も一瞬目を見張ってそして―同じように、笑った。
行き場が無くなりだらりと下がった両手で横島の背に手を這わす。
確かな重みに―存在に、たとえようもない嬉しさを感じる。
頬を包んでた両手でゆっくりと美神の顔を上げる。
―かちりと視線が交差する
―ふたりとも笑っている。
美神がゆっくりと瞳を閉じた
横島もゆっくりと瞳を閉じながら、すこしばかりかがむ

この日初めて―横島から口付けをした

つづく

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