ザ・グレート・展開予測ショー

慟哭。前編


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 3/26)

目がくらむほど激しい、感情。
―こんなに腹が立ったのは初めてかもしれない。
普通は、頭に血が上り、なにも考えられなくなるはずなのに、今は、頭の芯が冷え切っている。
炎と氷が同居したような―怒り。
目の前にあるこの男は、どうしようもなく馬鹿に見える。
横島は、つかみかかりたくなる衝動を必死で堪えながらはき捨てるように言った。
―「ふざけんな」と

事の起こりはこうである。
ある富豪の息子が、年若くして恋人を失った。
ふたりはとても仲が良く、結婚の約束をしておりまさに幸せの絶頂だったのに―である。
死因は、車による事故死。
それ自体はよくあることであり可哀相ではあるが、それだけで横島たちの出番が回ってくるわけもない。
そう、ここで悲しみにくれた息子は―食事もとらずに泣いた。
本当に、好きだったのだろう。
倒れても、それでも息子は恋人の姿を求めた。
―それが恋人には不憫にうったのか、死後も現れたのだ。
『―幸せになって』
それだけを言うために。
だが、半分正気を失っている息子は、恋人が生き返ってきてくれたと思ったのだ。
―神様が、自分に恋人をもう一度与えてくれたのだと。
実体を持たないことも、触れれないことも関係なかった。
―それこそ、当の彼女が成仏したいと思うことも。
息子は、そして彼女を縛りつけた。
ありとあらえる道具を使い、知識を得―彼女を閉じ込めたのだ。
そして、そのあまりの異常な息子の行動に、両親が―高名なGSに依頼をしたと言う事である。

「馬鹿ね」
ちなみに、報告書を見た美神の第一声である。
無理やり閉じ込められた魂は、時がたてばたつほど歪んでいくのだ。
本来ならば、こんな胸くそ悪い事件など断るのだがいかんせん、報酬がよい。
だが、本人の意向も無視し、そんなアホなことをする奴しかもそれが彼女のためにも、自分のためにもなると思ってるらしいところが―救い様もないが。
はっきし言って問答無用で、蹴りの10や20は入れたくなるだろう存在に決まっている。
「―まあ、気持ちはわからんでもないですけどねー」
そんな事を言うのは横島である。
つい最近自分も、大切な人を失ったばかりだ。
「何いってんの―あんたとこのアホじゃまだあんたのほうがマシにきまってるでしょ」
ぐしゃっと髪をかき回し美神。
「そうですか?」
その口調には、若干の苦さもある。
はーっとため息をつき美神はべきっと横島の頭をどつきたおすと
「ならきなさい、この手の馬鹿がどんなに鬱陶しいか見せてあげるから」
苦虫を噛み潰したような口調で言った。
というやりとりの後横島は、美神とこの男の説得(?)と霊の開放という仕事に出かけた
霊を『退治』ではなく、『開放』するという仕事はおきぬが適任なのだが、いかんせん今回は、事情が違いすぎる。

―確かに馬鹿だ。
とは、一目見た時の横島の感想である。
品の良い、そして線の細いだろう若者は、瞳だけを異常にぎらぎらと輝かせ籠のなかにいる魂をいとおしげに見ている。
その魂は泣き出しそうなのに、それに気付かない。
これが『二人の幸せ』だと信じて疑ってないらしい。
はあああああっと美神は地面にめり込みそうなほど大きなため息をつく
ちなみに、部屋には、結界が張られており眺めることはできるが入ることはできない。
「あああめんどくさいっ―横島君っ」
額を抑え美神。
「へーいっと」
と横島は、その美神の声に反応し、文珠を出す―
込められる念は『破』
きーんっとかん高い音をたてて結界が破れた。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa