ブラインド・デート再び!!6(最終話)
投稿者名:sai
投稿日時:(02/ 3/21)
大分間が空いてしまいました。ユリ子と横島のデート(?)は続きますが・・・!?
百貨店の中を暫く回ってみたものの、結局思うようなものが見つからない。
既に2時を回っている。
(ハラ減ってきたな)
きゅるる〜。
思うと同時に鳴る横島のハラ。こーゆー面では切実にガケッぷちで生きている為、
体は正直だ。
「あのさ、そろそろメシに・・・(!そーだ・・・)、
美味いレストラン知ってるから行かない?」
「あ、はい」
横島が誘い、ユリ子はついて行った。百貨店を出て、事務所の近所へと戻ってゆく。
着いた店はやっぱり『魔法料理 MARIN』であった。
「あ、私ここにおキヌちゃんと来たことありますよ。美味しいですよね!」
ユリ子が嬉しそうに話すと、
「ああ!そりゃーもー三つ編みに目の下のホクロとほんとーにおいしそーな・・・」
「何が美味しそうなんですか?」
ぐぐっとコブシを握りしめてしまう横島の後ろで魔鈴がにっこり笑っていた。
ユリ子もなんだか日頃と違うオーラを出しながらにっこり笑っていた。
横島のオードブルに竹ボウキのタタキがサービスされたのは余談である。
極上の料理を楽しむ二人。しかし楽しみ方は人それぞれ。
「こら美味いっ!こら美味い!」がつがつがつがつっ!
常時せっぱ詰まっている横島は貧乏神のようにがっつき平らげてゆく。
ムードもへったくれもあったものではない。
「よ、横島さん、美味しいけどあんまり慌てて食べると・・・」
「むっ!?むむっ!?(ん?何?)」
「い、いえ・・・」
回りから(テレビチャ○ピオンかしら?ヒソヒソ・・・)と聞こえる声がユリ子には
ちょっぴり痛かった。
ぷはー。
「食った食った。ごっそーさん」
横島が満足そうな表情で手を合わす。
「美味しかったですね!」
「あー、絶品だね」
ユリ子の言葉に横島が頷くと、ほんのわずかユリ子の表情に影が差す。
「こんな美味しい料理を食べちゃったら、もう他の料理なんて食べられなく
なっちゃいますね・・・」
ユリ子は微笑むが、その鈴の音色は少し低かった。
「ん、いや、そんなこともないけど・・・。あ、ホラッ、俺普段はカップラーメンとか
食ってるし!美神さんとこ行ったときに食えるメシなんて御馳走みたいなもん
だからさ!」
横島は返事になってるのかなってないのか解らないような事をまくしたて、
席を立とうとした。
「・・・そうですね・・・あ、そうなんですか!!」
一つ大きな息を吐いて、ユリ子も立ち上がった。
貧困な横島ではあったが元々良心価格の魔鈴の店で、更に西条の友人(?)ということで更に割り引いてもらっていたので支払いに困る事はなかった。
会計に合わせて、ユリ子は薬草や小ビンの調味料を何種か買っていった。
「?それ・・・」
店を出て、並んで歩く横島が覗き込む。
「これも彼女にあげるんです。彼女、料理もやりますから・・・」
ユリ子の表情は明るかった。前を向いたまま続ける。
「おいしいって食べてくれる人・・・たちがいて、つくり甲斐があるんだそうです」
「ん、そっか。・・・ところでそろそろ買い物はいいかな?」
横島が向き直って立ち止まる。事務所の近所だ。
「あ!はっ、はい!」
弾かれたようにびくっとして答えるユリ子。
(あああ、聞きそびれちゃった!・・・でも・・・いいか。きっと怒られちゃうけど)
「じゃ、これで・・・おキヌちゃんによろしく伝・・」
「あ、ちっと待って。ちょっと着いて来て欲しい所があるんだけど」
ユリ子が挨拶しかけるのへ、横島が手招く。
「はい?いいですけど・・・」
けげんに思いながらも素直について行くが、その脳裏をワイドショーから得た
偏った知識がよぎる。
(着いて来て欲しいって・・・、ええっそんなっまだ私・・・!・・・でも・・・!え〜!
それにこの体はそうよ、絶対ダメ・・・ダメだったらー!!)
横島の少し後ろを歩きながら、独り百面相をしてパニくっているユリ子。
はたから見ると少し変な娘だ。
「お、ここだ。・・・って、何やってんの?」
「はっ!?・・・(かあっ)」
ブンブンと横に顔を振ったところで横島が振り返り、ユリ子が我に返って照れる。
「ここって・・・」
横島たちは花屋の前で立ち止まっていた。
「ん、ちょっと待っててね」
横島が花屋の中に入っていく。店の名前は『フラワーショップ マリーベル』。
ほどなくして、横島が店から出てくる。手には、スイレンとピンクのバラで出来た
グローブ位の花束。
(え・・・!)
ユリ子の胸が高鳴る。期待と不安。
「(それは私にくれるんですか・・・!?)」
聞きたい。けど、違ったら。
『私』にくれるの?それとも同じ姿をした人?美神さん?・・・
息が苦しい。頭がぐるぐる回ってる。
「これ、あげたいんだけど、今で良いのかな?」
声が出ないユリ子に、横島が問い掛ける。
「わ、『私』にですか?」
「うん」
少し照れたように鼻の頭をかく横島。はたから見れば初々しいカップルに見えるだろうか。しかしユリ子の表情は苦笑いのような、嬉しいような悲しいような表情を浮かべる。
1秒。
横島の顔を見つめた後、ユリ子は残念そうにゆっくり言葉を発した。
「あの・・・ごめんなさい。違うんです」
「違わないよ」
横島の微笑みが今は痛い。
「いえ、違うんです。私・・・ホントは・・・」
ユリ子が言いさすのを横島がさえぎる。
「知ってるさ」
もう一度、横島が微笑んだ。
「え・・・!!」
ユリ子が驚くのをみて、ゆっくり横島が語りだす。
「前・・・幽霊だった頃、女の子に憑依したことがあっただろ?」
コク。
頷く。喉が震えて、声が出ない。
「そのときにさ、後で『花がいい薫りだった』って言ってただろ?」
コクコク。
強く頷いた。口元を両手で抑え、横島を見上げる瞳に雫が溢れてゆく。
「これからはそーゆーの、ずっと感じて生きてけるから・・・そのお祝いにどうかな、
なんて」
横島が照れてもう一度鼻の頭をかく。
(横島さん・・・・・・!!)
もう、ユリ子―ことおキヌの瞳は、涙でぼやけて横島の顔を映さない。
真珠の雫が頬を伝って落ちる。
ぽふ。
涙を見られぬようおキヌが横島の胸に頭を預け、小さな声でゆっくり横島に問い掛ける。
『いつ、気づいたんです・・・?』
『手ェ引いてくれたときに、なんとなくそーかなーって』
『なーんだぁ・・・』
『擦り傷が治ってたとき、確信した』
『ふふふ・・・』
「・・・・・・てくだ・・・い」
落ちた雫が十を数えた頃、ユリ子の姿のおキヌが小さく口を開いた。
「え?」
涙声を聞き取れず聞き返す。
「呼んで下さい」
おキヌが涙に濡れた顔を上げ、微笑む。
「私の名前を、呼んで下さい。そしたらすぐ帰ってきますから・・・!」
頷く横島。一つ小さく深呼吸をして、呼びかけた。
「『おキヌちゃん』、だろ?」
ヴンッッ!!
瞬間、何かが切り替わるような波動が飛ぶ。
「キャッ!」
と同時に、目の前の女の子―ユリ子が入れ替わりの衝撃に小さく悲鳴をあげた。
「あ・・・」
ちょっと間を置いてユリ子がきょろきょろあたりを見回し、横島が声をかける。
「ゆ、ユリ子ちゃん?」
「・・・・・・いけないんだぁ、横島さん。女の子泣かして―・・・。」
ようやく状況が掴めたユリ子が、涙の残った顔でいたずらっぽく横島を見上げる。
「えっ!い、いや、悪気はサッパリ無くて・・・」
「ふふふ、冗談ですよ。悪い気分じゃないですから。」
あわてて弁解するのをちょっと面白く思いながらユリ子が続けた。
「彼女、もう直ぐ来ます。私たち近所にいるようにしたから・・・。
私、帰りますね。それじゃ、失礼します!」
横島が引き止めるのを『邪魔しちゃ悪いから』とあっさりユリ子は帰っていった。
それから一分足らず、夕暮れの街を駆けて来る少女の姿があった。
瞳にうっすら涙を浮かべて。柔らかいジャケットを着て、
スカートの裾を跳ね上げながら・・・・・・・・・・・
(エピローグ・その晩の美神の事務所)
『やーっと確定申告終わったわ!おキヌちゃんなんか夜食お願いね』
『はーい』
『あら、このお花綺麗ね。ユリ子ちゃんと久々に会えて楽しかった?』
『・・・はい!とっても!』
END
今までの
コメント:
- O・K・I……前にやったな、俺。
前半ギャグかと思わせておいて(←だまされたの俺だけ?)、こうオとす。
いやはや感服いたしました。
しかし、なんか美神さんがかわいそうな気がしてきたな。
フッ、俺のような雑魚に同情されるようじゃ美神令子もお終いだな。 (魚高@12.7秒後に爆裂死)
- 初めまして、YOSIです。おキヌと横島派なので、この様な展開が、 大好きです。
特に、鈍感でスケベな横島が、たまに見せる、シリアスな所や、 おキヌちゃんの妄想癖な所が好きなので、
「ブラインド・デート再び!!」のシリーズとても良かったです。 (YOSI)
- 憑依する相手をユリ子ちゃんにする意味ってあるのかな?意味深げですな。
とか言いながら、一票入れてしまうのは終わり方が良かったからでしょう。
ところで、此処まで読んでやっと題名の意味に気付いたの私だけですか? (マサ)
- ↑だいじょぶです。私も全く気付いてませんでした(爆)
ユリ子ちゃんだと思ってたけど、精神はおキヌちゃん。……てことはユリ子ちゃんはその間おキヌちゃんの体で何をやってたんだろう?……! 近くにいたということは……つけていたのかっ!? (ロックンロール@感想の主旨がずれてるなぁ……)
- saiさん、はじめまして、kitchensinkと申します。いい雰囲気出てました、この二人(笑)。おキヌちゃんに花をあげる横島クンが良かったです(カッコ悪いとこと、こういうキザなところがあるから良いですよね、横島クンって)。 (kitchensink)
- ↑×3 ユリ子にした意味……互いに似通った外見なので、読者が「横島&(生きている)キヌのデイト」を疑似的に想像し易くなる、と云う長所が有りますね。他の人ならこうは行きませんな。
連投お疲れ様でした。本家『ブラインド〜!』の無念を晴らそうとしているのか(笑)さして大きな波乱を迎える事無くそのまま静かに結ばれたのは正直物足りなさも感じましたが、「死んでるおキヌちゃん(専門用語)に真っ当なデイト(町内限定)をさせてあげるんだあ!」と云う熱い情念は全うできたのではないでしょうか。うん、良かった良かった。 (Iholi)
- 最高です! 讃辞はいくら並べてもキリが無いくらいです。おキヌちゃんのこーゆー涙っていいですよね。
冒頭はギャグ調で始まり、シリアスなクライマックスと、事務所オチ。
何故、一切の欠損なくこれだけの内容が8.4KB(容量はテキスト換算)に入り切るのでしょうか。
もう『見事』としか言いようがありません。
そして最後の美神さんの発言。
花を愛でる方?……いえ、あれはあれで意外で面白かったですけど。
ユリ子ちゃんと会っていた事を知っていた(カマをかけた?)という事は、実は全てお見通し?……まさかねぇ。
隠し事のできない私は途中でユリ子=おキヌをバラしかけてご迷惑をお掛けしましたが、何はともあれ連作、お疲れ様でした。 (斑駒)
- 皆様御感想有難う御座います!!
>魚高様
どんなシリアスだろーが前半は必ずギャグかますGSの掟(←誤解)に忠実に作って
みました。美神さんは今回もおいしくない役回りでしたね。次回作こそ主役!?
>YOSI様
初めまして!同じ病気(おキヌ・横島)をお持ちのようで御同慶の至りです(笑)
私もこーゆー展開が好きなもので、つい書いてしまいました。
>マサ様
ユリ子ちゃんに憑依したのは、普通の人では横島がすぐ正体に気づいてしまった為、
GS女性陣では敵にこそなれ積極的に協力してくれそうな人がいなかった為、
そしてIholiさんの御指摘の通りですね。
>ロックンロール様
突然の入れ替わりを予想して、ユリ子ちゃんは近所の喫茶店や図書館で大人しく過ごしていたのです。今回はタイトル他、色々な所に原作とダブらせた言い回しを混ぜてみました。 (sai)
>kitchensink様
初めまして!横島クンが唐突に気の利いたものをプレゼントすると何だかウソくさく感じてしまい、原作の「いい薫り・・・!」を頼りにこんな感じになりました。
>Iholi様
いつも構成や表現の御感想勉強させて頂いてます!今回私の「デートさせたい!」という妄執は成就されました(笑)元プロットが小さかったのにだらだらしてしまったので物足りなくなってしまいました。精進せねば!
>斑駒様
過分の御感想有難う御座います!事務所オチはラストを原作に重ねる為、美神さんもダイニングに花が飾ってあれば気づくだろうと御登場願いました。ユリ子=おキヌに直ぐに気づいて頂いて嬉しかったです。 (sai)
- 横島とおキヌのカップルはやっぱりにあいますね。 (3A)
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