ザ・グレート・展開予測ショー

酒に情けがあったなら!!()


投稿者名:sai
投稿日時:(02/ 3/18)


で、結局。
「母さんだって鬼じゃないんだから、あんたのこと泣いて止めるコがいるなら
 考えないでもないけど・・・」
「そ、それじゃー!二人のうちどっちかが引き止めてくれたら
 行かなくていーんだなっ!?」
一筋の光明を見出したように確認する横島。

「いいわよ・・・?」
母は哀れみの微笑みで答えた。



そしてお別れパーティー。GSのレギュラー・準レギュラークラスはもちろん、
伝次郎に冥子ママまでが集まり、美神の『あ軽い』挨拶からバカ騒ぎが
繰り広げられていた。

既に八方塞がりの気配を感じて横島がおキヌにサインを飛ばそうとしていた頃、
おキヌは俯き思いつめた表情をしていた。
(・・・・!)
おキヌが喋りだす雰囲気を感じてサインを一瞬躊躇する。
「・・・・・・・・・・・・あの・・・お母さん、私・・・!」
うつむいたまま少し頬を紅くして、ゆっくり言葉を紡ぎ出す。が。

「なーに、おキヌちゃん?『私に』何か『意見』でも?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!!
びくっ!!!!
気配を感じた百合子が霊能者でもないのに美神並みの霊圧でおキヌを威嚇した。
どれくらいの圧力かってゆーと、そらもー向いに座っていたピートが
(ひ・・・!!)と小さく叫んで席を立ちかけてしまうような威圧であった。

「い、いえ・・・」
ひーん!
(こわいっ・・・!でも・・・でもやっぱり・・・ニューヨークって遠すぎるもん・・・!
 負けちゃダメ・・・!!)
物知りな弓に「ニューヨークって電車でどれくらいかしら?」と尋ねたら、
開いた口がふさがらない弓の代わりに一文字が場所を教えてくれた。
距離は忘れてしまったが、もう会えないかもしれない位遠く、ということが解った。
(・・・・・・・!そうだ!お酒飲んだら言えるかも・・・!)
手もとのシャンパングラスに目をやる。



横島は。
憑き物が落ちたような顔をしていた。
(・・・おキヌちゃん・・・・・・!)
さすがに今おキヌが何を言い出そうとしたかは解った。
3日前、母に聞かれた問い。
『・・・よーするに・・・どっちなの?』
『おキヌちゃんってコ?それとも美神さんの方?』

(・・・解ってたのに、気づいてなかったんだな)



『横島さんっ!?』
『これ・・・』
『えっ、私にですか!?』

・・・そうだよ。
『おキヌちゃん!?・・・おキヌちゃんか・・・!?』
『え・・・!!』

・・・・・・そうじゃんか。
『俺たち、何もなくしたりしないから・・・!また会えばいいだけさ!だろ!?』
『横島さん・・・!私・・・!絶対思い出しますから・・・!!』

・・・・・・・・・・あのときも。
『おキヌちゃんは俺がー!!』
『やめて!その人は私の大事な・・・!』

・・・・・・・・・・・・このときも。
『ホラ、おキヌちゃんがいてよかったろ?』
『横島さん・・・大好き!』


解ってるじゃないか。
「あのさ、母さん。・・・俺、おキヌちゃん・・・と・・・・?」
百合子に話し掛けようとしたそのとき。

「えいっ」
シャンパングラスを一気にあおるおキヌが目に入り、言葉をとぎらせた。
(あれ?彼女、酒飲めたっけ・・・?)
と思う間もなくおキヌが立ち上がり、騒がしい店内でも響くほどの大きな声で叫んだ。
「お母さんっ!!」
「はい?」
百合子も普段のおとなしいおキヌを見知っているだけに、一瞬とまどい
霊圧が落ちる。

「横島さんを連れて行かないで下さい!!」
「「「「「「・・・・・・!!」」」」」」
百合子と横島はもちろん、他にも何人かが思い思いの表情でおキヌを見つめた。
「私、わたしっ、横島さんが好きなんです!バカでスケベでも横島さんが
 いなきゃダメなんです!学校の事ならっ、ゴハンとかっ、横島さんが
 通えるようにがんばってお手伝いしますから・・・!だから・・・!!」
店内はいつの間にか静まり返っていたが、構わずおキヌの瞳は百合子と横島を
捉え続ける。
「・・・せっかく生きて・・・横島さんにまた会えたのに・・・お別れなんてイヤです・・・」
酔いと興奮で真っ赤になった顔を伏せ、長い黒髪で隠れた瞳からしずくが伝う。
日頃大人しい分か、激した感情は止まらない。顔を伏せたまま肩を震わせ小さく嗚咽
を繰り返すおキヌ。

(おキヌちゃん・・・!!)
立ち上がろうとする横島を、百合子がそっと制す。
ややあって、ふっと百合子の表情が和らいでおキヌに声を掛けようとしたとき。

ぴた。

と、おキヌの動きが止まった。
「?おキヌちゃん」
百合子がおキヌに近寄ってみると、閉じた瞳に静かな呼吸音。
「・・・・・・・このコ、立ったまま寝てるわ」
だああっ、と店内の張り詰めた空気が切れる。
やれやれといった感じで美神が口を挟んだ。
「ま、そんなワケだからさ、お母様。横島クン連れてくはちょっとカンベンして
 もらえないかしら?どこが良いんだか解んないけど悲しむコがいるのよね」

百合子はにこっと母親の笑みを浮かべた。
「ええ、おキヌちゃんに免じて今回はあきらめますわ。
 もしそんなコがいたら連れてかないと忠夫とも約束しましたからね」

それに、と続ける百合子。
「他にも引き止めたさそーな人がいるようですし、」
チラッと美神を見やり、続けた。
「仏罰とか霊障とか貧乏神の呪いとかに遭ってもイヤですしね」
「「「「え、」」」」
小さな声だったにも関わらず、ツノの生えた女性と自前の机を持ち込んだ女性と
おさげの女性が反応していた。
霊能力の違いからか、特にツノの女性と同卓の鬼門・天竜童子の消耗は激しく、
三人テーブルに突っ伏して息も絶え絶えの有様であった。



パーティーは本旨を失い、また時間もほぼ終了時刻であった為お開きになった。
「忠夫あんた、おキヌちゃんを送ってらっしゃい」
「あ、ああ。」
「こっちはもうちょっと宴会やってくわ。ね、美神さん」
「え?私は・・・」
突然振ってこられた美神はちょっと戸惑った。
「いいじゃないの、私は明日N.Y.に旅立っちゃうんだし。今日くらい・・・ね?」
言外の言葉をウインクに込め、百合子が誘う。
「・・・・・・ま、いいか。じゃ、横島クン!いつもおキヌちゃんにはお世話になりっぱなし
 なんだから、こんなときぐらいは世話すんのよ。夜中には私も帰るからね!」
それだけ言って、美神は百合子・冥子・西条らと消えていった。



酔いつぶれて眠ってしまったおキヌを背負い、夜道を歩く。
(あの時と一緒だな・・・)
『もうかなわない恋じゃないぞ!』
あのときは西条にからかわれたっけ。

『行っちゃやだ・・・』むにゃ・・・
(・・・・・!)
夢の中ではまださっきの続きなのだろうか。彼女は百合子の結論を聞いていないのだ。

「・・・どこにも行かないさ。そばにいるよ・・・!」
振り向き、たまにしか見せない優しい笑顔で呟いた。

夢と現実の間の暖かいまどろみに揺られて、おキヌは横島の声を聞いていた。
(・・・きっとあなたにめぐり逢うため・・・私は地上に来たの・・・)
そんな事を想い、横島の胸に廻した手にほんの少しだけ力を込める。

「横島さん・・・大好き」
呟き終えたとき、おキヌは横島の胸に抱き止められる夢の中へたゆたっていった。

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