ザ・グレート・展開予測ショー

おつきさま。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 3/17)

月。
本来は、狼へ力をあたえる源と言っても過言でもないそれ。
人狼は月を神聖なものと見、まず、それに禍々しさなど感じることはありえない。
きいろくあたたかいおつきさま。
自分たちにちからをくれる―もの。
それが彼女にとってのおつきさまである。

だがたった一回だけ
禍々しいものとうつったことがある。
記憶にあるのは赤い血、匂い、どろりとした感触。
きらりと鈍い光を放つ主を失った―柄。
もう父親ではないもの。
ざわつく声
そして―いつもと同じように輝く月。

その日はなんでも無い日だった。
大人たちはいろいろ忙しそうに動いていたし、父親もなんだかせわしなさそうだったが、そんな事は子供には関係なかった。
それでも、父親のその普通とは言いがたい様子が気になるのかその子供―シロは朝餉の時間に問う。
「ちちうえ」
木目の椀をもちシロ。
「ん?なんだ?シロ」
響きのある声で父親は返事をする。
その声音は深く、柔らかくそして強い。
シロは椀をくるくる回ししばらく躊躇っていたようだが、くいっと顔をあげ―
「なにか、あったでござるか?」
と聞く。
本来なら自分はこーゆう事柄を聞いてはいけない。
それはよくわかってる。
大人たちは大人たちの考えがあり、そしてそれは聞いてはいけないことなのだ。
言う必要があることならば、ここの里の人間ならばいう。
それを言わないということは、知ってはいけない―いや知ってもどうしようもないということだろう。
だが、それでも気になったのだ。
最近父親は夜外にでる、毎日。
―しかも真剣を持ち(霊破刀が使えるのに、更にその霊力を倍増させる媒体としての刀をである)戦闘さながらの気迫をみなぎらせ。
これがおかしくないはずはない。
さんさんと朝の日差しが差し込む食卓のなか、シロはじっと父親を見る。
父親も、そんなシロの視線を受け止める。
―穏やかな朝の時間
そうしてどれくらいたっただろうか?
ふいに父親の唇の形が笑みへと歪んだ。
「聞きたいか?」
とは父親。
「はい」
その瞳はずっと前を向いている。
「―そうか。…今夜教え様」
穏やかに笑いいう。
シロは嬉しげに頷いた
これで自分がなにができるわけではない
だが、知っている事によってどんなささいな事でもこの父親のために役にたてるかもしれない!
そう思うことはシロにとってこの上ない喜びだったのだ。

だが結局シロは父親の役には立てなかった。
―それが、最期に交した言葉だったのだから。
約束は、かならず守ってきた父親の唯一守れなかったもの。
ちちおやが教えてくれるであっただろうことは、父親の亡骸の前でいるひとたちの言葉ではからずも知ってしまう。

血が逆流するかと思った。
くるしくてくるしくて―
なのに何故か頭のどこかはさえざえとしておりそこは言う。
討たねば―と
敵を―
守らねばともいう。
父親は、守ろうとして殺されたのだ。
宝としてのあの刀を
ならば
守らねば―
それは、無事に帰すことではない
使わせないことだ、父を殺した相手にそれを。
壊れようが砕け様がそんなことは、どうでもいい。
ぐっと拳を握る
爪が皮膚を食い破ってだらりと血が流れいく。
今日は満月だ
身体がたかぶっており血の巡りもはげしい。
シロはそっと空を仰ぎ見る

月は人狼にちからを与える
なのに、なぜ、ちちおうにはちからをあたえなかった―!!
その言葉を、叫びをむりやり飲み込み、シロは、なにか禍々しいものをみるかのように、月をみた。
―この日、村から一人の子供が姿を消した


そして―出会いのときがくる。

「ししょー」
「こんのばか犬っ!」
おわり

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