破滅の歌 終章の三 〜得ることは〜
投稿者名:S・R
投稿日時:(02/ 3/16)
はーーーー・・・・間を置きすぎたのう。
皆様覚えていらっしゃいますでしょうか、S・Rです。
ネットゲームって怖いなー、とかいいつつもう始めちゃいます。
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『……これなら、美神除霊事務所に手を回す必要もなかったようですね』
横島は、構えを直す。どんな事を言っていようと、目の前のこれは「敵」だ。
『どうしました?……かかって、来ないんですか?』
余裕すら見せて言い放ったが、
(霊波が、弱い……)
罠なのか、実力を過信しているのか、相手は余裕を崩さない。
「へっ、言われんでも!」
横島が大地を蹴って、同じく相手も飛び掛ってきた。爪が振り下ろされる。横島も
霊波刀で相手を切りつける。
一瞬の攻防。
相手が、血を噴出しながら倒れた。
横島は振り返り、止めを刺そうとして、
『お見事です。依頼、完遂ですね。報酬は私の家にありますので、好きなだけどうぞ』
「何言ってんだ?気でも触れたか?」
口から血を吐きながら言う相手に近づいていった。
『まだ、分かりませんか?……あなたが倒してきた者を見て御覧なさい』
怪訝に思いながら、さっき倒した悪魔の死体を確認した。が、
「!これは村の……!?」
『そう、私の娘……を、演じていたものです』
「お前ら、何をした!?」
『何もしてはいませんよ。元からです。ただし、子供たちだけは本当に人間ですが』
「……聴かせてもらおうか」
『構いません。むしろ、そう頼むつもりでした。……そう、あれは──』
10年前。魔界でそこそこに名の知れた盗賊団があった。
あるとき、魔界でもかなりの危険度で知られる迷宮の盗掘をして、そこの守護者に
返り討ちになってしまった。
メンバーの一人が空間移動能力を使い危機を脱したものの、残ったのは20数名、
全員が瀕死という失態だった。
テレポート先を適当に指定したため、着いたのは人間界の集落の近くだった。
幅広く盗賊家業をやっていただけあって、全員が『擬態』『記憶操作』などの能力
を習得しており、ちょうど自分たちと同じ人数分いた大人を殺し、すげ変わることに
成功した。
しかしメンバーは失敗により肉体的、精神的に疲労しきっており、療養には結構な
時間を要した。
人間界で生活するため、まず瘴気が必要だった。数種の麻薬を改造、複合して使う
ことにより、それと同じようなものを作ることができた。
次に霊力。これは、回復の早かったメンバーに囮となってもらい、GSを呼んで狩る
ことにより摂取した。
村の暮らしにも慣れ、傷もいえてきた頃、一人がこういった。
「ここで、暮らしたい」
と。失敗の前なら考えられなかったことだが、今ではほとんどの者は同じような考えだった。
反対する者もいたが、殺した。
『こうして私たちはここに住み着くことになりました。子供たちが大人になると、
私たちが「命の草」と称して吸っている瘴気を吸わせねばなりませんので、成長しない、
そしてそれを不思議に思わない呪いをかけて。
……しかし、それももう終わりです。呪力維持のための霊力摂取も、限界でした。
私たちが精神的に貧弱になってきたからです。今では全盛の一厘にも満たない霊力で、
ぎりぎりで狩りをしていましたから』
「…………」
『そろそろ、私の命も尽きます。最後の頼みを、聞いてくださいますか?』
無言で、肯いた。
悪魔は一瞬にして村長の姿に『擬態』し、そのまま死んだ。
安らかな顔をしていた。
横島は頼まれたとおり全員分の墓を作り──かなりの時間を食ってしまったため、
朝日が昇りそうだった──、村にある自分の荷物をとりに行った。
(知らせる、べきだよな)
信じてはもらえないだろうが、子供たちには知る権利がある。
木の枝を掻き分けながら、村に着くと、数人の子供がすでに仕事をしていた。
「あ、私のおとうさんとおかあさんしりませんか?」
その質問には答えず、子供たちを全員集めるように頼んだ。
10分ほど後。広場に子供たち、すなわち全住民が集まった。
「みんな、聞いてくれ。実は」
とんっ、と、横島のののどから鎌の先端が見えた。首の後ろにある柄は黒く、禍々しい
装飾が飾っていた。
その鎌を投げた少年が言う。
「だまされるな!僕らの父さんや母さんはみんなそいつに殺されたんだ!
埋めてるのを見たぞ!この……悪魔め!」
刺さった鎌を抜き、めったざしにする。心臓に突き刺さったところで、糸が切れたように泣き出した。
他の子供も、親が死んだとの事でパニックに陥り、広場はしばらく混乱していたが、
やがて墓を見つけ、事実として認識した。
一人がこういった。
「この村にはもう僕らしかいない!僕らが『おとな』としてここを守るんだ!」
復旧が始まった。
使えるものはないか探しているとき、倉庫に大量に詰められていた草を見つけた。
躊躇うものもいたが、「もうおとななんだ」という意見に従い、めいめい親のパイプを持ち出して、吸い始めた。
最初は激しい嘔吐感に襲われたが、おとなになる為なら、耐えられた。
草は、もう作り出すことはできなかった。
一ヵ月後、この村は、
to be continued.
今までの
コメント:
- 続きは美神さんたち(+一人)の話です。 (S・R)
- 子供ってコワいですね〜。殺人鬼は墓なんか作らんだろうに理由も聞かずに…それもあの横島くんをいともアッサリと。
でも死と隣り合わせの仕事ですし、相手が子供では横島くんはどうしようもないですね。
しかしこの村人たちは死にたがっていたということでしょうか? それとも村長の一存……?
あと横島くんの奥さんが後から駆けつけるという話は……?
次回、美神たちは一つの破滅の形を目の当たりにするわけですね。横島の死が物語にどういう結末をもたらすのか期待します。 (斑駒@御初)
- 横島の愚鈍なまでの優しさが生んだ悲劇ですね。しかし、この子供たちは本来あるべき自らの姿を正しく把握しているのでしょうか。この悲劇が、子供故の見解の狭さから来ているのだとすれば、本当にこれ以上の悲劇はありませんね……
成長しない呪いというのは、精神すらもそのままに留めておくという呪いなのでしょうか。そして、それを不思議に思わないということは、子供の精神をアンバランスな状態に引き擦り込み、それが、今回の悲劇をもたらしたのでしょうか……
続きを待ちます。 (ロックンロール@今回はちょい真面目に……)
- あれ、今回は半角なんですね、さ〜でぃんろ〜の旦那(笑)。
しかしまあ、何とまあ、かくもあっさりと……言葉が出ません。
そして美神に手を回したと云うのは、次ですかね? ともかくも次回以降を見ないと判断が下し難いので、今回は中立です。 (Iholi)
- 遂に横島が死亡。
原作の頃から思っていたことですが、つまりはGSという仕事はこういうものな訳ですね。文字通り命を賭ける仕事である以上、賭けに負ける日が来ることもある。
次回からは事務所メンバーの方に話が移るようですが、この時点においての彼女達が横島の死をどう受け止めるのか、興味は尽きません。
個人的には、横島が本物の悪霊化して、その処遇に対しての意見の違いで彼女達が真っ二つの割れるなどという展開を少しだけ期待していたり(笑) (黒犬)
- 黒犬さん、恐るべし・・・(意味深?) (S・R)
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