ザ・グレート・展開予測ショー

ブラッディー・トライアングル(3)


投稿者名:tea
投稿日時:(02/ 3/16)


 怒気と敵意と殺気がたっぷりと篭ったエミの声に、ピート以下二人が呪いを掛けられたかのようにその場で化石化した。
 だが、アンの耳には雑音程度の効果しかなかったようである。アンはエミの方を振り向くと、少し驚いたような顔をして言った。
「あなただれ?いつからそこにいたの?」


ぴきっ


 どうやら、完全にアウトオブ眼中だったようだ。エミの額に青筋が浮かび、握り締めた拳がわなわなと震え始めた。
 が、愛する男の前では子猫にも淑女(?)にもなれるエミのしたたかさが、エミを精神の崖っぷちで踏みとどまらしめた。流石と言おうか。
(落ち着くのよ、エミ。ここで教会を破壊しては、ピートへの好感度が大幅にダウンするじゃない。ここは大人の余裕で・・・)
 エミはくるりと回れ右して深々と深呼吸をした。そして、彼女の本性を知ってる人間が見たら鳥肌モノの笑顔で、改めてアンと向き直った。
「いい?ピートはね、ずっと前から私が目ぇつけてるワケ。あんたみたいなケツの青いガキンチョなんか、今更出る幕はないワケ。お分かり?」
 大胆且つ挑発的なエミの発言に、ピートは頭を抱えたくなった。これでは火に油、もとい山火事にニトロである。案の定、今度はアンが怒も顕わに立ち上がった。
「うっさいわね、それはこっちのセリフよ!オバサンは引っ込んでてよ!!」

お・・・・・・

 聞き慣れない単語に、一瞬エミの脳がシャットダウンした。しかし、それもゼロコンマ何秒かの話。やがて大量のアドレナリンと共に、アンの吐いた単語が脳内に重〜く木霊した。

オバサン・・・・・・・!?

 深海の底の如き静寂が教会を支配する。ピートは顔中に脂汗を滴らせ、横島は顔面蒼白になり、唐巣は手に持ったティーカップをかたかたと震わせていた。
 不意に、唐巣の手からカップが滑り落ちた。汗で滑ったのか、持つ力もなかったのか。おそらくは両方だろう。
 重量に従い落下したティーカップは、狂おしい音を立てて粉々に砕け散った。
 沈黙というものは、何か一つきっかけがあれば簡単に破られるものである。唐巣には、カップの割れた音が破滅を示唆する天の啓示のように聞こえて仕方なかった。

「こ・・・んの小娘ぇ!!どうやら、本気で死にたいらしいね!!」
 エミが、腰に差していた愛用のブーメランに霊波を込めて、神通昆の要領でアンの脳天目掛けて打ち下ろした。自重、などという語句は忘却の彼方に置いてきて。
 アンは机についた手をバネにし、高く跳躍してそれをかわすと祭壇の上に着地した。だが、それを見透かしたように、エミのブーメランが牙をむいてアンに襲い掛かってきたのである。
 元々呪術師は近距離戦は得意としない。わざとアンに逃げ場を残し、自分の得意なフィールド、即ち遠距離戦に引きずり込んだのである。
 だが、遠距離を得意とするのはエミだけではなかった。


ドンッ!!


 アンはスリットの隙間に手を入れると、腰に携帯していた拳銃を素早く抜き構えた。そして、早撃ちの要領でエミのブーメランを打ち落としたのである。 
 撃墜されたブーメランはエミの元に跳ね返り、失速して教会の床にからんと落ちた。霊力でコーティングされていたため、傷付いたりはしていない。
 呆気にとられたエミだったが、すぐに気を取り直しブーメランを拾い上げた。銃刀法違反だなどと生っちょろいことを言うようでは、美神のライバルは務まらない。
「成る程、一筋縄ではいかないってワケね・・・」
「あんたもね。悪いけど、ここで排除させてもらうわ」
 エミが不敵な笑いをアンに向ける。それを受けて、アンもエミの方をきっと見据えた。 女同士の血みどろの戦いが、正に今始まろうとしていた。

さて、その時男連中は・・・?
「おいピート!元はお前が原因だろーが、命張って止めてこいよ!」
「ムチャ言わないで下さい!いくら僕がバンパイアでも、死ぬ時は死ぬんですよ!?」
「ピート君、早くなんとかしてくれ。でないと、私の教会があぁぁ〜・・・」
 教会の隅っこに避難して、子猫のように丸まって小鳥のようにピーピー騒いでいた。つくづく情けない連中である。


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