ザ・グレート・展開予測ショー

動揺そのよん


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/ 3/ 8)

「夢中………ですか?」
俺が?美神さんに?
首をかしげ横島。
そんな事いわれてもとその表情が言っている。
横島は、美神が好きだ。
―もちろん親愛のそれではなく、恋愛感情のそれとしてである。
その容姿も、ひねくれた性格も、プロとしてその力もすべてひっくるめて好きなのだ。
まあ容姿や仕事の能力に惚れるというのは、わかる。
どちらも常人よりとびぬけて高いもので、人をひきつけるに値するものだから
だが、あのろくでもない性格をも横島は好きだと自覚しているのだ。
あれだけ傍にいて痛い目をみたとしても(自業自得もあるとしてもだ)―なのに好きだというのを自覚している。
あばたもえくぼというが、それにしても、である。
これを夢中といわずになんといおうか?
だから、美神が何故今更この言葉を口にするのかわからなかった
「元々俺は、美神さんに夢中ですけど?」
さらり
となんの意図もなく零れる言葉。
横島は、それこそ顔色も変えずにあたりまえのように言葉を紡ぐ。
そう、夢中で好きなのだ。
だから一直線にアクションを起こす事ができたのに―
なのに、何故だろう……いまは妙なものに囚われて動けない。
それは、より「夢中」へとより「好き」へと感情が深くなっているからなのだが
この男が気付くわけもない。
美神は、この言葉を聞くと満面の笑みをうかべる。
やわらかい、この女性には珍しい花のような、笑顔。
「わたしだって、もうこれでもかってくらいアンタの傍にいると、心臓煩いわよ?腕だってまだまだだし、年なんか三つも下だし、ハンサムでもないし、かといって性格がいいわけでも、かねもってるわけでもないし、これぽっちも好きになる要因なんぞ無いのに横島くんに、夢中だし、―それに、」
少し低めのアルトの、やわらかい声。
そして至近距離からのとどめの一言
「わたしがこんなに近くにいるのを許してるのはあんただけよ」
こんな息のかかる距離で笑うことを許すのはたったひとり―
これは、ある意味『愛している』というよりも熱烈な告白かもしれない。
「俺だけ?」
まるで、宝物のようにその言葉を大事に、反芻する横島。
―傍にいるのも、触れることができるのも自分だけに許されたこと。
ただ一人、こんな近くで笑うことを許してくれた。
「そう、横島くんだけよ。だからもうちょっとその権利利用しなさい」
笑顔のまま美神はいう。
「何しても怒りません?」
おそるおそる母親の機嫌をうかがうように横島。
「怒られるようなことをしたら、怒るわよそりゃ」
くすくすと笑いを漏らし美神。
「やっぱそうですよね」
その言葉に横島はうなだれる。
「―嫌いにはならないから」
はたとその言葉に顔をあげる。
「そりゃ怒るし、嫌だし、もちろん蹴るし殴るけど―それくらいじゃ横島くんのこと嫌いにならないからさ―だから」
傍にいなさい。
つづく
明日は裏です(わかるひとだけわかってもらえると…うれしいかな?

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