ザ・グレート・展開予測ショー

君がいるだけで(26)


投稿者名:JIANG
投稿日時:(02/ 3/ 8)

(26)
 横島たちの家族が空港の出口を出てしばらくすると、大型4WD車が近づいてきた。
 大樹が手を振って合図しているところからこれが社用車らしい。
「なんだよ。社用車で来たなんて言うから、高級車が来るかと思っていたら、4WDじゃ
ないか」
「ここじゃあ、街を外れたら舗装した道なんかないからな。高級セダンなんかに乗ってた
らすぐにつぶれちまうんだよ」
 文句を言う息子に大樹がバカにしたように言葉を返す。
「まじかよ……。とんでもねえところだな。しかも、国際空港だっていうのに周りはジャ
ングルだらけで、街が見えねえじゃねえか」
 横島が言うとおり、空港の周りには道が一本あるだけであとはジャングルが生い茂って
いるだけである。
「文句ばかり言うな。30分も車を走らせれば街にはちゃんと着く。それよりも俺の自慢
の秘書を紹介してやる」
 大樹は車から降りてきた春桐をうながして、息子の前に立たせる。
「彼女が俺の秘書の春桐魔奈美くんだ。どうだ、支社長にもなるとこんな美人で有能な秘
書が着くんだぞ。羨ましいか、忠夫」
 わははははは、と豪快に笑いながら自分の秘書を自慢げに紹介する。
 横島は父親の自慢げな顔を見てケッというふてくされた顔で、そっぽを向いたまま彼女
が「春桐魔奈美です」と自己紹介するのを聞いていた。
 しかし、車に乗り込むことになった時に、春桐魔奈美という名にピンと来て改めて父親
の自慢の秘書を見た。
「あ、あんた……!! 春桐って!? あれ、ワル………ウグッ!?」
 春桐…ワルキューレは横島の表情が変わるのを見ると隣にいたのを幸いに、すばやく片
手で口をふさぎ体を入れ替えて、横島の顔が大樹たちから見えないようにする。
「あら、どうしたのかしら顔色が悪いようですけど……(しゃべるな、横島。)」
「うん!? どうかしたのか忠夫は……」
 大樹と百合子はちょうど車に乗り込もうとして、春桐が息子にしたことを見ていなかっ
た。
「あ……支店長、息子さんの様子がちょっと……やはり長時間拘束されていた影響で体調
が悪いみたいですわ」
 そして横島の腹に素早く当て身をくらわせる。
「グゥ……!!」
 たまらず横島は地面に片膝を着く。それを春桐は心配そうな様子を装いながら顔をのぞ
き込みながら小声で(しばらく、動かないでいろ)と言う。
 それに対して横島は、動くどころか、腹を打たれたために、文句を言うこともできない。
「なあに、忠夫。だらしがないねえ……。さっさと立ちな」
 母親のこの言葉に(冗談を言うな!)といいたいところだが、「うががっ」とうめき声
にしかならない。
「しばらく私が息子さんの様子を見ますから……先に車にお乗りになっていて下さい」
「そう、悪いわね。でも、あまり、甘やかせないようにね」
 春桐の言葉に大樹たちは先に車に乗り込んだ。
「よし横島、そのまま休んで聞け」
 鳩尾を打たれて脂汗を流している横島に、ワルキューレは気にした様子もなく、先程の
丁寧な口調とはうって変わった、命令口調で話しかける。
「おまえが今ここに来たことにより、予想外の事態になっている。まさかおまえが支社長
の息子だったとは思いもよらなかったのでな。ましてや、単独でここに来ることなど全く
の考慮外のことだ。とりあえず、しばらくは私と一緒に行動してもらうぞ。もしかしたら
おまえにも手伝ってもらうことがあるかもしれんからな。詳しい説明だが今この場ではま
ずい、あとで話すことにする。それから当然のことだが私が魔族ワルキューレだというこ
とは両親を含め他の人間たちには他言するな。それで良いな」
 一方的にまくし立たワルキューレが横島を見ると未だに鳩尾の辺りを押さえてうめいて
いる。
「貴様、人の話をちゃんと聞け!」
 そんな横島にワルキューレは容赦のない罵声を浴びせるのだった。

*** つづく ***

関係ないと思われる話でも一歩一歩物語は進んでいます(言い訳)
いまいち、春桐とワルキューレの書き分けが出来ていないな。
もう少し性格にメリハリをつけないとわかりづらいかなぁ。
さて、次回はどうしたものか(苦笑)

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa