昔話
投稿者名:ASK-YOU
投稿日時:(98/ 9/28)
昔々、とある村に、ひとりの飴屋がおりました。
飴屋は大変な働き者で、店はとても繁盛していたそうです。
ある日の夜のことです。
いつものように飴屋が閉店後の片付けをしていると、店の外で扉を叩く音が聞こえてきました。
「(誰だ、こんな夜中に)‥‥はいはい、今開けますよ」
飴屋が店の扉を開けると、そこには白装束の女が立っていました。
『――ここって、飴屋なの?』
「(ガバッ!)お姉さん! 一生ついて行きます!」
条件反射的に飛びかかろうとした飴屋を、女はヒジで迎撃します。
『(ゴキッ!)ジャマしたわね! それじゃ!』
「(痛てててて‥‥)ごめんなさい。ごめんなさい。ここは飴屋です!」
『‥‥そうなの? じゃ、アメを貰うわ』
「何に致しましょう?」
『え〜と。これとこれと‥‥。そうね、これも貰おうかしら?』
「へい、全部で36文になります」
『(ギロッ!)アンタ、客に向かってセクハラ働いた上に、代金まで取ろうっていうの?』
「え? いや、こっちも商売ですから‥‥。でも、多少は勉強させて頂きまして‥‥」
『1文! これ以下には負からないわ』
「ちょ、ちょっと待って下さい。それじゃ、この店つぶれて‥‥」
『とにかく1文よ。――それとも、ウチの子供を餓死させようっての?』
「いえ、決してそんな‥‥」
『それじゃ、決まりね』
「毎度‥‥(しくしく)」
『‥‥ここって結構良い店ね。値段は安いし、店員は親切だし。――また買いにこ〜ようっと♪』
「(頼むから、二度とこないでくれぇ)」
女はにっこり笑うと、夜の通りに消えて行くのでした。
そして、次の日の夜中に、また女はやってきました。
『ごめんくださ‥‥。なによ、客に向かってその態度は?』
「――いいえ、別に」
『ま、いいわ。じゃ、またアメを貰おうかしら‥‥。そうね、これだけ頂戴』
「へい。全部で16‥‥。い、いえ、1文です」
『よろしい。じゃ、お代』
「‥‥随分錆びた銭ですねぇ」
『なによ、文句あるっていうの?』
「全然まるっきり微塵も御座いません!」
『そう、じゃあね』
女はにっこり笑うと、夜の通りに消えて行くのでした。
その後も、毎晩同じ時間になると、女はきまって飴屋にアメを買いにきました。
そして、女が飴屋の前に現れるようになってから、6日目の夜のことです。
『ごめんください‥‥』
「はいはい。‥‥あれ、どうしたんです? 元気ないですね?」
『‥‥アメちょうだい』
「どうぞ、ご自由に‥‥」
『それじゃ、これだけ貰うわ』
「‥‥でも、これだと1文ですよ?」
『分かってるわよ! ――それとも、売ってくれないの?』
「決してそんな‥‥。はい、どうぞ」
『ジャマしたわね。‥‥それじゃ』
「へい、毎度」
夜の通りを歩いて行く女を見送りながら、飴屋は女の様子がいつもと違うことを不審に思いました。
そこで、飴屋は気付かれないようにそっと女の後を追いかけるのでした。
飴屋がつけているとも知らず、女は路地を抜け、村外れの方へゆっくりと歩いて行きます。
そして、村外れの墓地まで来ると、女はすっと姿を消しました。
「?」
飴屋はあわてて女が消えた場所を探します。しかし、女は見つかりません。
――と、近くの墓石の陰から、何か物音が聞こえてきました。
飴屋が近寄ってみると、そこには裸の赤ん坊がひとりで泣いていました。
「(‥‥捨て子か? かわいそうに)」
飴屋は赤ん坊を抱き上げます。
「おお、よしよし。‥‥おまえ、母さんはどうしたんだ?」
赤ん坊は火がついたように泣いているだけです。
「(しょうがない。なんでこんな所に居るのか知らんが、とにかく連れて帰ろう)」
そう思い、赤ん坊を抱いたままその場を立ち去ろうとした飴屋の前に、見覚えのある白装束の女が現れました。
「あんた‥‥。この赤ん坊は、あんたの子供か?」
女はこっくりとうなずきます。
その両足が半ば消えかかっていることに、飴屋ははじめて気が付きました。
「‥‥あんた、幽霊だったのか!」
『びっくりしたでしょう?』
「‥‥」
『私はね。この子を産む前の日に、事故で死んじゃったのよ‥‥』
『それで、私が棺桶に入れられた後にこの子が生まれちゃって‥‥。死んでる私の身体じゃ、この子にお乳を飲ませてやることもできなくて‥‥』
『仕方なくこうして幽霊となって、毎晩アンタの店に、この子にしゃぶらせる為のアメを買いに行ったって訳よ』
「‥‥」
『三途の川の渡し賃の6文ぽっちじゃ、この子に充分なアメをあげられる筈無かったんだけど、アンタの店から沢山アメを貰えて本当に助かったわ。‥‥ありがとう』
「‥‥」
『それでね、迷惑ついでにひとつお願いがあるんだけど。――悪いけど、身寄りのない子供の世話をしてくれるっていう村の神社まで、この子を連れていってくれないかしら?』
「いや、それは構わないが‥‥」
『本当に、ありがとう。これで私も心残りなく成仏できるわ‥‥』
女はにっこり笑うと、ゆっくりと消えて行くのでした。
そして、翌朝。
いつものように店の前を掃除する飴屋の背中には、すやすやと眠っている赤ん坊の姿がありました。
「ちぇ、結構いい女だったのになぁ‥‥」
ホウキを動かす手を止め、赤ん坊の寝顔を覗き込みます。
「母親は別嬪さんだったから、きっと綺麗な娘になるぞ!」
『あったり前でしょ。私の娘なんだから!』
「‥‥ど〜してあんたがココにいるんだ? 成仏したんじゃなかったのか?」
『どうも、霊体がこのままの形で安定しちゃったみたいで、全然成仏できないのよねぇ。――あははは』
「そんなアホな‥‥」
『それでさぁ。本当に悪いんだけど、成仏するまでしばらくアンタの店に置いて貰えないかしら?』
「‥‥‥‥(汗)」
さて、この時の赤ん坊は、後に土地神を鎮める為の人柱になるのですが、それはまた別のお話。
――どっぺん。
<BR>
どうも、ASK-YOUです。
ええと。
この話の元ネタは、1巻「極楽宇宙大作戦」のラストでおキヌちゃんが言っていた「アメで子供を育てる幽霊」です。
参考資料は、
「ここ」と
「ここ」と
「ここ」
にあります。合わせてご覧下さい。
あと、皆様もすでにご承知とは思いますが、この話には「美神令子」と「横島忠夫」は一切登場しておりません。――念のため。
今までの 賛成:10 反対:1
コメント:
- 賛成に入れようと思ったんですが、疑問点が出たんで。
これだと「子守歌」を誰から聞いたのかが解りませんよね?私としては大事だと思う
んで、絡めて欲しかったです。それとせっかくの美談付きの出生の秘密があるのに、若
い身空で人身御供というのは、む、むごいです。いえ、面白かったんですよ、ホントに。
ところで横島と美神、本当に出てないんですか?(笑)
(ホーエンハイム)
- 確か、GSの世界では普通の幽霊は物に触れる事は出来なかったはず。
それとも、その女の人は、生前はそれなりの霊能力者だったから物に触れられるって事なのでしょうか?
だったら、本編での彼女の霊能力についてのつじつまも合ってるし、けっこうあり得る話かも?
「子守歌」については絡めて欲しかったけど、
とにもかくにも、面白かったんで賛成一票。
(「スリーピング・ビューティー!!」が見たくなってきた・CSU)
- もとになった昔話、よく知ってます。
昔話大好きなんですよ。
飴で赤ちゃんを育てるお話というのはほかにもいくつかあって、
雪女の伝承と絡めたものもあるとか。
新たな昔話としても、この作品は最高です。
(shinsho)
- 本当に「横島忠夫」&「美神令子」が登場していないのかは論議の余地がありますが、背景のバランスがとれた趣のある作品ですね。赤ん坊の名前も気になるところですが、子守唄はやはり「母親」が唄ったのではないでしょうか?人柱になる前の彼女(物語中では性別を表す表現はなかったと思いますが、人柱は女性という慣習から判断しました(笑))には霊能力は全くなかったという事実はありませんし、赤ん坊の夢の中で母親が唄って聴かせたというのであれば、「誰が唄っていたのか分からない」という記憶の曖昧さを裏付けることにもなります。
なんて口上をたれる必要もない落ち着いた噺を創ってくれたASK−YOUさんに感謝。
(Chon)
- めっちゃええ話やわぁ。おっちゃん、感動してもうたでぇ。
子供のころに聞いたことのある昔話を見事にアレンジしてますね。
登場人物についてはその性格をあらわす表現が殆どないのに誰だか想
像できるのはさすがです。まあ、このコーナーに投稿しておきながら
全く関係のない話という訳がないというのもありますが。
Chonさんの発言にある「母親が幽霊だったから子守唄の主が誰だか覚
えていなかった」っていうのは、ある意味筋が通っていますが、母子
そろって幽霊というのはなんだかなあ、という気もします。
(コーディ)
- なんか良い雰囲気のお話ですね.
GS美神ってこういう話もベースになってるんだなぁと思わせてくれる一品(笑)です.
俺としては,今,このタイミングで,第一巻を静かな気持ちで読むチャンスを与えてくれたことに感謝してます.
ありがとうございました.
(Turbow)
- うーん、美神さんも横島も出てない。これってGSじゃない・・・筈だけどGSなんです
ね。しっかりと。こんな表現方法もあったのか・・・
(メカ音痴)
- いいですねー、こういうお話。
どたばたギャグやバトルだけがGS美神じゃないって事を思い出させてくれます。
たまにはこういう雰囲気を味わうのも、ね。
(荒田 影)
- なかなかのアイディアだと思います。
しかし、母親の性格が全く遺伝してませんね(それでよかったんだけど)。
それに、こんな性格の母親があんないい子守歌を歌うんだろうか...。
赤ちゃんに向かって「いい、この世はお金が全てなのよ」とか言ってそうな気がする
んですが。
ところで、昔やってた「来々!キョンシ−ズ(だったかな)」の主人公のテンテンも
死んだ母親から生まれてきたという設定になってましたね。
テンテンはそのせいで強い霊力を有することになったから、もしかしたらこっちの子
も...とか思うんだけど、才能がなくで300年間...。うるうる(涙)。
(西久保)
- どうも。ASK-YOUです。
――まさか、この話の反響がこんなに大きいとは思って無かったので、ちょっとびびってます。
長編どころか短編・小ネタ話すらマトモに書けない人間が、それでも一生懸命作った話だったので、皆様のコメントは涙が出る程うれしかったです。
本当に、ありがとうございました。
さて、この話の疑問点について少々。
まずは、例の「子守唄」のコトですが。――すっかり忘れてました。スイマセン。
それと、どなたも指摘されてませんでしたが、赤ん坊の「本当の父親」ってのは一体誰なんでしょうか? (←すっかり他人事)
(ASK-YOU)
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