ザ・グレート・展開予測ショー

八年後物語


投稿者名:NGK
投稿日時:(02/ 2/13)

第六話:今

すーすー
横島は変な体勢のまま眠っている。
くすっ
それを見て令子は微笑んだ。
朝起きたら自分が横島に抱きついたまま眠っていた。
「!!!」
突き飛ばしてみたものの横島は目が覚めない。
そこで令子は昨日のことをおぼろげながら思い出した。
顔がほんのり赤くなる。
令子はちょっと魔がさした。
すなわち・・・キスしてみようかと。
「(ね、寝ているし、だいじょうぶよね・・・)」
「お姉ちゃん!!おはよう!!」
扉が ばん! と勢いよく開いた。
「今日もいい朝だね!!」
令子はかなりビックリしながら、
「そ、そうね・・・」
と言った。
「???」
ひのめは令子の顔を じっ と見た。
そして、
「・・・もしかして、お邪魔だった?」
姉の顔が赤くなる。
それを見てひのめはうんうんとうなずいて、
「これでお姉ちゃんも三十までに結婚できそうね!!」
「ほっとけ!!」
ひのめは令子の叫びを気にも留めずに横島に歩み寄ると ぺしぺし と叩いた。
「ただちゃん。起きて。そんなところで寝ていたら風邪引いちゃうよ」
横島は起きない。
「・・・目が覚めないヒトにキスで目を覚ませるということもあるよね・・・」
そう言うが早いがひのめは横島に・・・
「やめなさいっ!!」
令子はひのめを腕に抱えると自分のくちびるを横島に・・・

「ここはどこだ・・・」
横島は辺りを見渡した。
たしか、美神さんの部屋で・・・
「あ、そうか。俺は寝てしまったんだ・・・」
疲れていたし酔っていた。
だからすぐに寝てしまったんだ。
「ということはこれは夢か?」
よく見ると周りの景色はよくわかんない霧で包まれている。
「へー、夢って意外と分かるものなんだな・・・」
霧が晴れていく。
人影が見える。
その姿を見て横島は驚愕した。
「ルシオラ・・・?」
夢は時折思いもよらない人物に逢わせてくれる。
この八年、夢で会いたくてもあえなかった・・・
「ルシオラ!!会いたかった・・・」
横島はルシオラを抱きしめた。
「ヨコシマ・・・」
ルシオラは横島を抱きしめ返した。
「どうして今まで出てきてくれなかったんだ!」
寂しかった。苦しかった。
夢でもいいから・・・そう八年間思い続けてきた。
「ヨコシマ・・・私も・・・」
ルシオラは横島の腕を振りほどくと、
「でも私は、もう表に出て来れないヒトだもの・・・
もしかしたら、これっきりかも知れない・・・」
それを聞いて横島は胸が痛んだ。
コレッキリ・・・
夢が続けばいい・・・
目が覚めなければ・・・
「駄目よ!ヨコシマ!!」
ルシオラは横島の手を取った。
「あなたには待っている人がいるでしょう?ここはあなたのいる世界じゃない・・・」
そう言うとルシオラの姿が消えていく。
横島は自分の手を見た。
自分の姿も消えていく。
はっきりと分かる。
目が覚めるのだ。
「・・・ルシオラー」

目が覚めると横島の顔の先には令子の顔があった。
「!!!うわーー」
横島は令子を突き飛ばした。
「きゃ・・・」
はぁ はぁ はぁ 
横島は肩で息をした。
「横島君・・・?」
令子は横島を見た。
横島は側に落ちていた荷物を取ると、
「・・・すみません!!」
と出て行った。
「横島君・・・?」

はぁはぁ・・・
手を開いて顔をかぶせる。
なぜ自分はあのとき令子を突き飛ばしたのか・・・
「俺は・・・俺は・・・?」
わけがわからなかった。
令子への告白にウソは無い。しかしルシオラへの想いも忘れたことは無い・・・
・・・・・・!
横島は念じた。
ぼぅ・・・
ルシオラの姿が現れる。
とはいっても実体はない。
・・・文珠が映した幻影・・・
何度これ見ただろうか・・・?
「・・・ルシオラ・・・俺はいったいどうすればいいんだ・・・」
ふっ・・・
幻影が消える。
「とにかく・・・あんたがそう言う態度だと・・・
苦しむ人がいることを忘れないことね・・・」
昨日、タマモに言われた言葉が思い出される。
タマモは苦しむ人がいると言った。
「そうだよな・・・美神さんを苦しめることになるよな・・・」
自分は今、ルシオラと美神さんとの間で心がゆれている。
はっきりした態度を取らねば美神さんに失礼だ。
そう横島は思った。

「シロちゃん・・・?ちょっといい?」
「・・・おキヌ殿?」
おキヌがシロの隣に腰掛けた。
「シロちゃん・・・?最近元気ないね?どうしたの・・・?」
おキヌはやさしい目をしている。
「そんなこと・・・それより、バカ狐は?」
おキヌは顔に一筋の汗をたらしながら、
「タマモちゃん、シロちゃんが最近元気が無いからって言って
手料理を作るって張りきっているの・・・」
それを聞いてシロは表情を曇らせた。
タマモと一緒に暮らして八年。
彼女が料理を作っているところを見たことが無い。
「タマモちゃん、シロちゃんのこと好きだから・・・」
「・・・拙者は嫌いでござる・・・」
シロは頭を下げるとぼそっと呟いた。
「先生も・・・美神殿も・・・みんな・・・みんな!!」
シロは床を ばん! と叩いた。
「でも、一番嫌いなのはこの情けない考えをする自分でござる!」
もう一度叩いた。
「シロちゃん・・・」
「拙者は・・・みんなが変わっていくのに自分だけ何も変わっていないのに・・・
それが・・・」
シロの気持ちをおキヌはよく分かる気がした。
自分も・・・変わりたくないと願っている・・・今の関係が。
だけど、時間が流れている以上変わっていくものだ。
それを認めなければ先へと進めない。
「・・・シロちゃんはシロちゃんでいいんじゃない・・・?
自分のペースで変わっていって・・・」
おキヌは少しずつ言葉を紡いだ後、
「私は私で変わっていくから・・・」
自分に言っていた。
令子がいて・・・横島がいて・・・そして、自分がいて・・・
この状態が続いていけばいいと思っていた。
それが横島と令子が結ばれていても・・・
自分はずっと側に居続ける・・・
だけどそれは自分の感情を押し殺して側にいる人形・・・
「おキヌ殿はおキヌ殿でござるか・・・」
シロはしばらく考え込んだ後、
「拙者は拙者で変わっていけばいい・・・」
周りが変わっていくのに自分だけが変わっていかないことに対してイライラしていた。
だけどおキヌの言葉ですっきりしたような気がする。
ぐー
シロのお腹がなった。
「じゃ!拙者は先に下に行っているでござる!」
軍人敬礼してからシロはダッシュで駆け下りていった。
それを見ておキヌは微笑んだ。
「(変わらなきゃ・・・)」
自分が変わることを。
そのためには・・・
決別をしなければならない。
想いを。
おキヌは自分の想いに決着をつけることを考えていた・・・


次回予告
「おキヌちゃん・・・俺はどうしたらいいかな・・・?」
おキヌは横島の言葉を聞いている。
「美神さん・・・俺・・・!」
横島は令子に・・・
次回 「八年後物語」 第七話:それぞれの決意
お楽しみに!!

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