ザ・グレート・展開予測ショー

勇気の剣


投稿者名:tea
投稿日時:(02/ 2/11)


「休みをもらいたい?」
突然の申し出に、大理石のテーブルで書類整理をしていた美神は驚いて顔を上げた。その瞳に映るのは、いつもより沈んだ表情の人狼の少女、シロだった。
驚いたのは美神だけではなかった。横島もおキヌもタマモも、丸くした目で視線を送っている。事務所は、確かにハードではあるが所長である美神がカメハメハ大王のような自由気ままなスタイルを貫いているので、結構休みの日が多い(特に雨の日とか)。第一、仕事を休めばその分横島と一緒に居る時間が短くなるのだから、それだけでもシロには休暇を申請する理由は無いはずである。
「実は、先日里の者が不幸にも他界したのでござる。その者とは筒井筒の仲だった故、できれば通夜と葬儀に参列したいのでござるよ」
シロの慇懃丁寧な説明に、なるほどと美神は納得した。よく見ると、シロの右手にはまだ矢が刺さったままの白い矢文が握られている。
人狼族の風習は、現世で言う江戸時代を模したものであるから、儒教的な色合いが濃い。ましてや冠婚葬祭の行事なのだから、無断で欠席するのはご法度であろう。美神は軽く溜息をつくと、短く言った。
「終わったら、すぐ帰ってきなさいよ」
それは即ち帰郷の許可が下りたことを意味する。シロは「かたじけないでござる」とだけ言うと、尻尾を垂らしたまま自室へと戻っていった。横島は何か声をかけようかと思ったが、喉元で引っ込めた。軽々しい慰めはできない、シロの後姿はそんな雰囲気に満ちていた。
「シロちゃん、悲しそう・・・」
「そうだな・・・」
筒井筒というのは幼馴染を意味する。幼少からの知己を失ったのだから、楽天家のシロとてショックは大きいのだろう。美神はばつが悪そうに髪をかき上げると、気を取り直して手に持った書類に目を通した。暫くの間ぱらぱらと用紙を捲る音だけが木霊する。
だが、一枚の文書に目を通した時、その動きがぴたりと止まった。
「ん?これは・・・・・・横島君、ちょっと来て!」
その文書を握ったまま、横島を呼ぶ。突然声を掛けられた横島は、不思議そうな顔をしてテーブルの前に歩いていく。
「何っスか?」
「あんたシロと一緒に行きなさい」
「・・・は?」
口をあんぐりと開ける横島。そりゃそうだろう。何で自分がシロの付き人になってやらねばならないのか、彼の大口がそう語っていた。
だが、美神のほうはいたって真剣だ。その表情は、第六感に敏感な一流GSのそれだった。彼女は相好を崩さずに、厳かな口調で横島に言った。
「人狼の里で、何か異変が起きているらしいの。ひょっとしたら、シロの友達もその何かに巻き込まれたのかもしれない・・・アンタ、里に調査に行ってきなさい。けど、深追いはしないこと。いいわね?」








初めまして、teaと申します。自分で書いてて思ったこと・・・嗚呼駄文じゃ。
どこまで続くかわかりませんが、よろしくお願いします。

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