ザ・グレート・展開予測ショー

八年後物語


投稿者名:NGK
投稿日時:(02/ 2/10)

第五話:喜びはつかの間に

シロはベットにうずくまっていた。
幼いころに父を無くしたシロにとってこの事務所の面々は家族のようなものであった。
おキヌは言うに及ばず、シロが尊敬する横島もそして令子も
なんだかんだ言って面倒見がいい。
タマモも口はうるさくよく言い合いになる仲だが、
一人っ子で兄弟姉妹いなかったシロにとっては同等の存在と言ってよかった。
しかし、八年も経つと皆、少しずつ変わっていく。
タマモは恋人ができて、外に出て行くようになり、
横島も令子も今回のことで互いに想い合うようになった。
自分だけが置いていかれたような気がする。
いろんなことを考えても頭に出てきては消えていく。

喫茶店
「結局、シロちゃん来なかった・・・」
おキヌはうつむいた。
誘ったのだがどうしても行かないと言ってベットから離れなかったのだ。
「本当にどうしたんだろう・・・」
おキヌはちょっと表情を曇らせた。
「・・・おキヌちゃんは気にすることはないよ」
タマモが よっと イスから立ち上がった。
「それより、おキヌちゃん昨日寝ていないでしょ。目に隈ができてるよ」
それを聞いてひのめはおキヌの顔をじっと見た。
ひのめには隈があるようには見えなかった。
「それより・・・さぁ!行きましょう」
おキヌは手を叩いて二人をうながした。
「えーまだイチゴパフェ食べ終わってないのに・・・」
「もう十分でしょ・・・それ、三杯目・・・」
タマモはあきれかえった顔をして呟いた。
「会計、あんたがやりなよ」
テーブルに料金を置いた。
「外で待っているからね」
おキヌはそう言うととっとと歩き出した。
それをタマモがじっと見ている。
「(やっぱり・・・)」
らしくない。普通なら、
「しょうがないわね・・・」
と言いながら座りなおすはずだ。

タマモも外に出たあと、ひのめはパフェを口に頬張らせた。
「・・・何か用?」
ひのめは口を動かさずに呟いた。
ひのめの後ろに若い男がコーヒーを飲んでいる。様に見える。
「それが新しい"仮面"?」
ひのめはちょっと笑った。
「・・・令子が日本に残ったそうだな・・・」
「私も・・・お姉ちゃんと同じ気持ちだから・・・」
葬式のとき男は姿を見せなかった。
ひのめが催促の電話をしたときに、
「必要ない」
と言って切った。
あの時は許せない・・・と思ったものだ。
「では、私の元に来る気はない、ということか・・・」
ひのめはパフェを食べ終わった。
そして席を立つ。
「もうちょっとらしいことをしてよね」
ぼそっと口にする。
それが男の耳に突き刺さった。
「らしいこと・・・か」
しかし”らしいこと”がどんなことなのか。
”仮面”の男はそれが分からなかった。

「おキヌちゃん、本当に大丈夫?」
「大丈夫よ。ほら、こんなに」
そう言うとおキヌは力こぶを作って見せた。
「もしだめなら・・・出たほうがいいよ」
タマモが心配しているのはおキヌがこのまま泣き続けることだ。
このままだったらおキヌが駄目になってしまいそうである。
「うぅんいいの・・・私、横島さんと美神さんの側にいたいから・・・」
辛くは無い。そう自分に言い聞かせた。
「おまたせー」
ひのめが店から出てきた。
「じゃ、行きましょうか」
おキヌはひのめの手を引いた。
ひのめはその手を離そうとするがおキヌはそれに気づかない。
「(・・・相当重症ね・・・)」
そのうち何とかしなければならない・・・
けど何とかなるのだろうか・・・?
「はぁ・・・」
タマモはため息をついた。

「ふっふっふ・・・」
街中で笑う者がいる。
「今夜、ふたりっきりでワインを飲みながら美神さんが私、酔ったみたい・・・
なんて、言いながら俺にもたれかかって、そこで一言。あ・い・し・て・る・・・」
うぉー と横島は吠えた。
「待ってろよー美神さん・・・いや、こういうときは令子、だよな・・・
令子ー待ってろー!!」
横島の手にはバラの花束が握られている。
ちなみにその姿はタキシード。
異様である。
そして・・・目立つ。
「あの・・・馬鹿・・・」
ちょうど買い物をして帰るところだった令子は頭を抱えた。
知らない振りして立ち去ろうか・・・そう思ったときのことだった。
「おぉーい!!令子ーーー!!」
横島が自分を見つけたようだ。
距離もあり人だかりも多かったのだが、今の横島にはそんなことは関係ないようだ。
「令子・・・って私はあんたのなんなの!!・・・?」
言ってから令子は気がついた・・・墓穴を掘ったことに・・・
「ごめん・・・なにって・・・ねぇ・・・」
令子は言いながら照れた。
昨日告白まがいのことをしていたことを失念していた。
「・・・とにかく!令子と言うのはやめてよね!!
・・・どうしてもって言うのなら、令子さん・・・から・・・」
少しだけ、呼び方ぐらいは譲渡してもいい・・・
しかし・・・
「それよりも!!何でそんなかっこうしているの!?」
「それはもちろん・・・美神さ・・・じゃなくて令子さん・・・?
と一緒にめくる夜をすごすため・・・ぶっ!」
横島はすっ飛ばされた。
「ち、違うんですか!?」
このアホには少し分からせなくてはなるまい・・・
令子はコブシに力を入れた・・・

「なーんだ・・・それならそうと言って下さいよ」
数分後横島は令子とともに令子の部屋に向かっていた。
「あの時、言ってたはずだけど・・・(怒)」
「しっかし残念だなぁー二人っきりで食事できるのかと思ったのに・・・」
横島の何気ない一言が令子の顔を赤らめた。
「(私と・・・ふたりで・・・)」
そんな令子の様子に気づかず横島は言葉を続ける。
「もうおキヌちゃんたち来ているみたいっすね」
「え?・・・あぁ、そうね!」
横島は訳が分からなかったが令子が元気そうなので安心した。
「れ、令子さん・・・?」
「は!はい!!」
令子は横島に見つめられてすっとんきょんな声を上げた。
横島はちょっと言いずらそうに口を動かす。
「部屋・・・過ぎたっすよ・・・」

ぐでんぐでん
どうやら自分は酔ってしまったようだ。
となりにはおキヌが幸せそうに眠っている。
令子も同上だ。
「じゃ、私は帰るわ・・・」
おキヌを背負いタマモは言った。
飲みなれていない自分が一番まともなのか・・・
タマモは横島を見た。
横島は遠い目をして窓から見える夜景を眺めている。
「(へーあいつ・・・こんな表情するんだ・・・)」
タマモはいったんおキヌをおろして横島のもとに向かった。
横島はグラスを片手に窓枠に手をついている。
「あ、あぁ・・・タマモか・・・」
横島はタマモに向き合った。
こうやって見るとタマモは成長した。
昔の子供じみた服ではなく今はそれこそ大人が着るような服を着ている。
服だけではない。顔も体も・・・
「・・・今、私に見とれていたでしょ・・・」
タマモは横島をどついた。
「だめよ、私は心も体も真友くんにささげるって決めているんだから!」
「・・・あのなぁ・・・俺はそんなことは考えていないぞ・・・」
「で、どうしたの?なにか、考え事?」
「いや・・・なんで今日、シロ来なかったんだ?」
・・・シロのことか・・・
横島はうそをついている。
もちろんシロのことを考えていたのは事実だろうがそれだけではあるまい。
だけど、あえてそれに触れないことにした。
「あいつは・・・変わらねぇよな・・・」
シロはほとんど変わらない。背が少し、伸びたぐらいだ。
「・・・それより、あんたが変わりなよ・・・」
タマモは横島に向かって静かに・・・言った。
「え・・・?」
「美神さんのことが好きなら・・・好きだってハッキリと態度でしめさなきゃ」
「・・・正直、戸惑っているんだ。美神さんとまさか、こんな関係になるなんて・・・」
思わず言ってしまったことだった。
令子がそのとき、とてつもなくかわいかったから・・・
「だけど、今ひとつ踏み込めない・・・なんでだろうな・・・?」
横島は再び夜景に目をやった。
分かっている。
分かっているが・・・
「とにかく・・・あんたがそう言う態度だと・・・
苦しむ人がいることを忘れないことね・・・」
”だれ”とは言わない・・・言わなくても、横島には分かるだろう。
「じゃあ・・・私は帰るから」
「いかないで!!!!」
突然、令子が大声を上げた。
そして ぐー とまた寝る。
・・・・・・なんだ?
二人は顔を見合わせるしかなかった。
タマモがおキヌをつれて帰ってから横島も帰り支度をした。
ちなみにひのめは隣の部屋で眠っている。
「じゃ・・・美神さん・・・帰るっすよ・・・」
横島は令子に向かって、言った。
そして、靴をはこうとしたそのとき、
「横島君、今日ここで泊まっていかない・・・?」
と言って令子は後ろから抱きついた。
「み、美神さん・・・?」
泊まっていかない・・・のセリフに横島は胸の高鳴りを意識せざる得なかった。
「横島君・・・私のことは・・・
”令子さん”て呼んでくれってあれほど言ったのに・・・」
「酔ってるんですか・・・?」
ぐー
・・・嫌な予感がした。
横島は後ろに首をぎゅーと向けて横目でちらっと令子を見た。
・・・寝ている。
放そうとするが離れない。
「どうすりゃあいいんだ・・・」
横島は頭を抱えるしかなかった・・・

次回予告
「おキヌ殿はおキヌ殿でござるか・・・」
シロはおキヌにそう呟いた。
「・・・ルシオラ・・・俺はいったいどうすればいいんだ・・・」
横島は幻影に語りかける。
次回 「八年後物語」 第六話:今
おたのしみに!!

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