ザ・グレート・展開予測ショー

横島の奮迅録(1)(戦闘主旨)


投稿者名:アストラ
投稿日時:(02/ 2/ 9)

 注意、純粋に戦闘物を拝見したい方はその内投稿する2話目を見て下さい。

「わーい、また先生と二人きりで仕事でござる♪」
「そんなにはしゃぐなって。まあ、今回の仕事は妖精を追っ払うだけだから簡単に済むだろう」
 依頼主はどっかの成金。買収した丘の土地に妖精が夜な夜な出没しているという。
 本来妖精は霊的にパワフルで、時に危険な存在となりうる。現在伝わっている無害で可愛いイメージはヴィクトリア時代に捏造された考えであり、そういった面ではユニコーンと同じである。
 かつて妖精は神であった。が、時代が流れるにつれて崇拝者を失うようになり、今に至るのである。
 妖精の別名には有名な“フェアリー”や、アイルランド特有の“シー(日本語訳すれば丘という意味)”等がある。
 古来より丘は妖精世界の入り口と考えられてきた。GS風に言えば時空のひずみが丘に現れるといったことだろう。
『ヤア!君タチ人間カイ?』
 サバト(祝祭)をしていた妖精たちが二人に気軽に声をかける。
「あ、あれ?何かすごーく親しみやすい連中でござるな?」
「ああ。えーと、レポートによれば、“・・・妖精スプリガン、イギリスのコーンウォール地方の妖精人間に対しては友好的・・・”だとよ」
 横島は、美神からもらったレポートを棒読みすると、シロにそれを渡して自分は説得に
赴いた。
「え、えーとスプリガンさん。どーかこの土地から離れて祖国の土地へ帰っては如何でしょうか? ほら、日本は不景気ですし、それに・・・」
 それに、なれない土地は体に悪いですよ・・・と言いかけた横島だったが、スプリガンに腕を掴まれ饗宴の中に引きずり込まれた。
『サア、君タチモ、コッチニキテ一緒にニ楽シモウジャナイカ!』
「え、いや、ちょっと・・・」
 二人は無理矢理飲み食いさせられた。横島はこの際だからたらふく食って食いだめしてやると踏ん切りをつけた。シロはそのように取り計らう横島を見て、ならば自分もそうしようと考え、彼と同じく食べ物にかぶりつき、むさぼりだした。
 何も食べ方まで真似てがっつく事は無いと思うのだが・・・
(おおっ!あれは・・・)
 食べる事に夢中になっていた横島の目線が、祝祭の貢物の王冠や宝石がザクザク置かれたテーブルに、釘付けになった。
(あれを売り飛ばせば一生遊んで暮らししても由にお釣りが来る・・・よし!)
「なあ、シロ」
「なんでござるか横島先生」
「んーと、ほら、俺らはスプリガンに立ち退きを説得しただろ? さっき俺が言ったけどうまく伝わらなかったみたいだから、今度はお前がやってくれないか?」
「心得たでござる」
 シロはすくっと立ち上がり、声を張り上げて妖精たちを周囲に集めた。それを確認すると横島はさりげなく、(少なくとも本人にとって)宝のテーブルに近づいた。
 そして周りを見渡すと、万引きをする中学生みたいに挙動不審な様子で懐に王冠と宝石を押し込んだ。
「・・・でござるからして、皆も早く故郷に帰った方が・・・って聞いてるでござるか?」
『オ前、今何ヲシタ・・・』
 気付けばスプリガンは波動化した念を横島に叩きつけた。横島は思わずよろめく。
 ガチャガチャガチャ・・・・・・・・・
「せ・・・先生!?何でござるかこれ!?」
『ヤハリ、ソウカ・・・オ前、コンナ事ヲシテ、タダデ済ムト思ウナヨ!』
 突如、気さくで親しみやすかったスプリガンが変化を始めた。各自手に霊的な力を持つライフルや刀を装備した。
『下郎!思イシレ!』
 ライフルが火を吹き、刀が煌めく。
「危ない!」
 攻撃が当たる直前、シロが身を呈して横島を庇った。
「シロッ!!」


 事務所にて。
「畜生! なんて俺はバカなんだ! 俺が欲に目が眩んでこんなことしなけりゃ・・・クソ!!」
 あの時、シロが本能的に横島を庇ったおかげで彼はかすり傷ひとつさえ負わなかった。だが、シロは―――
「あんたさ、なんで最後までレポートに目を通さなかったの? “彼らは欲に目が眩んだ人間に対して容赦は一切しない”って書いてあったでしょうが」
「・・・すんません」
 気落ちした声で答える。
「ま、シロのことはおキヌちゃんが見ているから心配ないと思うけど、もう一回あんた一人でやらせるのも考えものよね」
「美神さんは無理なんスか・・・」
「私は明日まで仕上げなきゃならない書類がたまっているから無理ね。ピートや雪之丞を呼んで連れて行くべきかしら?」
 その時だった。
「私が一緒に行くわ」
「タマモ? あんた、行ってくれるの?」
「ええ、あのバカ犬に貸しを作るのも一興だしね」
 口先でこそ憎まれ口を叩いてはいるものの、タマモは、本心ではシロの事が心配だった。
 ただ、彼女は、なれあいの関係は何があっても御免だと思っていたし、ベタベタと仲良くするよりさばさばとした方が確実に良い、そう思っていたからこそあえてきつい言い方をしたのである。
「そう、助かるわ。横島クン、次に逃げ帰ってきたらその時は・・・」
 美神は神通棍を手にとって、ふふふと笑った。漆黒のオーラが渦巻く。
「大丈夫っスよ・・・多分」そして横島とタマモは再び丘へ向かった。



前置きが長すぎますね。これで本格的な戦闘のお膳立てがやっと済んだだけ。どうしてまたシロが痛い目に遭わなければならないのかと言うと、シロと横島で書いていると、甘系に走ってしまうので横島とタマモで行ってみようという現実逃避の結果です。作者への罰、手打ち五十でどうかご勘弁を・・・。

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