ザ・グレート・展開予測ショー

FORCES(15)―死闘―


投稿者名:二エー
投稿日時:(02/ 2/ 9)

・・・うう。あれ?俺は・・・?
目の前には地面。背中に背負った荷物が重苦しい。
そうだ、確か西条の野郎に胸を・・射貫かれて・・
・・・!?
矢が刺さってない!?

そう、西条の矢は確かにあのとき俺の胸に命中したはずだ。
確かに胸を強打されたような痛みはある、が、矢はうつ伏せの俺の身体に隠れるように俺と地べたの間にはさまり、転がっていた。

・・・この服か。
誰かが「ごめんなさい」と書かれた紙切れと共に俺に残していったこの黒い上下。
これの上着の部分に入っていたラバーのようなものが矢を防いでくれた。
本当に、一体誰がこの服を・・・

ザッ

・・足音!?

ザッ

・・近付いてくる。
俺はうつ伏せのまま耳を澄ます。足音からして一人・・・
なにかをまさぐる音がする、少し経ってラジオのようなノイズ音も。

「・・・こちら西条。横島君の補足、狙撃に成功しました。」
やっぱりコイツか。となると気を失ってたのはほんの数秒・・。

「・・はい。・・そうです。はい、そちらの体制が整い次第回収班を送ってください・・・いえ。これが我々の任務ですので。・・では、お願いします。」

ノイズが収まる。次にカチン、というジッポライター独特の、そして紫煙を吐き出す音が聞こえてくる。

「想像以上に惨めな最後だったな、横島君。・・・大人の役割、か・・・ふう。」
何一人ごちになってやがる。このボケは。・・安心しきりやがって。
だが・・・調度いい。相手がお前だって事も含めて、な。


西条の視線が当っているのがうつ伏せ越しにでも解る。まだ動くわけには行かない。
何とか・・奴が気を逸らした一瞬に・・

ふいに、頭上の気配が乱れたものになる。

「・・・血が、出てない!?」

気付かれた!!

俺は意表を突くように跳ね起きる。間近で見た奴の顔は・・明らかに動揺していた。

「・・!!」
西条が後ろに飛びのきながらタバコと装填されてないボウガンを捨て、懐に手を伸ばす。

今度はもう、躊躇しねえ。迷えば、迷った分だけあいつから遠ざかる。

俺は先程西条にいただいた矢を野郎の右手ごと縫い付ける様に突き刺す。

ズブッ
手に嫌な感触が伝わり、地面に赤い水玉がしたたる。

「あ・・ああ・・・」
西条がその場に膝を突く。奴が使おうとしていた拳銃が背広の中から地面に零れ落ち・・

!!!

奴の目に力が戻り、宙に浮いた拳銃をその左手で掴み取る。
銃口がハッキリと見える・・頭を狙われている!
やべえっ!
俺は咄嗟にサイキックソーサーを出し、さっきとは攻守逆に後ろに飛びのく。
同時に炸裂音が何度か響く。頬が焼けるように熱い。よし・・・かすり傷か。

目の前で何かが閃く。
ザクリ、という肉を切る音がした。
地面が赤い絵の具をぶちまけたようになる。
右手の感触が無い・・・・

状況とその痛みを理解するのに少し時間がかかった。

「うあああああああっ!!」
今度は俺がその場に膝を突く。
俺の右手は、手首から先がきれいに切り落とされていた。
血だまりの中で別の生き物のように痙攣している。

あの霊剣「ジャスティス」か・・俺がサイキックソーサーで弾を防ぐ事を読んで、その時突き出す右手を・・狙っ・・・いてえ。痛てえなんてモンじゃねえ。この喪失感は。

俺とある程度間合いを取った西条は左手で剣を構え、荒い息をついている。
「横島君、もうあきらめろ!!次は・・僕も僕の大事な人の為・・君を殺す!!」

美知恵隊長と対峙した時のあの感覚が蘇る。・・憎悪と渇望が。

「やってみろよ・・・三流公務員。ツツ・・おお痛え。」
また、俺は笑っていた、赤いものが溢れる右腕を押さえながら。

その答えを予想していたかの様に剣を閃かせ、奴が飛び込んでくる。

最後の構えにお前を配置するあたり、隊長も耄碌したかな?

俺は血だまりの中から左手で右手を拾い上げる今だ光を失っていないサイキックソーサーごと投げつける。手榴弾のように放物線を描くそれは、剣を振り上げた西条の胸にブチ当り、派手な音を立てて爆発する。

奴はもう・・・起き上がってはこなかった。


肩に背負ったザックをずらすように降ろし、左手と口を使い、バンダナを右手首にきつく巻きつける。これで少しはマシに・・・!!
目の前の風景が歪む。だめだ。止まらない。
痛え。それに・・血が・・・出過ぎた。
どうする?こんな状態で隊長達に追いつかれたら今度こそ終わりだ。何か、何か無いか。
俺は片手で必死にザックを逆さにし、中のものを全部ぶちまけて使えそうなものを捜す。
使えそうなのは血止めの薬に・・・痛み止め。・・ん、これは!?

その錠剤の潰れた箱には「カタストロフ−A」と書かれてあった。
この薬は・・だいぶ昔に厄珍堂のオッサンが俺にくれた・・確かこれでひどい目に・・

「どんなバカにも力が宿るという薬、ボウズでもエスパー(マヌケな呼称だ)になれる」

オッサンはそう言っていた。そうだ、これこそ今の俺に必要なものだ。
だが、今の状態で飲めばどんな副作用があるか想像もつかない。
・・・構わねえ。
後少しだけ・・アイツに一目会うまで俺の身体が持てばいい。
飛びかけた意識の中でそれだけを考えながら薬を飲み込む。

ドクン。

ドクン。

右手首からの出血が止まる。歪んだ視界も元に戻る。・・・?
妙な感覚がする。まるで頭の中にノイズがかかったような・・

「うう・・令子ちゃん・・・横島君は・・・もう・・・」

西条・・!?まだ起きてやがった。俺はその顔を見下ろすように覗きこむ。

「結局、お前とは最後まで仲良くなれなかったな、西条?」

「君は・・・狂ってる。」

俺はそれには答えず、倒れた西条に刺さっている矢を足で踏みつけ、左右に揺さぶる。
声にならない絶叫の後、今度こそ奴は気を失う。

わざわざてめえに言われなくても、そんな事ぐらい解ってるさ。

西条の物だった霊剣を残った左手で拾い、頭上を見上げる。
やや傾いた太陽の中、長く続く石段の上に妙神山のあの門が小さく映る。
今は何を言われようと、例え切り刻まれてでも・・前に進む。そして・・・

何故かおキヌちゃんが悲しそうに目を伏せる姿が一瞬頭に浮かび、そして消えていった。




「・・うふふ。あの子・・頑張るわね。」
「ホント。すごうい!!」キャハハハ。
「だが、人の身で居る限りそれは叶うことのない足掻き。」
「因果の中でもがけ、少年よ。お前の魂が断末魔の叫び声を挙げるその刻こそ・・」

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